涙色ミルキーウェイ

保桜さやか

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【番外編】彦星の受難

5、山口県下関市

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「こ、告白!? だ、誰が誰に?」

「だから、俺が好きな子に……」

「お、おいおいおい、急展開すぎる」

「正気か、ホッシー」
 
 言葉にしたらなんとなくうまくいきそうな気がして、そんな願掛けのつもりで親友たちにだけ『好きな
子ができたから告白をする』と宣言すると、ふたりとも椅子から転げ落ちそうなほど驚いて見せた。

 長かった夏休みが終わって、マミちゃんから再びその話題は出なかったけど、彼女が門司港へ遊びに来
てくれた時、勇気を出して想いを告げようと思った。

 わずかだけど、近づこうとしてくれているように思える彼女にもっと近づきたくなった。

「ちょ、相手は誰? 別のクラスの子?」

「いや、それはまだ言えないっちゃけど」

 ここまで言っておいてそれはないだろ、と苦言する親友たち。それはその通りなんだけど、そう簡単に言えるはずもない。

「もしものことがあって相手に迷惑かけたくないし」

「ホッシーに告られて嬉しくないやつなんていないだろ!」

「そうだといいけど……」

 そうだといいけど、それが通用しないのがマミちゃんである。もしものことなんて考えたくないけど、俺が口を滑らせたことによってマミちゃんが困るのはもっと嫌だ。

 困らせるのは嫌だ。それでももっと近づきたい。ここ数日、そんな矛盾の繰り返しである。
 土曜日の試合帰りに下関駅でマミちゃんを見かけた。
 すらっと背が高く美人なマミちゃんはよく目立つ。
 みんなが気づくのより早く気付いたつもりだった。
 声をかけたかったけど、かけられなかった。
 一緒にいた後輩たちは言葉を失っていたし、通り過ぎる人たちの視線は彼女をとらえて離さなかった。
 どこにいても遠慮なくじろじろ見られるのが本当に嫌だとよく彼女が苦言することもあったため、こういうことのことなんだろうなと複雑な心境になった。
 しかしながら、俺はまわりの人間のように、素直にかわいいとも言えない。
 スタートラインにさえ立てていないのだ。
そんな関係がもどかしくて、進展したいと望んでしまった。
 叶うことなら、今年の関門海峡花火大会は一緒に見に行きたい。
 木曜日の枠をこえて、新しい一歩を踏み出したかった。
 彼女のことを考えているようで自分勝手な考えでいっぱいである。
 ともに過ごす日々の中で、自分の気持ちだけが少しずつ少しずつ深く深く、海底へ沈んでいくような心境だった。
 陸にいる彼女に近づきたいと必死にもがき始めたのは、長い夏が終わったころからだった。

 近くにいるのに、遠い。

 それがとてもとても苦しかった。
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