21 / 32
21.リッキー!リッキー!
しおりを挟むリッキーの指差す、おんぼろな木箱を見た俺は目を細める。
おんぼろな木箱は、中身が見えるくらいに面がすかすかなのだ。
しかし暗いので、中々見えない。
俺はおんぼろな木箱をひょいと持ち上げてみる。
木箱は下の面が無く、地面に被せただけの物だったのでそのまま投げ捨てた。
地面には小瓶が置いてあった。
コレハ、大事ナ物ジャナイ。
「ま、待つワン。ちゃんと説明を聞くワン」
俺はむんずと小瓶を掴むと中身が入っているか振ってみた。
感触から、どうやら小瓶の中身は液体らしい。
リッキーは慌てて小瓶を俺から取り上げる。
俺はリッキーに取り上げられた小瓶を見上げた。
「少しは落ち着くワン」
「モ」
俺は落ち着いている。
まぁまぁとジェスチャーをして、何故か興奮しているリッキーを宥める。
「ワ、ワン。大食らいが何故か投げ捨てたその木箱が、人間たちがダンジョンに入る大きな理由の一つである、宝箱だワン」
「モ?」
俺は振り替えって、ぼろぼろの木箱を確認した。
説明しよう。宝箱とは立派な箱である。
俺に見えるのは、現代日本で見ることもないであろう、ぼろぼろの蓋もついていない木箱だ。
よって、この木箱は宝箱ではない。証明完了。
俺はリッキーのいう宝箱がどこかにあるのかと周囲を見回す。
しかし、視界に入るのは、朧気に周りを照らすダンジョン苔と、ぼろぼろの木箱。
そして、小瓶を持った二足歩行のシベリアンハスキーだけである。
ほうほう、なるほど。
「モモモ」
俺は全て理解したぞと、メガネをクイックイッとする仕草をする。
因みに俺は前世から視力は良かったので、ノームの人生を含めてメガネをつけた経験はない。
メガネクイッは、日本のマンガで見たデータで知的で戦うキャラクターの真似だ。
さて、俺の緻密な戦略をお見せしよう。
貴様が宝箱だな、リッキー。
「何を考えてるのかさっぱり解らないけど、大食らいが何だか不穏な事だけはわかるワン」
俺は小瓶を取り返そうと、宝箱リッキーの周りをピョンピョン飛び跳ねる。
見つけた宝は、全部俺の物。
現代日本ゲーム界の常識である。
宝箱とは宝の在りかを教えてくれる以外は、障害でしかないのだ。
全部わかってんだね。
「いい加減、お、落ち着くワン。これは何の変哲もないポーションだワン」
俺は人生で初めて見聞きするポーションという言葉に、飛び跳ねる速度を二倍にした。
おれの勢いにバランスを崩し、尻餅をつくリッキー。
俺はポーションの小瓶をリッキーからぶんどるると、スキル精霊の身体を使用し、身体を変形させ、素早く体の中に取り込んだ。
「あいたたワン。何するんだワン」
俺はやれやれと首を振って、さも何も無かったかのように、木箱を拾ってリッキーに渡す。
ミッション完了だ。
リッキーはジト目で俺を見ながら注意してきた。
「ダンジョンのアイテムは大食らいじゃあっちの世界に持って帰れないワン。大人しく返すんだワン」
な…んだと。
立ち上がったリッキーは無言で俺に手を差し出して来た。
お手かな?
俺は空気を読む察知能力を駆使して、仕方なくリッキーにポーションの小瓶を返す。
「宝箱に入っているお宝。このお宝を目指して人間たちはダンジョンに入ってくるんだワン」
リッキーよ、宝箱ではない、お前の持っているのは蓋のないただの木箱だ。
リッキーはポーションの小瓶を元の位置に戻し、木箱を被せた。
「出てくるお宝が良ければ良いほど、たくさん獲物は釣れるんだワン。ちなみにこのポーションは、無いよりマシな程度のハズレだワン。ポーションは錬金術で作れるからだワン。当たりはダンジョンからしか取れない、スキルのついた武器や防具だワン」
じゃあ、そのポーションくれても良いじゃんと俺は抗議の目線をリッキーに送った。
「ダンジョン内にはこういう宝箱がそこらかしかに置いてあるんだワン。みんな獲物をおびき寄せる大事な餌なんだワン。とったらダメなんだワン」
◆◆◆
書いている内に何故か犬に興奮してしまったので、文章がハチャメチャになりました。
犬回はもう作者的に限界かもしれません。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで
六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。
乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。
ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。
有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。
前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる