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【4】少女救出マン

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 とりあえず最低限の情報と金はコモンから手に入った。
 コモンの情報によるとこの国は「ルミリアンス王国」と言う王国らしい。この世界の東に位置する大国の一つだそうだ。夢の割にはよく出来ている世界だ。
 おやおや、ブラブラと街を歩いていると何か見つけたぞ。男女が何やら言い争っている。

「おい嬢ちゃん金持ってんだろ?出せよ」
「持って…ないです。ひぅ!」

 カツアゲだ。人目のつかない道の端で中学生くらいの少女が二人の男性にカツアゲされている。男は少女の耳をつねって顔を凄ませる。

「あぁん!?そんなパンパンに膨らんだ財布持ち歩いてて「持ってない」な訳ねぇだろぉがよ!」
「おい、とっととやっちまおうぜ。こんな餓鬼に構ってる時間が勿体ねぇ」
「おう、そうだな。おら!とっとと向こうへ歩け!」

 少女は二人の男に連れられ、誰も通らないような暗くて細い道に入っていった。このままではあの子が何をされるか分からない。咄嗟に助けなければいけないと思ったが、思いとどまってしまう。
 俺は不治の病。「女ガチ無理症候群(自称)」を患っているのだ。女性に触られるのも、話しかけられるのも、近くにいる事さえ抵抗がある。そんな俺があの子を救えるのだろうか。
 なぁ、教えてくれ。俺の心の中の天使と悪魔よ。

 うっへっへ。女は嫌いなんだろう?無理なんだろう?わざわざ身を危険に晒してまでも助ける必要なんぞ無いさ。やめとけやめとけ。

 くっ…そうだよな。悪魔の言う通り…かもしれん。

 …

 …?

 …。

 おい仕事しろ。俺の中の天使。

「えぇい!畜生め!」

 俺は悩みに悩んだ挙句、女の子が連れていかれた道に走り出した。
 俺の中に天使がいないなら…俺が天使になってやる!(?)
 道に入って少し進んだところに三人はいた。未だに財布を出せ、持っていない、の押し問答が続いているようだった。

「おい!お前ら!」
『あぁん?』

 ひっ!怖い…めっちゃガンつけられた…。けど、ここで引き下がったらあの子が危ない。今の俺には何の力も武器も無い。それでもどうにかしてやる。

「その子から離れろおおおおおおおおおお!」

 俺が男達を止めようと手を伸ばした時。

ビビビビビビビビ…ビシューン…ビシューン…

「ぎゃあああああああああ!?」
「ぐわあああああああああ!?」

 …なんか出た。俺の手のひらから光る破壊エネルギーを秘めた何かが放たれた。それによって男二人はこんがり黒焦げになって気絶した。ピクピク動いていたから死んではないはず。

「助けてくれて…ありがとうございます…お兄さん」

 少女はすかさず立ち上がり、笑顔で俺にお礼を言った。あぁ、良い笑顔だ。助けて良かったな。

「私…お兄さんに惚れました。付き合ってください!…えっへへへへ」

 前言撤回。助けなきゃ良かった。





・紅運命は二人の男から合計18000ソウルを手に入れた。現在所持金53000ソウル。
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