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 ユキはやや唇を尖らせたが、すぐに破顔した。

 風呂からあがり、フリルのついたブラウスと半ズボンを着て、膝下までの靴下を履き靴下留めをしたユキの姿はまるで寄宿舎の美少年だった。
「あ……」
 突然ユキの腹から小動物の鳴き声のような音が鳴る。腹を押さえユキは頬を染めた。
「は? かわいい……お腹すいた?」
「うん……」
「よし、飯を探そう」
 邸宅内をまたうろうろと歩き回り、テーブルのある食堂のような広間を見つける。その先に厨房もあった。ノーヴが棚の中や鍋の中や、調理器具を漁る。
「おー食材色々あるじゃん?」
「お手伝いします」
「料理したことある?」
「ない……」
「ユキはテーブルについて待っていようか」
 ユキが待っている間、ノーヴは幸いにも火のついたままだったかまどにフライパンを置いて、油を垂らし溶いた卵と刻んだ野菜と肉、炊いてあった米を入れて塩とコショウを振り手際よく炒める。自分のためのズボラ飯なら作り慣れていた。
 できあがり、ノーヴは皿に盛ってスプーンと一緒にユキの前に置く。ユキは不思議そうに料理を見つめた。
「できたよ、お食べー」
「何ですかこれ……?」
「チャーハン」
「ちゃーはん?」
 謎の料理に鼻を近づけてみると炒った卵の香りにユキの腹の小動物がまた鳴った。急いでスプーンにチャーハンを山盛りにし、ユキは口に運んだ。
「っっ……おいしい!」
 感動のあまりユキが叫ぶ。妙に中毒性のある味にスプーンがとまらず、あっという間に平らげた。
「こんなにおいしいもの初めて食べました……ごちそうさま」
「うん、また作ってやる。こんな適当料理だけじゃなくて、もっとうまいもん色々食わせてやるからな」
 きっとユキはろくなものを食べたことがないのであろうと思い、ノーヴはこの世界の料理を覚えなければと決意しつつ親指を立てて見せた。
「いや、その……僕にこれの作り方教えてください」
「え?」
「料理だけじゃなくて、掃除とか洗濯とか……何か役に立ちたいんです」
「ユキ……」
 ユキの健気なお願いにノーヴの目頭が熱くなる。
「そうだな……あんな性的な世話だけじゃなくて、色々できるようにならないとな!」
 冗談まじりにノーヴは笑って言った。
「よし! 調教だ!」
「うん!」


 二人が調教に夢中になっているうちに、とっくに日が没していた。
「ユキ、手大丈夫?」
「うん……何とか」
 刃物などで傷だらけになってしまったユキの手に包帯を巻きおわり、ノーヴは窓の外の暗さを見て言った。
「お疲れ様。もう遅いし寝ようか」
「うん……あの……」
 ユキは包帯でグルグルになった手を後ろ手に組み、もじもじしながらノーヴを上目に見る。
「一緒に寝てくれますか……?」
「うん、いいよ」
 ノーヴは秒で答えた。
 壁掛けランプで優しく照らされた廊下を二人は手を繋いで歩き、寝室とゆったりとした寝巻きを見つける。着替えて、二人で寝ても広すぎるベッドに潜り込み身を寄せ合った。
「襲いたくなったら、襲っていいですからね……?」
「しないよ、そんなこと……」
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