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26.さあ、労働の時間だ
しおりを挟むその夜俺はブーマンさんの家に泊めて貰った。ブーマンさんも精霊だけれど、動物だった頃の名残で夜は普通に寝るらしい。俺は生きてるもふもふの布団にありつけたのだが、朝になる前に起こされた。
「睡眠は1日2時間程度で充分だ。街の警備に行ってくるよ。色んな種族がいれば問題は起こるものだからね。君も起きるかい?」
「モモ…」
時計は無いが、体感時間は深夜を指しているし、ブーマンさん自身も2時間くらいしか睡眠をとっていないと言っている。1日2時間だと…。超人かこの人?
いや、超鹿か。2時間睡眠で大丈夫な鹿って生物マジやべぇ。俺は頭を振って、遠慮するよと答え、もふもふ布団からブーマンさんの体温の残る布団に潜り込んだ。
「鍵はないから、出る時はそのままで良い」
セキュリティはどうなのかどころか、鍵自体ない。平和な世界に来ているなと思いつつ、俺は微睡みの世界へと再び旅立った。まぁ偉い人の家だし安全なんだろう、多分。
◆
高い位置にある天窓から光が差し込んで、俺の顔を照らしてきた。
天窓に半開きの目を向け、お洒落な家だなとぼんやり思いつつ、俺は起き上がった。
下層より中層の方が日の出は早い。
急げば、アナグマ族の終業の鐘に間に合うだろうか?
俺は瓶に貯められている水で顔を洗い、ブーマンさんの家を飛び出した。
フマは俺を心配に思っているだろうか?
下層までの道はそこそこ長い。
歩幅を大きくするために、俺は足を長くすると、えっさほいさと走り出す。
ピコンと精霊の身体のレベルの上がる音がした。
土谷陸
種族 ノーム
lv 1
HP 128/128 (+2)
MP 151/151(+5)
状態 健康
スキル
言語理解Lv-
格闘Lv1
土魔法Lv2
金属魔法Lv1
付与魔法Lv2 ↑+1
契約Lv1
精霊の身体Lv6 ↑+1
精霊の心Lv1
完璧な獣Lv1
取得可能スキル▼
加護 精霊王の寵愛
称号 大食らい 転生者
やがて、俺が下層にたどり着くとアナグマ族はとっくに解散していて、鐘の下にはもう誰も居なかった。
フマはいつものように、アナグマ族に風呂につれていかれたのだろうか?
いざ風呂に探しに行って会えなくても面倒だしなあ。
俺はどうしようかと頭を一つかくと、まぁ夜には会うのだから今日くらい大丈夫かとリッキーのダンジョンに行くことにした。
今日の服は、某ゲームの主人公である土管屋の弟の物に変える事に決めた。
成長したスキル精霊の身体でペロンと服を変えると、服の質が少し上等な物に変わっている気がする。
さあ、今日もダンジョンで労働だ。
◆
お風呂でさっぱりとした私は、誘ってくれたアナグマに愛想よく手を振る。
労働の後のお風呂。
やはり、侮れないわね。
「「「モ」」」
しばらく待てば、ノームの3人組が風呂屋から出てくる。
水の精霊ラッツの仕事場で助けた精霊たちだ。
私について来た彼らは一晩アナグマ族の仕事場で働いた後、風呂にもついてきた。
「どう? お風呂。気に入ったかしら」
「「「モモ!」」」
「そう。それは良かったわ」
体から湯気を立て、満足げに頷くノームたちを見て私も頷く。
話せないアイツと会話をしていたからか、自然にノームたちの言いたい事は何となくわかった。
「でも、何故みんな話せないんだろ? ノームってそういう精霊?」
「「「…モモ?」」」
「自分たちでもわからないのね」
そう言えば、アイツは今、どこでどうしているだろうか?
何処かへ行ったまま帰らなかったけれど。
もっとも、帰ると言っても私たちに帰るべき家はないから、集まるならアナグマ族の仕事場か、ラッツの仕事場になるんだろう。
帰るべきところもない、仕事漬けの私たち精霊種の立場は不安定だと改めて思う。
心とは裏腹に中層を見上げれば、朝の日差しがやけに眩しく感じる。
今日も1日労働が始まる。
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