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【6】罪状

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「出せぇ…出してくれぇ…俺はァ…無実…だ…」
「んな事言われてもなぁ…」

 俺はただ一人の女の子を家まで送り届けただけ。それなのに牢獄行きとはあまりに理不尽だ。もう二度と来てたまるかと思っていたコモン・ナーシャのいる牢屋、いや世界防衛ギルド?だっけ?に戻って来てしまった。

「なぁ~…コモンさーん…俺が何したって言うんだよぉ~…うぅグスングスン」
「罪状としては「王女誘拐罪」だとよ」
「…王…女?」

 確かに聞いた。コモンの口から「王女」という言葉。コモンはタバコをふかしながら説明してくれた。

「お前さんが連れて歩ってたのは、この国、ルミリアンス王国の第二王女。スティナース・ルミリアンス様だ」
「んなっ!?あの娘、この国のお姫様だったのか!?」
「まぁ、そういう事だ。残念ながらお前さんが犯した罪はこの国じゃ…いや、どこの国でもトップクラスで重い。暴行なんて比にならないくらいな」
「そんな…じゃあ俺は一体…いつまで…」
「さぁな、何十年の牢屋生活…あるいは一生…いや、下手すりゃ死刑だって有り得る」
「しっ…死刑!」

 その言葉を聞いた瞬間、あの時スティナの姉から向けられた冷酷な視線、そしてその姉から宣告された「死刑」という判決の台詞が脳裏に蘇る。

 終わった。そう悟るしか無かった。夢の中とはいえ、自分の一生がこうも理不尽に終わるのはショックだ。
 やはり女という生き物に関わったのが間違いだったんだ。あの時無視していれば。無駄な勇気なんて、偽善者になんてならなければこんな…。

「ふっ…コモンさん。骨は拾ってください」
「お…おう」

 俺がこれからの死を受け入れ全てを諦めた時、この部屋の扉が開いた。誰か入って来た。忘れもしないヤツがこの部屋にやって来た。

「レティ…ナースぅぅぅ…」

 ”この恨みはらさでおくべきか”という顔で目の前の王女を睨みつける。たとえ相手が姫だろうと構いはしない。どうせ俺はこれから死ぬのだから。それにどうせ夢だしな。俺は一切ひるむことなく彼女を睨み続けた。

「…」
「これはこれはレティナース様。どうされました?わざわざこんな所まで自ら足を運ぶなんて」
「ちょっと、そこで捕らえられている者にどうしても一言…言いたくてな」

 部屋一帯に重い空気が流れる。わざわざ王女自ら罪人に死の宣告をしに来たという事か。
 もう覚悟ならできている。さぁなんだ、火刑か斬首か、それともこの国独自の羞恥プレイでもするのか?

「ごめんなさいっ!」
「そうか!羞恥プレ…!…へ?」

 薄暗い牢獄。鉄格子を挟んで王女と罪人。
 王女は深々とこうべを垂れ、罪人は間抜けな表情で王女を見ていた。

 そして空気のギルドマスター補佐もいた。
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