夢追い旅

夢人

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金づる

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 周平は今二枚の名刺を使い分けている。Nビルの秘書室長は表向き旗手社長のグループ会社になるので、どちらの会社に入るのも勝手だが、ただベンチャーの本社にも秘書課がありそちらがメジャーだ。代議士界で言うと私設秘書という感じだ。もう一つはNプランニングの社長という肩書だ。まことに怪しいイメージだが周平はこの名刺が気に入っている。
「今日はミーさんは一緒じゃないのか?」
 Kジャーナルに遠くない轟の馴染の喫茶店で落ち合う。
「ミーは沖縄だよ。社長と同伴だ」
 どうも轟もケイ君もミーに関心が移っている。周平も最近は男だと思わなくなっている。つっけんどんな言葉を吐くが女より女だ。
「ちょっとやばいところまで踏み込んでしまったぜ。そっと関係を薄くしたかったんだけどな」
「ちゃんとお金出すんだから」
 お金はNプランニングから出している。こういう資金も旗手社長から自由裁量でいいと言われている。取り敢えず言い訳のようにミーには毎回伝えている。
「黒崎のところの運ちゃんを昨日は飲み屋に接待した」
 お抱えの運転手だ。どうも彼を抱きこんでいるようだ。
「最近4回Yテレビの本社事務所に通っているということだ」
「Yテレビ?」
「彼の言うのにはそこの会長も黒崎が言う裏のメンバーの一人らしい。二度目は鈴木さんも一緒に行ったらしいよ」
 それで少し思い出した。舅はM商事の元会長に頼まれてYテレビの用地買収の仕事をしたと言っていたことがある。会長のメンバーの一人だと言っていた。
「運ちゃん曰くだが、もともと黒崎はYテレビの会長と組んでいてM商事に乗り換えて、次はベンチャーの社長にという流れだと言っている」
 彼らしい派手な動きだ。
「Yテレビは大のベンチャー嫌いだぜ」
「なるほどな」
 黒崎も舅も次の金づるを見つけたところなのだろう。






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