積もるのは嘘と気持ちと

どんころ

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発情期の話題が耳を通り過ぎるたびに卑屈な気持ちになりながらも、月日は流れて…

学校は楽しいけど、転校してきたからと補講のように受けさせられるαとΩの性教育の授業だけが苦手だった。
Ωの体のメカニズムから抑制剤の種類、発情期の症状と対応の仕方から避妊薬の飲ませ方など為になる事も勿論あるけど、αに対して発情期はこうしてあげるとΩは安心するとか落ち着くとか聞いていると、蓮くんが僕にそう言うことをしてくれる事はないと思ってどうしても悲しくなってきてしまう。

そんな日々を過ごしているある日だった。
いつも通り迎えにきてくれた車に乗り込むと、蓮くんがおかえりといつも通り笑顔で迎えてくれたけど、何かが匂う。
蓮くんに近づいて行くほどその匂いが濃くて、鼻について気持ちが悪い。
それは明らかにΩのフェロモンだった。

αもΩもお互いにマーキングをすることができると授業で聞いた。
濃い接触であればあるほど他を寄せ付けないよう強くマーキングされるという。
今はほとんどいないと聞いたが、婚姻関係と番関係を別で結ぶのが昔は普通で、現在もその名残で違法ではない。
それぞれの事情で両方に子供を設ける場合も、片方の場合もある。
何も聞いていなかったし、今となってはイレギュラーな、婚姻と番は別と考えているなんて思っていなかったけれど、それが普通と思っていたから僕には何も言わなかったのだろうか。
発情期の来ない僕に対しても、蓮くんも蓮くんの家族も何も言わないのは、婚姻関係の方はお飾りでもいいと思っているからなのだろうか。
あんなにも優しい笑顔のみんなの顔が僕の頭の中で黒く塗り潰されていく。

いつも通り話しかけてくれる蓮くんにどう返事したか覚えていないまま家に着いた。
ちょっと疲れたからと部屋で休むといってベッドに隠れるようにして1人になった。
蓮くんも少し部屋の中にいたが、出て行った気配がして気が抜けると涙が出てくる。
普通に発情期の来る子が羨ましくて、蓮くんにマーキングした子が羨ましくて、
どうして僕は、ΩなのにΩになりきれない。
こんなにあたたかい場所を与えてもらっているのにどうしてだろう、心がこんなにも寒い。
僕と蓮くんは紙でただ繋がだているだけの関係なのに、さっきのフェロモンの持ち主はもっと深い関係になれるんだろう。
どんな人なんだろう。
蓮くんの隣に合うのは、育ちの良さそうな上品な人で、優しくて綺麗な人かな。
そう想像して、自分とかけ離れていることに気付く。

あぁ、、そうか。
そもそも僕なんかが蓮くんの隣にいるなんておこがましかったんだ。
あまりにも恵まれすぎてて忘れてた。
こんな、発情期も来ないくせに汚れてて、父親は檻の中なんて、近くにいる資格もないか。
これ以上なんて、望んではいけない。

息を殺すように泣いて疲れたのかそのまま眠ってしまった。
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