古の冒険都市は観光地化の波に飲まれました 〜次は(俺・オレ・私・あたし・わたくし)のターン〜

杏仁霜

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mission 2 孤高の花嫁

緑との攻防戦

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Side-デュエル 18

 あれからしばらく…蔦や枝はなおもしばらく俺たちを取り込もうとしつこく伸ばされ続けていた。

「うふふ、捕まえちゃうから!」
「お待ちになって、素敵なお方!」
「共に永遠の時を過ごしましょう!」

 ひいいいい!
 うっとりした目で迫ってくる女が、こんなに怖いとは思ってもみなかった!
「完全にイっちゃってる目つきだもんな!」
「援軍はまだなのか!?」
 アーチもラスファもフランシスも、全く同じ感想らしい。程度の差は多少あれど同じように狙われているのなら、当然と言えば当然なんだが。

「大丈夫か、お前らー!!」
 そこに勢いよく開く扉! 期待と共にそちらに目をやると、屈強な元・自警団員たちが整列していた。ドライアードたちの目がまとめてそっちに吸い寄せられ、剣呑な光をたたえる。

「「「「男は帰れー!!!」」」」

 俺たち全員が、悲鳴混じりの声をあげた。
 言ったよな、俺たち! 女性限定の援軍って!それがなんで自警団の男たちが来るんだよ!
「お? 何だ何だこのきれーなねーちゃんたち!」
「追い回されてんのか、羨ましいぜこの色男!」
 危機感ゼロの能天気なヤジが飛ぶ。
そんなこと言ってる場合じゃないというのに! どうやったらこの状況を収拾できるんだ!

「ドライアード!? 男性の皆さん、決して前に出ないでください! 木の中の世界に引き込まれて、二度と出てこれなくなりますよ!」

 ラグが彼女たちの正体を看破してくれたお陰で、整列していた自警団の面々は続いて来たブレンダに扉の向こうに引っ張り込まれる。向こうではどうやら、彼女がドライアードの危険性についてじっくりと説明しているようだった。ラグたちは残して来たトロールとの戦いで、信頼してもらえるだけの働きをしたのだろう。助かった。

「何やってんのよ!兄貴たちも早くこっちに逃げ込みなよ!」
 こっちの惨状を見かねたように、アーシェが声を張り上げる。
「簡単に言うがな、狂った女の執念で逃げられないんだ! どうにか策はあるか、ラグ?」
 すでに地面には切り飛ばされた蔦や枝が積み重なっている。後半のラスファの問いを受けて、ラグは思案するそぶりを見せた。そのポーズはいつしか祈りの姿勢に変わる。

「知識神リーブラ様、どうか啓示をお与えください…!」
 それは、ラグが仕える知識神への祈り。『啓示』をもらおうと言うのか!

『啓示』とは、神から直接にもらうアドバイスのことだ。戦神なら戦略を、至高神なら人の道を説くアドバイスをと言った感じに信仰する神ごとに違うが有用な情報をもらえる。ただ信者への負担も大きく、代償として精神力のほとんどを持っていかれるという。安易に神に助けは求められないと言うわけだ。

 代償のせいか、ラグはその場に膝をつき、アーシェがその背を支えた。肩で息をしながら彼女は啓示の内容を告げた。
「さっき砕けた結晶のかけらを集めてください。…修復魔法で直して投げつければ、再び封印できます!」
「よしきた!」
 その言葉に一瞬の躊躇もなく駆け出したのは、他ならぬアーチだった。「確かこの辺だったな」と呟きながら、切り飛ばして積み重なった蔦や枝をかき分ける。
「その分、ボクが気をひくよ! どうやらボク、妙に気に入られてるみたいだし! ラスファも頼むよ、キミも彼女たちのお気に入りだからね!」
「仕方ない、囮になってやるか!」
 フランシスとラスファが囮役を買って出てくれたおかげでアーチに向かう手数が激減するのはありがたかった。俺はその間、地面をかき分けるアーチに向かう蔦や枝をカバーする役につく。

「あったぜ! コレ集めりゃいいんだな!」
 赤い結晶のかけらを拾い集め、手持ちの袋に放り込むアーチ。
「コレで、全部か?」
 じゃラリと硬い音がする袋をラグに押し付けて、狙って来る蔦を払いのけながら「頼んだぞ」と頭を撫でる。
だが、俺たちは一つ、大きな見落としがあった。

「すいません…わたくし、もう魔法は使えません…!」

 修復魔法はラグしか使えない。そのラグは、さっきの『啓示』で精神力をほとんど持っていかれている。つまり、修復魔法は使えない状態になっていた。

「「「「おいいいいぃぃぃいい!?」」」」
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