【本編完結済】未来樹 -Mirage-

詠月初香

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1章

0歳 -水の陽月1-

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ゆっさゆっさと、とってもリズミカルに身体を揺すられています。
それもエンドレスです。延々と揺すられています。

(うーーーーん)

眠い、すっごくすっごく眠い。

こんなにも眠い理由は明白で、大学に合格してからのこの一週間ちょい。
受験勉強の為に封印していた小説や漫画・ゲーム等の趣味に没頭しまくったから。

今、友達内で流行っている作品に私も例外なくはまってしまい、趣味断ちをしていた反動もあるんだろうけど、楽しくて、楽しくて、時間がどれだけあっても足りなくて……。そう、昨晩もかなり夜更かししちゃったのです。


その作品とは基本となる小説を元に様々な作品展開がされていて……。

世界観や主要キャラは基本となる小説に準拠するのだけれど、とある漫画では冒険モノ。とあるゲームでは恋愛乙女ゲームとなり、別の機種では立身出世モノや対戦格闘。とあるアプリでは国家運営シミュレーション、更にはカードゲームやボードゲームにゲームブックと本当に様々な媒体で、様々な形態の“同一世界の別作品”が作られているのです。

“大樹の根幹は一つなれど、その枝葉は無数にある”

というのがその作品群のコンセプトで、葉っぱの数だけ平行世界があるって事らしい。そのコンセプトを表すように本当に多くの作家さんが参加していて、公式作品だけでも結構な数が出版されていた。しかも二次創作……いわゆる同人にも寛容で、そちらを合わせたら有名どころだけ数えても数えきれないぐらい。

それらの作品群の名前はそのコンセプトにちなんで「未来樹 -Mirage-」といい、幾重にも重なる幻や蜃気楼のかなたにある巨樹……北欧神話にあるユグドラシルのような巨木が統一モチーフです。

ちなみにこの未来樹という作品名は“根幹”と言われる基本小説+それに準じた作品をさし、「Mirage -未来樹-」とタイトルの前後が入れ替わると、派生ならぬ
“葉生”を指すのです。こちらは様々な平行世界の話で、「もしあの時、〇〇だったら」みたいな似て非なる世界のお話。同人関係は基本的にこちらとなっているらしいです。私はまだ見た事ないから良く知らないんだけどね。

もっとも、ネットでは巨木よりピザの方が解りやすいと言われていたっけ。
土台(生地)は同じだけれど、トッピング次第で別物になる。でもピザはピザだ!というのが理由らしいです。

他にも基本小説はライトノベルならぬ“ライドノベル”とも言われていました。
英単語的にはおかしいのだろうけど、言いたい事はなんとなくわかる気がします。。

ちなみに私は葉生モノにはまだ手を出していないので良くはわかりません。
ただ古代~中世期の日本を思わせるその和風ファンタジーな世界観がとても好きで根幹となっている小説にいっきにのめり込んでしまっていたのです。

えぇ、昨晩?の睡眠時間が1時間切るぐらいには……。




だから、

(あっ、私バスの中で寝ちゃったんだ。
 おじさん、私を揺さぶって起こそうとしてくれているんだな)

なんてことを思うんだけど、眠すぎて瞼が開いてくれない。

(でも、何か変? 重力の方向が……なんだか違う?)

そう、前後に肩を揺さぶられてるというより、上下に全身を揺さぶられている。
後頭部がユサユサユサユサ……と、何か厚い生地に擦りつけられているような
小さく打ち付けられるようなそんな感覚。

(って、事は……私ってば座席で横になって寝ちゃったの?!)

ショーーーーーック!!
年頃の……今月末には18歳になる女子のやる事ではない。絶対にない。あまりの衝撃に早急に起きねば!と気合と根性で瞼を開けた……のだけど、良く見えない。ぼやぁーーーーと何かが居るのは解るのだけれど、それが何かすら分からない。

(あれ? …………あっ!、眼鏡がない?!)

私は受験勉強を始めてからガンガン視力が落ちてしまって、それまでどれだけ勉強してなかったんだってぐらいに視力が落ちに落ちた。だから今の視界不良を眼鏡がない所為だと思ったのだけど、それにしては何だか違和感がある。

まず目の前の人?が巨人かと思う程に大きいのですよ。バスの運転手のおじさんなら私よりも少し大きいぐらいでこんなに大きい事はない。そのおじさんの顔を思い出した時、驚愕に満ちた“あの時”の顔を思い出した。

「…………………ぎゃぁーーーーーーーー?!」

友達から常々見た目を裏切る残念系女子の象徴のようだと言われるこの叫び声。
なんでも友人曰く「見た目だけは深窓の御令嬢っぽいのに、なんでそんなに残念系なの……」との事だけど本当に驚いた時に可愛らしく「きゃぁ」なんて出ないよ。

(いやいやいやいや、そうじゃない。そうじゃないぞ、私)

今、考えるべきことは私の叫び方の是非じゃなくて……
私が今、どうなっているのか……。この事に尽きる。

思考できるという事は、少なくとも意識はあるという事です。だけど、先ほどから何度も試しているのに腕が全く動かない。足も動かそうとするのだけど、やはり同じく動かない。ただ怪我等で動かないというよりは、こう……何かによって押さえつけられているかのような圧迫感があるのです。

(もしかしてうまい具合に何か柔らかいモノに落ちて助かったの?
 そして顔だけ出して、体が埋まって動かないなんてギャグなオチ……?)

そんな情けない姿を想像してしまうけど、何にせよ視界不良で現状がつかめない。と、何やら私を揺するリズムに合わせて地面を蹴るような音が聞こえている事に気づきました。音の迫力は全く違うけど、このリズムには覚えがあります。村で酪農をしているおじさんの家で飼っていた馬がゆっくり走っている時のリズムです。


つまり……私は馬に乗っている???




それまで一定のリズムで私を揺すっていた不確定名「巨大な人」がこちらを見た。

……ような気がする。たぶん。

いや、だってぼんやりとした影のような輪郭しか見えないんだから仕方がない。
ただ意識がこちらに向いたような気配がありました。


『6gqkt rbdjzw\』


…………やばいです、何かを言っているようですが全くわかりません。日本語では決してないです、はい。英語なら、簡単な……中学・高校で習う単語程度ならば少しは聞き取れます。ですが言葉の響きといえば良いのか、それが全く違うのです。
これは…………本当に…………


どーーーーなってんのぉぉぉぉーーーーーー?!
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