夢追い旅

夢人

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ホワイトドームの一日

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 『アンの青春』が本になると言う。これについては団長、ケイ君、周平の意見が食い違い調整に時間がかかった。団長は自分が表に出れない人間だからと下がる。それでケイ君をダミーで押そうとする。周平は母のことを団長に書きてもらいたいと下がらない。結局2対1で団長の松七五三を取って松七五三カオルとした。
 本の出版に続いて劇場もテントから広い劇場に代わったが、きわどいシーンをたくさんカットされて団長はむくれ気味だ。それにやはり大きな場所になると出場者も他の劇団から借りざる得ないことも増えた。だが依然として団長とヒロシ役の少女が人気を博している。団長は密かに2作目にかかっている。2作目には同棲して結婚まで考えた物書きが出てくる。ケイ君の調べでは彼は文壇の売れっ子になっているようだ。
 周平は最後のノートにを恋敵の友達に送ろうと考えている。それで最近はほとんど新橋のビルにもいかないで、歩き始めたカオルと公園に出かけたり、ホワイトドームの定位置で思い出したようにぽつぽつとノートに書きこんでいる。
「お前はこのノートを段ボールの中に投げ込んではいないだろうな」
といつも同じ言葉をかけてはノートを閉じている。
「寝てしまった?」
 舞台から帰ってきた団長の声で目を覚ます。ホワイトドームのカウンターには劇に出れない常連が一列に並んで飲んでいる。最近とみに色っぽくなったユキがカウンターの中にいる。彼女が時々ワンピースの胸を広げってつんととがってきた乳首を見せる。そして「わたしも舞台に出たい!」という。
「いや、このノートも最後にしようと思ってね」
「それより今度舞台に出ない?」
「2作目ができた?」
「テントで2作目をと話をつけてきたのよ」
「ユキはヒロシの恋人で初出演。カオルは楽屋に連れて行く」
 ユキは飛び上がって喜ぶ。ユキはヒロシ役の少女に嫉妬していたのだ。
「周平はアンの恋人の物書きよ。できたらトーキのような無声映画の小説に言葉をぶつけてみたいのよ」
「そうだなあの小説は風景のような日常を描いていたな。もっと二人の生々しい言葉があったはずだ」
「その果てにアンは二人目の子供を流産した」
彼女の舞台が目の前に見えるようだ。





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