夢追い旅

夢人

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捨て駒

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「解雇ですよね?」
 拘置所に加瀬を迎えに行った第一声はその一言だった。
 ずいぶん短い間に痩せたものだ。顧問弁護士と別れて、近くのレストランに入る。
 加瀬の事件が起こって、急に柳沢は兼務部長を外されて、部長空白の兼務課長に周平が決まったようだ。どうも相談役が進んで受けたようで、柳沢部長は開発部長から総務部付調査役に転籍している。でも本人はまだ休んだままである。開発部はしばらく不動産事業部預かりのようだ。
「今は自宅謹慎と聞いている。まあいまさら言っても遅いが、派閥の中を動き回りすぎた。警察で赤坂のこと聞かれたそうだね?」
「半分以上は赤坂の話でした」
「この紙に聞かれたことを書き出してくれ」
 周平は用意してきた紙とボールペンを出した。
 加瀬は思い出しながらぶつぶつ言いながら書いている。もともと加瀬に情報らしい情報はない。
「子供が3人、家も買ったばかりなんです。専務に電話を何度も入れましたが、出てきてもくれないんです」
「捨てられたんですよ」
「相談役を社長に合わせたのは誰の指示でした?」
「専務に頼まれました」
「そんなルート加瀬君にありました?」
「ええ、前に取締役と横浜に出かけて繋ぎをしていました」
「それは不味いですね。それは取締役を裏切ったことになりますね」
 それで取締役が捨て駒で使った。彼がリベートをポケットに入れていたことは公然の秘密だった。この業界は身内の信頼をなくすと命とりなのである。
「何とかとりなしていただけませんか?」
「それは甘いですね。私すら先行きが見えませんから」
 周平は紙を預かると、彼がこの部署に入ったのは間違いだと心の中でつぶやいた。単なるどこにも落ちているサラリーマンなのだ。





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