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23.幹部登録
しおりを挟むその後、俺はリッキーにダンジョンの幹部登録という物をされた。
幹部には階級があり、俺が登録されたのは一番下っ端の軍曹である。
そこから上げた功績によって、ダンジョン元帥であるリッキーが直々に判断して昇進させていくらしい。
俺は軍隊には詳しくないので、軍曹がどこら辺の偉さなのかは知らないが、幹部待遇だというので軍曹はきっと良い地位なんだろう。
そうだよな?
…信じてるぞリッキー。
土谷陸軍曹こと大食らい軍曹の誕生である。
俺に与えられた権限は、現場兵士の監督。
現場兵士とは、ダンジョンに自動生成される雑魚モンスターくんたちや、外部から雇った幹部でない人たちの事だ。
俺の居る所からダンジョンの1フロア程度の距離に限られるが、彼らに命令出来る立場を得た。
そして、俺にはダンジョン構造の細かな所の記録保存の権限も与えられた。
ダンジョンの構造は地層のようになっている。
まず通常攻撃では破壊不可能なダンジョンの骨格部分。
次に通常攻撃で辛うじて破壊可能だが直ぐに修復される準骨格部分。
そして、強度は普通の物質と変わらないが徐々に修復される表面部分だ。
リッキーのダンジョンでは表面部分は岩石である。
他のダンジョンでは表面部分は城の床だったり大理石だったりする。
それぞれの構造は内容によって維持や修復に必要なコストが違う。
岩石は見栄えはしないが、ある程度の強度があり、修復するコストも安いために、リッキーのダンジョンにあった良い選択だろう。
この各種ダンジョン構造の修復に関わるのが、記録保存である。
ダンジョンコアには、構造の最適な状態を保存出来る記録領域があり、ダンジョンは、ダンジョンコアに記録された最適な状態を目指して常に修復されていく。
そして修復を止めるような異物は、時間をかけダンジョンに吸収されるのだから、長期的に見ればダンジョンは形が変えられない物なのだ。
その変えられないハズのダンジョンの形を変える権限が記録保存の権限だ。
俺に与えられたのは、骨格と準骨格に影響のない表面部分の記録保存の権限だけだが、ダンジョンの形をある程度変える事が出来るようになった。
これで落とし穴のような原始的なトラップも作成可能だ。
記録保存はダンジョンを修復しないようにするだけなので、トラップの作成や地形の変更には直接人手をつかって掘る必要があるが…。
◆
俺は記録保存を少し試してから、仕事のためにリッキーのダンジョンを出る。
リッキーのダンジョンはウルの取れない日は無報酬である。
今日とれたハイエナ一匹の分のウルだけだと、ダンジョンの維持にも事欠くらしいので、俺は報酬を断った。
ハイエナを倒すのに、そこそこ苦労したように見えるのに。
まさしく、限界破綻寸前ダンジョンである。
精霊を雇うにはウルが必要で、リッキーのダンジョンを維持するにもウルが必要。
そして仕事場には今日もアナグマ族が、いや、フマとラッツが待っている。
俺は暮れつつ日の中、静まりかえったリッキーのダンジョンを振り返える。
先は長いな。
まずは帰ろう。
そして歩き出し、俺は思い出す。
あ、もっこ買い忘れたなと。
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