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3章 第二王子の護衛
19、王宮の朝は鳥の声と共に
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「おはようございます、エクテス様」
太陽が空に上るころ、豪快に部屋に飛び込んでくる乙女のおかげで目覚めざるを得なくなる。
昨晩はいつもより早く眠ってしまったため、鳥の声が聞こえるころには目覚めていて、ルイが置いていってくれた王宮内で最も人気のあるという物語を読むことにしたものの開いてすぐに驚くほど胸焼けのしそうな物語に読み続けることができず、そっと閉じたところだ。
あの男は一度でも読んだことがあるのだろうか。
ルイの特徴にものすごくよく似た王子が出てくる恋物語だったように思う。
「ああ、メーガン、おはよう」
気を取り直して目の前でテキパキとした動きを見せる少女に声を掛ける。
ルイが手配してくれた侍女で、あたしの事情を知ったうえで世話をしてくれている。
癖っ毛のある赤毛を編み込み、元気に笑うたびにおさげを揺らす明るい女の子だった。
ここへ来て間もないとは言え、彼女のことが大好きになってしまった。
「今日もハツラツとした朝をありがとう。素晴らしい目覚めだ」
挨拶を返すと先ほどまでの元気はどこへやら、顔を真っ赤にして両手で覆う。
「あ、朝からそんなに格好いいのは反則です」
そして、そんな可愛いことを言ってくれる。
「君のように愛らしい乙女が起こしに来てくれるんだ。常に完璧な姿でありたいね」
起きたばかりなので完璧もくそもないのだが、彼女がさらに喜んでくれる様子が嬉しくて、ついつい口ばかりが達者に動く。
しかしながら、一瞬たりとも気を抜くことが許されず気ばかり使っていた昨日と違い、落ち着いて過ごすことのできるここは夢の楽園かつオアシスのように感じられた。
「今朝も朝食時にはルイス殿下もいらっしゃるそうです」
「げっ……」
「ふふ、エクテス様ったら」
昨日もなにやら理由をつけて共に朝食を取りに来たようだけど、慣れない環境で淋しいとでも思っているのだろうか。
気遣いは完全に無用である。
誰が喜んで上司と食卓まで一緒にとりたいものか。
「なんとか断れないものか。どうせ今日もほとんどともに過ごす予定だ。あんなにもキラキラした男と向かい合って食事をしていたら、朝から気持ちが滅入ってしまいそうだよ」
「ふふ、面白い!」
そばかすのある頬をゆるめるメーガンはまったく取り合ってくれないが、あたしは顔がいい男が嫌いだ。
とにかく自身よりも格好いいと思える男はもっとも嫌いだった。
しかしながら、あの男は欠点がないどころか人に気ばかり使っていて、どこか儚げな部分があるため放っておけないところがある。
そのためついつい彼の思惑通りに動いてしまっている自分がいて、気づかないうちに彼の手のうちで転がされているような気になり、心底嫌になるのだ。
自衛できるところはするに越したことはない。
「ああ、面倒くさいことこの上ない……」
とはいえ、王子様の言う通りのため拒むことはできず、一刻も早くエクテススタイルに着替えて準備を進める必要がある。
メーガンの手を借りて、心とは裏腹に想像以上に育ってしまった身体をなんとか男性のものへと変えていく……といっても、余計なものはコルセットのごとく布をきつく巻きつけ、しまい込む。
「同じ女性として、こんなにも美しくて憧れてしまうお姿なのに、男装をするよう命じるだなんて……本当に、なんとも酷なことを」
このあたしが無理にでも男装を強いられていると思っているのか、本当に申し訳なさそうな顔を浮かべて手伝ってくれるメーガンにそうではないのだと笑ってしまいそうになるも、余計なことを言ったまたなにか誤解生むのもまずいため、精一杯の笑顔を作る。
今日もどこからどうみても完璧な男装ぶりである。実に満足をしているのだ。
体を締め上げることはとてつもなく不快でしかないが、こうも気にかけてもらえるのも悪い気はしない。
「君に心配をしてもらえるのなら、もう少し頑張れそ……」
「エクテス」
扉をノックする音が聞こえ、扉の向こうにルイが立っているのが見えた。
「もういいかな」
「マナーがなってないね。見て分からないかい? あたしはまだ着替え中なんだが」
ノックと同時に姿を見せるやつがあるか。
「隙あらば口説こうとするところは変わらないね。城内の秩序を守るためと思って少しは自重してくれると助かるよ」
「ああ、その言葉、君には言われたくないね」
勝手に入室してくるルイの様子は朝から無駄に光り輝いて見える。
現にさきほどまであたしのことを褒め称えていたメーガンでさえ、唖然として彼を見入り、少しの間を置いてから我に返り、慌てて頭を下げたのだった。
昨日、第一王子を前にしたあたしもこんなふうになっていなかっただろうかとそればかり心配になってしまう。
「メーガン、あとは引き受けよう」
「は、はい!」
君に何ができる?と言いたいが、メーガンはもう正常に働けそうにないため、渋々あとの準備は自分で行うことになる。
「何か俺にも手伝うことがあれば」
「あるはずないだろう」
これだから、箱入りの王子様は……。
メーガンが出ていったのを確認して、ルイが笑った。
「おはよう、マリア」
太陽が空に上るころ、豪快に部屋に飛び込んでくる乙女のおかげで目覚めざるを得なくなる。
昨晩はいつもより早く眠ってしまったため、鳥の声が聞こえるころには目覚めていて、ルイが置いていってくれた王宮内で最も人気のあるという物語を読むことにしたものの開いてすぐに驚くほど胸焼けのしそうな物語に読み続けることができず、そっと閉じたところだ。
あの男は一度でも読んだことがあるのだろうか。
ルイの特徴にものすごくよく似た王子が出てくる恋物語だったように思う。
「ああ、メーガン、おはよう」
気を取り直して目の前でテキパキとした動きを見せる少女に声を掛ける。
ルイが手配してくれた侍女で、あたしの事情を知ったうえで世話をしてくれている。
癖っ毛のある赤毛を編み込み、元気に笑うたびにおさげを揺らす明るい女の子だった。
ここへ来て間もないとは言え、彼女のことが大好きになってしまった。
「今日もハツラツとした朝をありがとう。素晴らしい目覚めだ」
挨拶を返すと先ほどまでの元気はどこへやら、顔を真っ赤にして両手で覆う。
「あ、朝からそんなに格好いいのは反則です」
そして、そんな可愛いことを言ってくれる。
「君のように愛らしい乙女が起こしに来てくれるんだ。常に完璧な姿でありたいね」
起きたばかりなので完璧もくそもないのだが、彼女がさらに喜んでくれる様子が嬉しくて、ついつい口ばかりが達者に動く。
しかしながら、一瞬たりとも気を抜くことが許されず気ばかり使っていた昨日と違い、落ち着いて過ごすことのできるここは夢の楽園かつオアシスのように感じられた。
「今朝も朝食時にはルイス殿下もいらっしゃるそうです」
「げっ……」
「ふふ、エクテス様ったら」
昨日もなにやら理由をつけて共に朝食を取りに来たようだけど、慣れない環境で淋しいとでも思っているのだろうか。
気遣いは完全に無用である。
誰が喜んで上司と食卓まで一緒にとりたいものか。
「なんとか断れないものか。どうせ今日もほとんどともに過ごす予定だ。あんなにもキラキラした男と向かい合って食事をしていたら、朝から気持ちが滅入ってしまいそうだよ」
「ふふ、面白い!」
そばかすのある頬をゆるめるメーガンはまったく取り合ってくれないが、あたしは顔がいい男が嫌いだ。
とにかく自身よりも格好いいと思える男はもっとも嫌いだった。
しかしながら、あの男は欠点がないどころか人に気ばかり使っていて、どこか儚げな部分があるため放っておけないところがある。
そのためついつい彼の思惑通りに動いてしまっている自分がいて、気づかないうちに彼の手のうちで転がされているような気になり、心底嫌になるのだ。
自衛できるところはするに越したことはない。
「ああ、面倒くさいことこの上ない……」
とはいえ、王子様の言う通りのため拒むことはできず、一刻も早くエクテススタイルに着替えて準備を進める必要がある。
メーガンの手を借りて、心とは裏腹に想像以上に育ってしまった身体をなんとか男性のものへと変えていく……といっても、余計なものはコルセットのごとく布をきつく巻きつけ、しまい込む。
「同じ女性として、こんなにも美しくて憧れてしまうお姿なのに、男装をするよう命じるだなんて……本当に、なんとも酷なことを」
このあたしが無理にでも男装を強いられていると思っているのか、本当に申し訳なさそうな顔を浮かべて手伝ってくれるメーガンにそうではないのだと笑ってしまいそうになるも、余計なことを言ったまたなにか誤解生むのもまずいため、精一杯の笑顔を作る。
今日もどこからどうみても完璧な男装ぶりである。実に満足をしているのだ。
体を締め上げることはとてつもなく不快でしかないが、こうも気にかけてもらえるのも悪い気はしない。
「君に心配をしてもらえるのなら、もう少し頑張れそ……」
「エクテス」
扉をノックする音が聞こえ、扉の向こうにルイが立っているのが見えた。
「もういいかな」
「マナーがなってないね。見て分からないかい? あたしはまだ着替え中なんだが」
ノックと同時に姿を見せるやつがあるか。
「隙あらば口説こうとするところは変わらないね。城内の秩序を守るためと思って少しは自重してくれると助かるよ」
「ああ、その言葉、君には言われたくないね」
勝手に入室してくるルイの様子は朝から無駄に光り輝いて見える。
現にさきほどまであたしのことを褒め称えていたメーガンでさえ、唖然として彼を見入り、少しの間を置いてから我に返り、慌てて頭を下げたのだった。
昨日、第一王子を前にしたあたしもこんなふうになっていなかっただろうかとそればかり心配になってしまう。
「メーガン、あとは引き受けよう」
「は、はい!」
君に何ができる?と言いたいが、メーガンはもう正常に働けそうにないため、渋々あとの準備は自分で行うことになる。
「何か俺にも手伝うことがあれば」
「あるはずないだろう」
これだから、箱入りの王子様は……。
メーガンが出ていったのを確認して、ルイが笑った。
「おはよう、マリア」
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