復讐の芽***藤林長門守***

夢人

文字の大きさ
上 下
92 / 192

天守閣8

しおりを挟む
 翌日には織田軍が5千大和の国境を越えた。合わさるように順慶軍も3千で天守閣の裏道を登って来る。順慶軍の先駆けは慎吾が1組を率いている。茉緒は昨日から天守閣の見える森の中に潜んでいる。弾正は近隣に向け法螺貝を吹いているが兵が集まってくる様子はない。それどころか城内から千5百ほどが逃げ出している。
 弾正の姿が天守閣に見える。ほとんど同時に表門に織田軍が押し寄せてくる。順慶軍の旗竿が山間から押し寄せてくる。そんな中大屋根に白い鷲が舞い降りる。
「攻め込みますか?」
「いや出番はないわ」
 茉緒には白い鷲が果心居士に見えた。
「茉緒、弾正を黄泉の国に連れて行く」
 その声が聞えたような気がした。いつの間にか弾正の姿は消えている。織田の兵がすでに天守閣に入っている。順慶の兵は突撃をせず見守っている。織田軍とぶつかるのを避けているようだ。小頭の組が茉緒を見つけて森に入ってくる。
「天守閣から離れるの!」
 茉緒が叫んだ。その時轟音がして天守閣から火柱が上がった。白い鷲がゆっくり天守閣の周りを円を描いている。
「弾正は自爆したのか?」
「どうでしょう?」
 白い鷲は急に天守閣の上空から軌道を外れて茉緒の登っている木まで近づいてくる。果心居士が弾正を抱えている。









しおりを挟む

処理中です...