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青前さんと僕
青前さんと僕 その2
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青前さんと私との出会いは、まだお互いが数の数え方もよくわからないほど子どものころの話である。あのころの私はまだ〝ぼく〟であったし、彼女のことを〝青前さん〟だなんて気取った調子で呼んでいなかった。当時の私にとって、青前さんは〝ゆりちゃん〟であった。
青前さんを名前で呼ぶことがなくなったのは、私が中学生一年生になったころの話だ。きっかけとなったあの日は忘れもしない、六月のとある月曜日の昼休みであった。
その日、私はクラスの友人と教室で他愛のない会話を楽しんでいた。最近発売されたあのゲームが楽しいだとか、昨日のテレビが面白かっただとか、とにかくそういうどうでも良い話である。そんな折、ひとつ上の学年の青前さんが教室にやってきた。彼女はその手に傘を持っていた。前日、私がアンリに忘れていったものだった。
青前さんは教室の入り口から「ナリヒラくん」と私を呼んだ。見知らぬ人物が来たことを珍しがったクラスメイトが、一斉に彼女の方へ振り返った。
「昨日、お店に傘忘れたでしょ。持ってきたよ」
「ありがとう、ゆりちゃん。助かったよ」
「いいのいいの。またお店来てよね」
傘を私に手渡した青前さんは、「じゃね」と手を振り教室を去って行った。
私が席へと戻ると、一緒に話していた友人達がニヤついた表情をこちらへ向けた。からかっていることは見るに明らかであったが、当時の私はその理由がわからなかった。
「どうしたの、そんな顔して」と私は訊ねた。
「いまの人、誰なんだよ」
「友達だよ。保育園のころからあの人のお父さんのお店によく行ってるんだ」
「なんでナリヒラくんなんて呼ばれてんの?」
「在原業平って人がいるんだ。で、僕の苗字が在原だからそうやって呼んでるみたい。有名な人らしいから、そのうち社会の授業で習うんじゃないかな」
「付き合ってるんだな!」
「付き合ってなんかいない。からかわないでよ」
「だって、中学になって女子のこと〝ゆりちゃん〟だなんてフツー呼ばないだろ」
「僕は呼ぶんだ」
「やっぱ付き合ってるんだ!」
今の私ならばその程度のつまらないジョークは楽に受け流せることだろう。しかし、当時思春期真っ盛りであった私はそうではなかった。
〝ちゃん〟付けを指摘された私は無性に恥ずかしくなり、瞬時に頬を染めた。そのことをまた周りからからかわれ、一層恥ずかしくなった私は瞬く間に茹タコと化した。それから「付き合ってる」「付き合ってない」の水掛け論が始まって、私は不毛な昼休みを過ごした。
その翌日から〝ゆりちゃん〟という呼び名は〝青前さん〟と改められた。突然のことにも関わらず、彼女も何かを察したのか、自らが〝青前さん〟となったことを受け入れた。思春期をとうに過ぎた今でも、私達ふたりの関係性はその日から一切変わっていない。
〝ぼく〟にとっては違ったかもしれないが、〝私〟にとって青前さんは青前さんなのだ。それ以上でもそれ以下でもない。
〇
その日、久しぶりに茂川先生を見かけたのは大学でのことだった。友人と共に食堂で昼食を取っていると、死にかけの老犬の如くもそもそとパスタをすする彼が近くの席に座っていたので私は大いに驚いた。久しぶりに見る先生は頬がすっかりやつれてしまっており、まるで別人のようであった。
友人に断りを入れて席を立った私は、茂川先生に声をかけた。
「茂川先生、お久しぶりです」
「在原くんじゃないか。いやいや、実に久しぶりだね。どうしたんだいこんなところで」
「こんなところって、ここは大学の食堂ですよ。いるに決まっています」
「そうだったね、ここは大学だった」
どうやら茂川先生は郡司氏の如く、少し見ない間にすっかり呆けてしまったようだ。私は先生の正面の席に座ると、改めて「何かあったのですか」と尋ねた。
「大したことじゃないよ。ただ、夢から醒めただけさ。長い夢だった」
「最近、先生と同じようなことを私の知り合いも言っていました。共通点は大事なことが何一つわからないというところですね」
「誰にだって言いたくないことはあるんだ。……でも、僕の場合は別。すごく言いたい。誰かに聞いてもらいたい。だからここに来たんだ。君に会えないかなって」
「でしたらお相手しましょう。どうぞ、思いの丈を話してください」
「ありがとう」と茂川先生は微笑んだ。前歯の間に唐辛子のカスが詰まっているのが見えた。
先生はひとつため息をすると、神妙な面持ちで語り始めた。
「僕が話したいのは他でもない、佐和田さんについてだ」
先生の話によると、ゾウキリンを届けた翌々日から佐和田さんと連絡が取れない日が続いているらしい。心配になって家まで行ってチャイムを押したところ反応はあったので、彼女が生きていることは間違いないようなのだが、顔はおろか声すらろくに聴かせてもらえなかったのだとか。理由は全くの不明。先生がしつこく言い寄ったからでもないとのことである。そのおかげで先生はしばらく食事が喉も通らずに、大学が始まってからもしばらく寝込んでいたのだとか。心配する一方で、よくクビにならないものだと私は感心した。なれるものならば大学教師に是非ともなりたい。
「……在原くん、僕はどうすればいいんだろう。彼女のためになにか出来ることはないのかな」
「会いに行けばいいでしょう、簡単なことです」
「言っただろう。顔すら見せてくれないんだよ」
「お言葉ですが茂川先生、一度や二度で諦めるのは男らしくない」
私は肩を落とす先生の背中をバシッと叩いた。
「先生。私は先生のアドバイスのおかげでよいホワイトデーを送ることが出来ました。今度は私の番です」
茂川先生は「在原くん」と言いながら潤んだ瞳を私に向けた。私は二の腕に力を込め、力こぶを作ってみせた。
「ふたりで天岩戸をこじ開けてやりましょう」
〇
茂川先生と共に大学を出た私は、電車とバスを乗り継いで一路新座へ飛んだ。空飛ぶデロリアンは調子が悪く、現在メンテナンス中ということだったので、私達は佐和田さんの家まで徒歩で向かうことになった。バスを降りたところから彼女の家までは、およそ三十分を要した。
佐和田さんの家の屋上にある恐竜の模型は、ゾウキリンに取って代わられることもなく相変わらずそこに居座り続けていた。嘘っぽい緑色の塗装も半分ほど剥げたままで、どこか悲しげである。
家に着いたはいいが、茂川先生は踏ん切りがつかないのか呼び鈴に向けて手を伸ばしたり引っ込めたりしている。その態度にやきもきした私は、先生の背中を「さあ」と煽った。
「せっかくここまで来たのです。いい加減に覚悟を決めたらどうですか。先生がそれを押さなければ始まりませんよ」
「そうは言ってもねえ。ほら、佐和田さんが顔を見せてくれなかったら倒れちゃいそうで」
「いまさら何を言うのです、ほら」
私は勇気づけるように先生の肩を押した。すると彼はバランスを崩し、前のめりによたよたとよろける。転ばないようにと思わず先生が手を伸ばした先が、幸か不幸か彼が押さぬようにと必死に抗っていた呼び鈴であった。
ピンポンという呼び出し音が鳴ると同時に茂川先生は背筋を伸ばす。しかし、インターホンから佐和田さんの声は一向に返ってこず、代わりに聞こえてきたのは、生存報告のためなのかコツンコツンと何かを叩く音だけだった。
「……在原くん、やっぱり帰ろうか」
「簡単に諦めてどうするのです。さあ、もう一度」
不出来な生徒を叱るピアノ教師の如く茂川先生をたしなめた私は、彼に再度佐和田さんを呼び出すように指示した。そこで先生はようやく腹をくくったらしく、「押すよ、押せばいいんだろう」と半ばやけになって呼び鈴に向けて手を伸ばす。
佐和田さんの酒焼けした声が聞こえたのは、先生の指が呼び鈴に触れるコンマ1秒手前のことだった。
「茂川と一緒にいるのは在原くんかい?」
驚きながらも私は「そうです」と即答する。
「しかし私はただの付き添いです。今日、佐和田さんに用があるのは茂川先生の方なのです」
「私の方は彼に用はないよ」
それを聞いた茂川先生はしゅんと肩を落とした。今にも泣きだしそうな彼の顔をとても見ていられなくて、私は「そんなこと言わずに」と食い下がった。
「そう言われても会いたくないものは会いたくないんだ。だが在原くん。君は別だ。入ってくれ。君とならばぜひとも話をしたい」
それから間もなくして、玄関の鍵が開くカチャリという音がした。
佐和田さんを心配する一心でここまで来たというのに、いつものように門前払いされた挙句、「貴方以外なら会っても構わない」というようなことを言われてしまった茂川先生の立場がいたたまれなくて、とても彼の顔を見ることが出来ない。さっさと帰ればよかったかなと、勝手ながら私はこっそり後悔した。
しばらくインターホンを見つめていた茂川先生は、やがて私の方に振り向いた。その顔からは、先ほどのような悲壮感が消えていた。
「在原くん、ここは君に頼みたい。僕はここで待ってるから」
「……いいのですか?」
「構わない。そもそも、僕は彼女が心配でここまで来たんだ。彼女の無事を確かめるという目的を達成出来るのなら、別に僕が彼女に会う必要なんて無いんだよ」
先生が私を頼ってくれているのだから、私はその思いに応えなければなるまい。生徒として。そして何より、先生の友として。
「わかりました。行って参ります」
ぴしっと敬礼した私は佐和田さん宅の玄関へと歩みを進めた。「彼女を頼んだよ」という先生の声に、私は右腕を高く掲げて答えた。
青前さんを名前で呼ぶことがなくなったのは、私が中学生一年生になったころの話だ。きっかけとなったあの日は忘れもしない、六月のとある月曜日の昼休みであった。
その日、私はクラスの友人と教室で他愛のない会話を楽しんでいた。最近発売されたあのゲームが楽しいだとか、昨日のテレビが面白かっただとか、とにかくそういうどうでも良い話である。そんな折、ひとつ上の学年の青前さんが教室にやってきた。彼女はその手に傘を持っていた。前日、私がアンリに忘れていったものだった。
青前さんは教室の入り口から「ナリヒラくん」と私を呼んだ。見知らぬ人物が来たことを珍しがったクラスメイトが、一斉に彼女の方へ振り返った。
「昨日、お店に傘忘れたでしょ。持ってきたよ」
「ありがとう、ゆりちゃん。助かったよ」
「いいのいいの。またお店来てよね」
傘を私に手渡した青前さんは、「じゃね」と手を振り教室を去って行った。
私が席へと戻ると、一緒に話していた友人達がニヤついた表情をこちらへ向けた。からかっていることは見るに明らかであったが、当時の私はその理由がわからなかった。
「どうしたの、そんな顔して」と私は訊ねた。
「いまの人、誰なんだよ」
「友達だよ。保育園のころからあの人のお父さんのお店によく行ってるんだ」
「なんでナリヒラくんなんて呼ばれてんの?」
「在原業平って人がいるんだ。で、僕の苗字が在原だからそうやって呼んでるみたい。有名な人らしいから、そのうち社会の授業で習うんじゃないかな」
「付き合ってるんだな!」
「付き合ってなんかいない。からかわないでよ」
「だって、中学になって女子のこと〝ゆりちゃん〟だなんてフツー呼ばないだろ」
「僕は呼ぶんだ」
「やっぱ付き合ってるんだ!」
今の私ならばその程度のつまらないジョークは楽に受け流せることだろう。しかし、当時思春期真っ盛りであった私はそうではなかった。
〝ちゃん〟付けを指摘された私は無性に恥ずかしくなり、瞬時に頬を染めた。そのことをまた周りからからかわれ、一層恥ずかしくなった私は瞬く間に茹タコと化した。それから「付き合ってる」「付き合ってない」の水掛け論が始まって、私は不毛な昼休みを過ごした。
その翌日から〝ゆりちゃん〟という呼び名は〝青前さん〟と改められた。突然のことにも関わらず、彼女も何かを察したのか、自らが〝青前さん〟となったことを受け入れた。思春期をとうに過ぎた今でも、私達ふたりの関係性はその日から一切変わっていない。
〝ぼく〟にとっては違ったかもしれないが、〝私〟にとって青前さんは青前さんなのだ。それ以上でもそれ以下でもない。
〇
その日、久しぶりに茂川先生を見かけたのは大学でのことだった。友人と共に食堂で昼食を取っていると、死にかけの老犬の如くもそもそとパスタをすする彼が近くの席に座っていたので私は大いに驚いた。久しぶりに見る先生は頬がすっかりやつれてしまっており、まるで別人のようであった。
友人に断りを入れて席を立った私は、茂川先生に声をかけた。
「茂川先生、お久しぶりです」
「在原くんじゃないか。いやいや、実に久しぶりだね。どうしたんだいこんなところで」
「こんなところって、ここは大学の食堂ですよ。いるに決まっています」
「そうだったね、ここは大学だった」
どうやら茂川先生は郡司氏の如く、少し見ない間にすっかり呆けてしまったようだ。私は先生の正面の席に座ると、改めて「何かあったのですか」と尋ねた。
「大したことじゃないよ。ただ、夢から醒めただけさ。長い夢だった」
「最近、先生と同じようなことを私の知り合いも言っていました。共通点は大事なことが何一つわからないというところですね」
「誰にだって言いたくないことはあるんだ。……でも、僕の場合は別。すごく言いたい。誰かに聞いてもらいたい。だからここに来たんだ。君に会えないかなって」
「でしたらお相手しましょう。どうぞ、思いの丈を話してください」
「ありがとう」と茂川先生は微笑んだ。前歯の間に唐辛子のカスが詰まっているのが見えた。
先生はひとつため息をすると、神妙な面持ちで語り始めた。
「僕が話したいのは他でもない、佐和田さんについてだ」
先生の話によると、ゾウキリンを届けた翌々日から佐和田さんと連絡が取れない日が続いているらしい。心配になって家まで行ってチャイムを押したところ反応はあったので、彼女が生きていることは間違いないようなのだが、顔はおろか声すらろくに聴かせてもらえなかったのだとか。理由は全くの不明。先生がしつこく言い寄ったからでもないとのことである。そのおかげで先生はしばらく食事が喉も通らずに、大学が始まってからもしばらく寝込んでいたのだとか。心配する一方で、よくクビにならないものだと私は感心した。なれるものならば大学教師に是非ともなりたい。
「……在原くん、僕はどうすればいいんだろう。彼女のためになにか出来ることはないのかな」
「会いに行けばいいでしょう、簡単なことです」
「言っただろう。顔すら見せてくれないんだよ」
「お言葉ですが茂川先生、一度や二度で諦めるのは男らしくない」
私は肩を落とす先生の背中をバシッと叩いた。
「先生。私は先生のアドバイスのおかげでよいホワイトデーを送ることが出来ました。今度は私の番です」
茂川先生は「在原くん」と言いながら潤んだ瞳を私に向けた。私は二の腕に力を込め、力こぶを作ってみせた。
「ふたりで天岩戸をこじ開けてやりましょう」
〇
茂川先生と共に大学を出た私は、電車とバスを乗り継いで一路新座へ飛んだ。空飛ぶデロリアンは調子が悪く、現在メンテナンス中ということだったので、私達は佐和田さんの家まで徒歩で向かうことになった。バスを降りたところから彼女の家までは、およそ三十分を要した。
佐和田さんの家の屋上にある恐竜の模型は、ゾウキリンに取って代わられることもなく相変わらずそこに居座り続けていた。嘘っぽい緑色の塗装も半分ほど剥げたままで、どこか悲しげである。
家に着いたはいいが、茂川先生は踏ん切りがつかないのか呼び鈴に向けて手を伸ばしたり引っ込めたりしている。その態度にやきもきした私は、先生の背中を「さあ」と煽った。
「せっかくここまで来たのです。いい加減に覚悟を決めたらどうですか。先生がそれを押さなければ始まりませんよ」
「そうは言ってもねえ。ほら、佐和田さんが顔を見せてくれなかったら倒れちゃいそうで」
「いまさら何を言うのです、ほら」
私は勇気づけるように先生の肩を押した。すると彼はバランスを崩し、前のめりによたよたとよろける。転ばないようにと思わず先生が手を伸ばした先が、幸か不幸か彼が押さぬようにと必死に抗っていた呼び鈴であった。
ピンポンという呼び出し音が鳴ると同時に茂川先生は背筋を伸ばす。しかし、インターホンから佐和田さんの声は一向に返ってこず、代わりに聞こえてきたのは、生存報告のためなのかコツンコツンと何かを叩く音だけだった。
「……在原くん、やっぱり帰ろうか」
「簡単に諦めてどうするのです。さあ、もう一度」
不出来な生徒を叱るピアノ教師の如く茂川先生をたしなめた私は、彼に再度佐和田さんを呼び出すように指示した。そこで先生はようやく腹をくくったらしく、「押すよ、押せばいいんだろう」と半ばやけになって呼び鈴に向けて手を伸ばす。
佐和田さんの酒焼けした声が聞こえたのは、先生の指が呼び鈴に触れるコンマ1秒手前のことだった。
「茂川と一緒にいるのは在原くんかい?」
驚きながらも私は「そうです」と即答する。
「しかし私はただの付き添いです。今日、佐和田さんに用があるのは茂川先生の方なのです」
「私の方は彼に用はないよ」
それを聞いた茂川先生はしゅんと肩を落とした。今にも泣きだしそうな彼の顔をとても見ていられなくて、私は「そんなこと言わずに」と食い下がった。
「そう言われても会いたくないものは会いたくないんだ。だが在原くん。君は別だ。入ってくれ。君とならばぜひとも話をしたい」
それから間もなくして、玄関の鍵が開くカチャリという音がした。
佐和田さんを心配する一心でここまで来たというのに、いつものように門前払いされた挙句、「貴方以外なら会っても構わない」というようなことを言われてしまった茂川先生の立場がいたたまれなくて、とても彼の顔を見ることが出来ない。さっさと帰ればよかったかなと、勝手ながら私はこっそり後悔した。
しばらくインターホンを見つめていた茂川先生は、やがて私の方に振り向いた。その顔からは、先ほどのような悲壮感が消えていた。
「在原くん、ここは君に頼みたい。僕はここで待ってるから」
「……いいのですか?」
「構わない。そもそも、僕は彼女が心配でここまで来たんだ。彼女の無事を確かめるという目的を達成出来るのなら、別に僕が彼女に会う必要なんて無いんだよ」
先生が私を頼ってくれているのだから、私はその思いに応えなければなるまい。生徒として。そして何より、先生の友として。
「わかりました。行って参ります」
ぴしっと敬礼した私は佐和田さん宅の玄関へと歩みを進めた。「彼女を頼んだよ」という先生の声に、私は右腕を高く掲げて答えた。
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