積もるのは嘘と気持ちと

どんころ

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翌朝、僕はすごく緊張した面持ちでテレビでしか見たことのない、ひどく立派な門の前に立っていた。

蓮くんと一緒に朝起きて、ご飯を食べて支度をした。
送迎は毎日運転手さんがしてくれることになっているので、車に乗るまでは良かったが、目的地に近づいていると思うとどんどん緊張が高まった。
見たことのある建物が目に入ると、緊張がメーターを振り切れて、蓮くんの手をぎゅっと握った。
一緒に降りて門の前まで歩いてきたが、たくさん人も居て思わず立ち止まってしまった。

「澪?」
蓮くんが心配そうに僕の顔を覗き込んだ。
「……思ってたより人が多くて、、ちょっと怖くなってきちゃったかも…」
「大丈夫、今日は澪のそばから離れないから。絶対に澪の事守るから、ね?」
こくりと頷くと、少し蓮くんが手を引いてくれて門の中へと歩いて行けた。

受付を蓮くんが済ませてくれて、会場の体育館へと歩く。
蓮くんと繋いだ手に力を入れて、ゆっくり一歩ずつ前に進む僕を蓮くんは急かさずに寄り添ってくれた。
もう少しで入口というところまで来た時、
「相宮先輩!」
と蓮くんを旧姓で呼ぶ声が聞こえた。
「春川。良かった会えて。」
春川と呼ばれた人がこちらに走ってきて僕たちの前で足を止めた。
「こちらが先輩のご結婚された方?」
「そうだよ。」
「はじめまして。僕、春川翠です。すいって呼んでくれたら嬉しいな。」
「…秋雨澪音です。よろしくお願いします。」
「澪音くんって呼んでもいい?」
「うん。僕も翠くんって呼ぶね。」
「ありがとう。」
「仲良くなれそう良かった。春川、澪教室の場所とか何も分からないから色々教えてあげてくれると助かる。」
「もちろんです!任せてください。」
「頼んだよ。」
もうすぐ始まるからと、一旦翠くんとお別れして、席に着いた。
1年生が舞台のすぐ前の席で、その後ろに在校生、周りを保護者が座るような形で、僕たちは今回は先生たちの近くの椅子に座るようになっていたようだ。
たくさんの人に囲まれてびっくりしないように配慮された席なのか、他にも何人かΩの子らしい子が座っていた。

こんなにαとΩがたくさんいるのに、混乱が起きたりしないのはフェロモン換気システムと教育がしっかりしているかららしい。
Ωのフェロモンが少し香ったくらいで惑わされる事のないようαはここに転校すると訓練を受ける。
蓮くんも通う前に訓練を受けて、ヒートのΩがいたとしても誘われずに即効性の抑制剤を打つことができるくらいに耐性がつけられたと言っていた。
Ωはもちろんヒートになったら部屋から出てこないし、規定以上のフェロモンを発してしまっている場合はすぐに機械が察知して教えてくれるため、薬を飲むか保健室で待機するかになるそうだ。
蓮くんは僕と出会う前はここに通っていたから色んなことを知っていて、式が始まるまで色々と教えてくれた。

入学式が始まり、校長先生の挨拶をみんな真剣に聞いていた。
α男性で50代くらいの体格の良い、昔はきっとひどくモテただろう整った顔立ちの校長先生は、自身の番の話や子供の話などを出して、
Ωという性がいかにαにとって大切な存在か、
貴重な性を丁重に取り扱うべきだと説いた。

次に挨拶した教頭先生は女のΩの先生で、
ここはすごくΩにとって優しい環境になっているから安心してほしいが、
その環境があるのもαのおかげだということを忘れずにαと接するよう説いた。

お互いを尊重しあって生きるよう指導している先生方がいるからこんなにも統制のとれた学校なんだということがお話を聞いて伝わってきた。
素晴らしい学校だと思っているうちにあっという間に入学式と始業式が終わった。
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