上 下
6 / 10

【5】運命の帰還

しおりを挟む
「…」
「…」
「着いて来るな」
「嫌です」

 なんてこったい。気まぐれで助けた少女に妙に好かれてしまった。どこへ行っても後を追うように着いて来る。

「お前早く帰れよ、俺なんかの後を追っても楽しくないぞ」
「お前じゃないです。スティナースです。スティナって呼んでください」
「あ~そうかい」

 スティナは帰る素振りを一切見せない。普通の思春期真っ只中の男子ならば「このまま人気の無い所へ連れて行ってグへへへへ」みたいな事を考えるだろう。幼いとはいえ、かなりの美少女だしな。だが俺は違う。女は無理なんだ、生理的に。

「あー…親が心配するんじゃないか?あまり遅くまで出歩くと」
「…それもそうですね」

 お、帰ってくれるのか。案外あっさり別れられー

「ではウチに来てください。歓迎します」

 ーる訳がなかった。クソッタレ。

「遠慮します♪帰りまいだだだだだだ!?」
「遠慮なさらず!来てください!」
「わがっだ!わかた!行くからいでででで!」

 痛い!すごく痛い!掴まれた腕がちぎれそう!何この子の握力末恐ろしい!骨がミシミシ言ってるわ!
 こうして握力がバカみたいに強い少女によって、俺は半強制的に連れて行かれたのであった。





☆●◇■△▼*▽▲□◆○★





「着きました、ここです」
「ホエー…」

 連れて行かれたのは大きなお家。と言うか城。目の前の大きな門には黒服のゴツイ門番が二人立っている。サングラスまでかけて、まるで某逃走する番組のハンターだな。

「!…スティナ!」

 俺が目の前の城の大きさに呆気に取られていると、いつの間にか門が開き、城の中から女の子が飛び出して来た。女の子はこちらに駆け寄り、俺の隣にいたスティナに勢いよく抱きついた。

「もう…どこ行ってたのよ、毎度毎度何も言わずにふらっと出かけて。心配するじゃない」
「ごめんねお姉ちゃん」

 どうやらこの女の子はスティナの姉のようだ。なるほど姉妹揃って顔は良い。かなりの美少女コンビだ。よく見ると顔もよく似ている。双子か?

「そ、それじゃあ俺はこの辺で…」

 姉妹仲良く抱き合っている隙にコッソリ退場しようとするが、そんなにあっさりと事が済めば人間苦労しないのである。
 さぁ、俺の運命をダイジェストでお送りしよう。

①黒服の門番に捕まる

「…死刑」

②スティナの姉から死刑宣告を受ける

「被告人、前へ」

③裁判が始まる

「あ~…うん、なるほど…有罪」

④なんか有罪判決を受ける

「えっと…おかえり」

⑤また牢屋にぶち込まれる

「…」

⑥チャンチャン♪

「クソがああああああああああああああああ」

 牢獄の中、俺は鉄格子を握りしめながら精一杯叫んだのであった。
しおりを挟む

処理中です...