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mission 2 孤高の花嫁
使い魔と試運転
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Side-アーシェ 5
あーあ、退屈だなあ…。
いくら可愛い制服だからって、やってることが給仕じゃいつもの白銀亭バイトと変わんないじゃん。そりゃ、ナディアさんの護衛っていう役目もあるけどさ。
あれから兄貴は、この店を出て色々と動き回ってるみたい。衛視と派手にやりあったのって、自分に注意を引きつけるためって意味合いがあったらしいけど…何やってるんだろ? 退屈だし、試運転も兼ねて使い魔にしたティコとチャコの目を借りて兄貴の行き先を探ってみたのよね。でもまだ使い始めたばっかだから、ふなれでさあ。
ちなみに兄貴にくっついて行かせたのは、やんちゃなチャコの方。ちょっとおとなし目のティコは、奥の部屋でちゃっかりとナディアさんに膝を借りて丸くなって寝てる。あーあ、あたしにももっといろんなことができたらいいのになー。いまはやっと使い魔の契約ができたばっかだし。いつになったら一人前って呼ばれるんだろ?
試しにまた、ティコを通じて兄貴の様子を探ってみよっと。暇つぶしの覗き見じゃなくて、あくまでこれは試運転! だからね!
あたしは目を閉じて、自分の分身とも言える使い魔に意識を集中する。
『奴の仲間か…なら、まずはお前から片付ける。その上で、奴のことを吐いてもらうぞ!』
その声とともに見えたのは、思ってた以上に物騒な光景だった。あれ? お取り込み中?
目の前にはボロ布みたいなおっちゃんが、構えたナイフを舐めまわしてる。うわ、きも!
兄貴ってば、また厄介ごとに遭遇してんの? ほんと、天才的なくらいにトラブルが寄ってくるよね。しかも、なんでか弓も魔法も使わずに短剣なんか構えてるし…珍しい。もしかしたらこれって、ヤバい?
そこまで考えたあたしは、ちょっとしたイタズラを考えついた。先輩たちに聞いた、使い魔の応用方を思い出したんだ。使い魔を持てるようになったら、魔術師としての技量は一気に伸びるんだって。使い魔を媒介に魔法も撃てるからなんだけど。あとは応用のやり方次第で、この先の実力が伸びるかが決まるんだって。よーし、試運転試運転!
まずは、チャコに意識を合わせて攻撃呪文を小声で詠唱。この時あたしもチャコも動きが止まるから、実戦では注意しなくちゃなんだけど。そんで、詠唱した呪文は魔力ごとチャコの方に送り込む。この酒場でうっかり呪文を解放しちゃったら、ちょっとシャレにならないもんね…。ふふふ、逃さないわよ? 数少ない、兄貴に恩を売れるチャンス!
チャコに魔法を解放した瞬間、確かな手応えを感じた。兄貴の目の前には、こんがりといい感じに焼きあがったボロ布おじさんが転がってる。やった、成功!
でも…あれ? 確か、使い魔経由の魔法って、威力が落ちるって聞いたんだけどな? 案外、そうでもないよ? むしろ、いつものに割り増しくらいに感じる。下心の分だけ気合が入ったのかな?まあいいか、効いたんだから!
『いいタイミングだな、助かった』
兄貴が撫でながら褒めてきた。ふふん、あたしだって、やるときゃやりますから!とりあえず事情を知ってる酒場のマスターに声をかけてもらって、手の空いてる人たちに現場に行ってもらった。運び込まれたおじさんはボロ布具合がさらに増した焦げっぷりで、まだ気絶したまま。運んできた元自警団の人たちは、魔法の威力に若干引いてた。ラグちゃんも応急手当してくれたから大丈夫だよね。
まあ、兄貴が帰ってきたら話は聞けるよね? ひとまず縛って奥の物置に放り込まれたけど、焼き豚を連想したのは乙女の秘密。
兄貴に尋問されるのって、ちょっとだけ同情しちゃうかな…。
あーあ、退屈だなあ…。
いくら可愛い制服だからって、やってることが給仕じゃいつもの白銀亭バイトと変わんないじゃん。そりゃ、ナディアさんの護衛っていう役目もあるけどさ。
あれから兄貴は、この店を出て色々と動き回ってるみたい。衛視と派手にやりあったのって、自分に注意を引きつけるためって意味合いがあったらしいけど…何やってるんだろ? 退屈だし、試運転も兼ねて使い魔にしたティコとチャコの目を借りて兄貴の行き先を探ってみたのよね。でもまだ使い始めたばっかだから、ふなれでさあ。
ちなみに兄貴にくっついて行かせたのは、やんちゃなチャコの方。ちょっとおとなし目のティコは、奥の部屋でちゃっかりとナディアさんに膝を借りて丸くなって寝てる。あーあ、あたしにももっといろんなことができたらいいのになー。いまはやっと使い魔の契約ができたばっかだし。いつになったら一人前って呼ばれるんだろ?
試しにまた、ティコを通じて兄貴の様子を探ってみよっと。暇つぶしの覗き見じゃなくて、あくまでこれは試運転! だからね!
あたしは目を閉じて、自分の分身とも言える使い魔に意識を集中する。
『奴の仲間か…なら、まずはお前から片付ける。その上で、奴のことを吐いてもらうぞ!』
その声とともに見えたのは、思ってた以上に物騒な光景だった。あれ? お取り込み中?
目の前にはボロ布みたいなおっちゃんが、構えたナイフを舐めまわしてる。うわ、きも!
兄貴ってば、また厄介ごとに遭遇してんの? ほんと、天才的なくらいにトラブルが寄ってくるよね。しかも、なんでか弓も魔法も使わずに短剣なんか構えてるし…珍しい。もしかしたらこれって、ヤバい?
そこまで考えたあたしは、ちょっとしたイタズラを考えついた。先輩たちに聞いた、使い魔の応用方を思い出したんだ。使い魔を持てるようになったら、魔術師としての技量は一気に伸びるんだって。使い魔を媒介に魔法も撃てるからなんだけど。あとは応用のやり方次第で、この先の実力が伸びるかが決まるんだって。よーし、試運転試運転!
まずは、チャコに意識を合わせて攻撃呪文を小声で詠唱。この時あたしもチャコも動きが止まるから、実戦では注意しなくちゃなんだけど。そんで、詠唱した呪文は魔力ごとチャコの方に送り込む。この酒場でうっかり呪文を解放しちゃったら、ちょっとシャレにならないもんね…。ふふふ、逃さないわよ? 数少ない、兄貴に恩を売れるチャンス!
チャコに魔法を解放した瞬間、確かな手応えを感じた。兄貴の目の前には、こんがりといい感じに焼きあがったボロ布おじさんが転がってる。やった、成功!
でも…あれ? 確か、使い魔経由の魔法って、威力が落ちるって聞いたんだけどな? 案外、そうでもないよ? むしろ、いつものに割り増しくらいに感じる。下心の分だけ気合が入ったのかな?まあいいか、効いたんだから!
『いいタイミングだな、助かった』
兄貴が撫でながら褒めてきた。ふふん、あたしだって、やるときゃやりますから!とりあえず事情を知ってる酒場のマスターに声をかけてもらって、手の空いてる人たちに現場に行ってもらった。運び込まれたおじさんはボロ布具合がさらに増した焦げっぷりで、まだ気絶したまま。運んできた元自警団の人たちは、魔法の威力に若干引いてた。ラグちゃんも応急手当してくれたから大丈夫だよね。
まあ、兄貴が帰ってきたら話は聞けるよね? ひとまず縛って奥の物置に放り込まれたけど、焼き豚を連想したのは乙女の秘密。
兄貴に尋問されるのって、ちょっとだけ同情しちゃうかな…。
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