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抜け忍村4
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一日中小屋にいて剣の手入れをする。頭の中ではどうしても柳生の兄の剣を見切れない。
「どうも強引に柳生の兄に下忍を連れて柘植に行かせるそうだ」
源爺が昼過ぎに野良着姿で戻ってくる。
「小頭決定より先に形を作ろうという腹ですわ。だが抜け忍村から出すわけには」
「夜に決行だな」
2刻半眠って起きるとすでに源爺の姿がない。茉緒は黒装束に着替えると約束の抜け忍村の崖の前に来る。合図の笛が鳴る。草むらから源爺が顔を出す。その後ろを付いていくと崖を降りてくる柳生の男が見える。
「彼は裏山からの出口を探っている。だがこの山は深い」
口だけを動かす。茉緒はすでに背中の刀を抜いている。崖を降り切るまでに襲おう。走り出すと一振りを入れる。だが男は崖から跳ねるように躱す。さすがだ。
「茉緒だな?」
「・・・」
「俺は確かに裏柳生だ。服部にとってお前らは目障りなのだ。以蔵も動きすぎた」
ほとんど同時に上段から剣風が走る。辛うじて躱すと後ろに下がる。背中に崖が迫っている。続いて鋭い鋭い突きが繰り出される。その時空を目つぶしが飛んでくるのを見た。思い切り転がると切り抜けた。柳生の男は構えたまま体ごと爆発した。
「茉緒洞窟に急げ!」
源爺の声を後ろで聞いて林の中を抜けていく。
女が逃げる!
「どうも強引に柳生の兄に下忍を連れて柘植に行かせるそうだ」
源爺が昼過ぎに野良着姿で戻ってくる。
「小頭決定より先に形を作ろうという腹ですわ。だが抜け忍村から出すわけには」
「夜に決行だな」
2刻半眠って起きるとすでに源爺の姿がない。茉緒は黒装束に着替えると約束の抜け忍村の崖の前に来る。合図の笛が鳴る。草むらから源爺が顔を出す。その後ろを付いていくと崖を降りてくる柳生の男が見える。
「彼は裏山からの出口を探っている。だがこの山は深い」
口だけを動かす。茉緒はすでに背中の刀を抜いている。崖を降り切るまでに襲おう。走り出すと一振りを入れる。だが男は崖から跳ねるように躱す。さすがだ。
「茉緒だな?」
「・・・」
「俺は確かに裏柳生だ。服部にとってお前らは目障りなのだ。以蔵も動きすぎた」
ほとんど同時に上段から剣風が走る。辛うじて躱すと後ろに下がる。背中に崖が迫っている。続いて鋭い鋭い突きが繰り出される。その時空を目つぶしが飛んでくるのを見た。思い切り転がると切り抜けた。柳生の男は構えたまま体ごと爆発した。
「茉緒洞窟に急げ!」
源爺の声を後ろで聞いて林の中を抜けていく。
女が逃げる!
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