上 下
34 / 233

拮抗1

しおりを挟む
 親衛隊は逆に都の入口を閉鎖した。チャクラバットもどうしてか慎重に構えている。彼らは半島を制圧した茉緒たちを反乱者と決めつけている。茉緒も敢えて都に攻めようとしていない。この国の民に支持されなければだめだと思う。
 ヒデが夜に戻ってきて茉緒を都の一角に連れ出した。茉緒は農婦に扮してヒデと籠を背負って裏通りを歩く。すると裏木戸が開いて男が覗く。ヒデは黙って通路の中を歩いていく。行詰りの壁が開いた。そこから下りの階段が続く。中は荷物置き場でその奥にまた壁が開く。これは百地の忍者屋敷だ。
「こちらがゴラクさんだ」
 宗久が円卓に座っていて正面に小太りの老人が座っている。
「昔からこの界隈の国の商人を束ねてきた長だ。堺にも屋敷があった。元々は中国の南海の領主だった。若い頃追われてこの国まで来られた。こちらは藤林の頭の茉緒です」
「可愛いお嬢さんだね」
「いやいやなかなか魔王と呼ばれた忍者ですよ」
「いえ日本から弾き出されたのです」
「弾き出された者同士組むのもいい。チャクラバットはビルマと繋がっているのだよ」
「ビルマ?」
「日本では徳川のようなものだ。先代の王様はそれは苦労されていたのさ。アユタヤは商人の力が強い。港には各国の船が入ってくる。その財力は凄いものだ。だから商人を大切にされた」
「これからどうしたら?」
「戦争はいけません。秘密裏にチャクラバットの勢力を消す必要が。ビルマの介入を許してはいけません。しばらく宗久さんをここに残してください。豊臣の財宝の話は魅了的ですな」






しおりを挟む

処理中です...