38 / 47
日常の終点
凄い人
しおりを挟む
バイト店員の勤務時間が終わり、俺達は彼女の家に案内された。
クソほど汚かった。
そこそこ立派な大きさの家なのに、所々の壁は剥がれ落ち、割れていたり付いて無かったりで綺麗な窓は一つも無い。床には倒れた本棚やひっくり返ったソファ、色褪せた書類とゴミの入った袋が散乱していて床が見えない。廃墟と何ら変わらなかった。
「こっちなのです」
これまた汚い台所に案内された俺達。バイト店員が辺りに落ちてたバールのような物で床収納をこじ開ける。すると地下へ続くハシゴが現れた。
下に降りると、上の階とは比べ物にならない程綺麗な真っ白い空間が広がっていた。たくさんの棚と机が配置されており、難しそうな分厚い本があちこちにある。机上にはよく分からない色の液体や植物が入れられたビン。そして大量のフラスコや試験管。これはまるで…
「実験室…?」
「御明答なのです!」
バイト店員を見るといつの間にか白衣を着こなしていた。何かの博士か先生だったのだろうか。だが、見た感じ歳は俺と同じか、俺より若く見える。背も小さい、中学生くらいか。
「月神さん、この人ってもしかして子供なんじゃ…」
「あぁ、彼女は背が小さいうえに童顔だから、よく中学生くらいに間違われるんだ」
「そうですよね。ってか仕事してるんだから中学生な訳…」
「君と同じ十六歳なのにね」
「なっ!?同い年!?」
「そうなのです!!」
「うわっ!?びっくりした…」
バイト店員が俺達の会話に急に首を突っ込んで来た。
「私は僅か十六歳にして、裏では警察や特殊部隊のサポートをする天才科学者なのです!色んな薬をここで作ったり、逆に未知の物質を分解、分析したりもできる凄い人なのです!」
バイト店員は自慢げに胸を張って言い放つ。ってか、さっきから本当にあのバイト店員なのか疑わしくなるほどキャラが違うのですが。まるで二重人格だ。
「その通り。彼女は二重人格でね。表ではバイトに励む気弱な学生だけど、裏ではマッドサイエンティストとして活動しているんだ」
「へー、そうなんですねというかナチュラルに人の心読むのやめてもらっていいですかね」
俺達が話している間、バイト店員が部屋の端でカチャカチャと中身の入ったフラスコを弄っているのが目に入った。何か作ってるのだろうか。頼むから爆発だけはさせないでくれ。
というか、この人が超重要人物と言われるのが未だに分からない。何かの捜査に必要な人材なのか、それとも…
「グビッ…グビッ…」
(さっきのフラスコの中身飲んでるし…)
「プハーッ」と一息ついたバイト店員。空になったフラスコを置いて、再び何か混ぜ始めた。
実験に熱中する、楽しげな彼女の横顔。何だろう、どこかで見た事あるような。そんな気がする。
親じゃない。友達でもない。最近までもっと身近にいた…顔。
「さて、諸々を説明する前に。察しの良い君ならもう分かったんじゃないかな」
彼女の横顔が、遊びに夢中になっている時の心美の横顔と重なった。
「…まさか」
若くて発展途上。二つ。
竜太の言葉が脳裏にフラッシュバックする。
「そう彼女が…彼女こそが。篠原竜太に言っていた”協力者”。そして…」
「篠原亜美。篠原家の長女だ」
クソほど汚かった。
そこそこ立派な大きさの家なのに、所々の壁は剥がれ落ち、割れていたり付いて無かったりで綺麗な窓は一つも無い。床には倒れた本棚やひっくり返ったソファ、色褪せた書類とゴミの入った袋が散乱していて床が見えない。廃墟と何ら変わらなかった。
「こっちなのです」
これまた汚い台所に案内された俺達。バイト店員が辺りに落ちてたバールのような物で床収納をこじ開ける。すると地下へ続くハシゴが現れた。
下に降りると、上の階とは比べ物にならない程綺麗な真っ白い空間が広がっていた。たくさんの棚と机が配置されており、難しそうな分厚い本があちこちにある。机上にはよく分からない色の液体や植物が入れられたビン。そして大量のフラスコや試験管。これはまるで…
「実験室…?」
「御明答なのです!」
バイト店員を見るといつの間にか白衣を着こなしていた。何かの博士か先生だったのだろうか。だが、見た感じ歳は俺と同じか、俺より若く見える。背も小さい、中学生くらいか。
「月神さん、この人ってもしかして子供なんじゃ…」
「あぁ、彼女は背が小さいうえに童顔だから、よく中学生くらいに間違われるんだ」
「そうですよね。ってか仕事してるんだから中学生な訳…」
「君と同じ十六歳なのにね」
「なっ!?同い年!?」
「そうなのです!!」
「うわっ!?びっくりした…」
バイト店員が俺達の会話に急に首を突っ込んで来た。
「私は僅か十六歳にして、裏では警察や特殊部隊のサポートをする天才科学者なのです!色んな薬をここで作ったり、逆に未知の物質を分解、分析したりもできる凄い人なのです!」
バイト店員は自慢げに胸を張って言い放つ。ってか、さっきから本当にあのバイト店員なのか疑わしくなるほどキャラが違うのですが。まるで二重人格だ。
「その通り。彼女は二重人格でね。表ではバイトに励む気弱な学生だけど、裏ではマッドサイエンティストとして活動しているんだ」
「へー、そうなんですねというかナチュラルに人の心読むのやめてもらっていいですかね」
俺達が話している間、バイト店員が部屋の端でカチャカチャと中身の入ったフラスコを弄っているのが目に入った。何か作ってるのだろうか。頼むから爆発だけはさせないでくれ。
というか、この人が超重要人物と言われるのが未だに分からない。何かの捜査に必要な人材なのか、それとも…
「グビッ…グビッ…」
(さっきのフラスコの中身飲んでるし…)
「プハーッ」と一息ついたバイト店員。空になったフラスコを置いて、再び何か混ぜ始めた。
実験に熱中する、楽しげな彼女の横顔。何だろう、どこかで見た事あるような。そんな気がする。
親じゃない。友達でもない。最近までもっと身近にいた…顔。
「さて、諸々を説明する前に。察しの良い君ならもう分かったんじゃないかな」
彼女の横顔が、遊びに夢中になっている時の心美の横顔と重なった。
「…まさか」
若くて発展途上。二つ。
竜太の言葉が脳裏にフラッシュバックする。
「そう彼女が…彼女こそが。篠原竜太に言っていた”協力者”。そして…」
「篠原亜美。篠原家の長女だ」
0
あなたにおすすめの小説
幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。
灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。
曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。
婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。
前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
王子様への置き手紙
あおき華
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯
小説家になろうにも掲載しています。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる