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【15歳 冬】
29、【15歳 冬】どんなときもあなたとならば
「相手になりましょうか?」
「えっ?」
そのままトレーニングの時間も庭にいるというので彼女の好きにするよう伝えていたら、とんでもないことを言い出したため、思わず構えていた剣を落としそうになった。
「トレーニングも対戦相手がいないと張り合いがないのではないですか?」
「………」
今までの騎士たちは二人体制だったため、何事もひとりで対応するしかない俺のことを彼女も気にはしてくれていたのだろう。
「わたしも結構強いです」
口を開けばまた人を翻弄する言葉ばかり。
困った人である。
「そうでしょうね。対戦相手にあなたを前にしたら、俺は全く使い物にならなくなると思います」
この人を前に、剣なんて抜けるはずがない。
「あなたはいずれ、わたしと戦うことになるでしょう」
「はい?」
なにを言い出すかと思えばこの人は。
「わたしを見張るのがあなたの役目なのだったら、もしもわたしがあなたに対抗したとき、わたしがどのくらいの力を持っているのか知っておいた方がいいのではないですか?」
「あなたに剣は向けません」
「でも……」
一呼吸置いて、汗を拭う。
確かに、戦うとなるとそういうときでしかない。でも、
「いつかは逃げたいと、思っているのですか?」
「そ、そうではないですけど……」
ああ言えばこうと思ってもないことばかり述べているのだろう。
つつけばしどろもどろになっていて慌て始めるため、その姿があまりにもかわ……いや、溢れてくる気持ちをぐっとこらえる。
「あなたを守るために強く強くありたいです」
言わなければならないこともある。
「ですが、あなたが逃げ出すときは、あなたのしたいように従います」
「えっ……いいんですか?」
「でも、覚悟してください」
「えっ?」
「王家の手から離れたらあとは俺も自由です。意地でも追いかけてあなたを今度こそ俺のものに……」
「ふ、不謹慎なことを言うのはおやめください! ど、どこかで誰かに聞かれていたら……」
「はは、ではそうならないようにしてくださいね」
彼女がムッとして口をとがらせたのがわかる。半分以上は本気だが、言わないでおく。
「あなたにはもっと普段の時間のお相手を願いたいものですよ」
「……善処します」
「だったら十分です!」
笑うと、彼女も「困った人ですね」と小さく口角を上げた。
これだけでも大きなご褒美だ。
1日を全力で頑張れそうな気しかしない。
「お付き合いありがとうございました。今日はここまでにして朝食の準備を始めますね」
明るくなった空と元気に活動を始めた鳥たちを見てトレーニングを切り上げることを伝える。
「秋まではトレーニング相手もいたんですよ」
同じように立ち上がってローブについた砂を払う彼女に思わず告げていた。
叶うことなら彼女にはすべてのことを伝えたい。
「前もお伝えしたと思いますが、橋の向こうにたくさんの森の仲間がいます。今は冬眠してしまったみたいですが、温かくなったころ、あなたのことをご紹介したい」
「あなたはいろんな方に好かれるのですね」
灰色の瞳に俺が映っていた。
「人を惹きつける大きな力があるから」
無意識なのか無自覚なのか。
「わたしも同じ世界を見せてもらえるのは嬉しいです」
凄まじい攻撃をしかけてくる。
「……ずるいです」
「えっ?」
朝の光がきょとんとした彼女の顔を照らす。
「そ、そんなに可愛すぎるのは、反則です! 俺をどうしたいんですか……」
「なっ!」
「あなたに触れてはいけないのにますます触れたくなる!」
「さ、散々触れているではないですっ!」
「もっと、恋人みたいに」
「なにを言っているんですか!」
俺に施された術式のひとつで、彼女に対して生まれるであろう異性としての感情も封じられていたはずなのだが、完全に効いていないんじゃないかと疑わしい気持ちになる。
もう一度また、王宮の魔女に見てもらわないといけないかもしれない。
もちろん、殺される覚悟で、だ。
「あーっ、抱きしめたい!」
「なっ、何を言って……」
「言えないことも山ほどしたい!」
「ふ、ふざけないでください!」
こうして変わらない1日が始まる。
守りたい笑顔は手を伸ばせばそこにある。
その幸せを噛み締めて、憤慨しながら室内に戻っていく彼女のあとを追う。
日々更新されていく幸せな朝のひとときだった。
「えっ?」
そのままトレーニングの時間も庭にいるというので彼女の好きにするよう伝えていたら、とんでもないことを言い出したため、思わず構えていた剣を落としそうになった。
「トレーニングも対戦相手がいないと張り合いがないのではないですか?」
「………」
今までの騎士たちは二人体制だったため、何事もひとりで対応するしかない俺のことを彼女も気にはしてくれていたのだろう。
「わたしも結構強いです」
口を開けばまた人を翻弄する言葉ばかり。
困った人である。
「そうでしょうね。対戦相手にあなたを前にしたら、俺は全く使い物にならなくなると思います」
この人を前に、剣なんて抜けるはずがない。
「あなたはいずれ、わたしと戦うことになるでしょう」
「はい?」
なにを言い出すかと思えばこの人は。
「わたしを見張るのがあなたの役目なのだったら、もしもわたしがあなたに対抗したとき、わたしがどのくらいの力を持っているのか知っておいた方がいいのではないですか?」
「あなたに剣は向けません」
「でも……」
一呼吸置いて、汗を拭う。
確かに、戦うとなるとそういうときでしかない。でも、
「いつかは逃げたいと、思っているのですか?」
「そ、そうではないですけど……」
ああ言えばこうと思ってもないことばかり述べているのだろう。
つつけばしどろもどろになっていて慌て始めるため、その姿があまりにもかわ……いや、溢れてくる気持ちをぐっとこらえる。
「あなたを守るために強く強くありたいです」
言わなければならないこともある。
「ですが、あなたが逃げ出すときは、あなたのしたいように従います」
「えっ……いいんですか?」
「でも、覚悟してください」
「えっ?」
「王家の手から離れたらあとは俺も自由です。意地でも追いかけてあなたを今度こそ俺のものに……」
「ふ、不謹慎なことを言うのはおやめください! ど、どこかで誰かに聞かれていたら……」
「はは、ではそうならないようにしてくださいね」
彼女がムッとして口をとがらせたのがわかる。半分以上は本気だが、言わないでおく。
「あなたにはもっと普段の時間のお相手を願いたいものですよ」
「……善処します」
「だったら十分です!」
笑うと、彼女も「困った人ですね」と小さく口角を上げた。
これだけでも大きなご褒美だ。
1日を全力で頑張れそうな気しかしない。
「お付き合いありがとうございました。今日はここまでにして朝食の準備を始めますね」
明るくなった空と元気に活動を始めた鳥たちを見てトレーニングを切り上げることを伝える。
「秋まではトレーニング相手もいたんですよ」
同じように立ち上がってローブについた砂を払う彼女に思わず告げていた。
叶うことなら彼女にはすべてのことを伝えたい。
「前もお伝えしたと思いますが、橋の向こうにたくさんの森の仲間がいます。今は冬眠してしまったみたいですが、温かくなったころ、あなたのことをご紹介したい」
「あなたはいろんな方に好かれるのですね」
灰色の瞳に俺が映っていた。
「人を惹きつける大きな力があるから」
無意識なのか無自覚なのか。
「わたしも同じ世界を見せてもらえるのは嬉しいです」
凄まじい攻撃をしかけてくる。
「……ずるいです」
「えっ?」
朝の光がきょとんとした彼女の顔を照らす。
「そ、そんなに可愛すぎるのは、反則です! 俺をどうしたいんですか……」
「なっ!」
「あなたに触れてはいけないのにますます触れたくなる!」
「さ、散々触れているではないですっ!」
「もっと、恋人みたいに」
「なにを言っているんですか!」
俺に施された術式のひとつで、彼女に対して生まれるであろう異性としての感情も封じられていたはずなのだが、完全に効いていないんじゃないかと疑わしい気持ちになる。
もう一度また、王宮の魔女に見てもらわないといけないかもしれない。
もちろん、殺される覚悟で、だ。
「あーっ、抱きしめたい!」
「なっ、何を言って……」
「言えないことも山ほどしたい!」
「ふ、ふざけないでください!」
こうして変わらない1日が始まる。
守りたい笑顔は手を伸ばせばそこにある。
その幸せを噛み締めて、憤慨しながら室内に戻っていく彼女のあとを追う。
日々更新されていく幸せな朝のひとときだった。
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