古の冒険都市は観光地化の波に飲まれました 〜次は(俺・オレ・私・あたし・わたくし)のターン〜

杏仁霜

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mission 2 孤高の花嫁

悲鳴飛び交う冒険都市

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Side-デュエル  23

「そーなんすよ! ちょっと研修に来たんスが、この隊長のウデにシビれちゃって! そんで正式にここの自警団に入ることに決めたんス! てかこれ美味ぇ! エルダードってサイコーっス! 来て良かった!」
「マック。食うか喋るか感激するか、どれかに絞れ。…隊長の腕に感銘を受けたのは、俺も同じです。これからしっかり鍛えようかと思いまして!」
 茶色い髪のマックという新入りが、さっそくラスファが作った昼食を豪快に食べながら喋り倒す。相方のリックはその間、これまでの経緯を教えてくれた。向こうの自警団の若手だったらしいが、この一件で自らの不甲斐なさを実感して研修に来たそうだ。そこで手合わせの後、ラインハルトの腕に惚れ込んで現在に至るという。
「…賑やかな奴がまた増えたな…」
 俺のつぶやきに、ラインハルトがぽそりと返す。
「ああ。大型犬に懐かれた気分だ。だが二人とも見所がある奴でな、私の部隊に所属することになった。そこで頼みだが、時々鍛錬に付き合わせてやってくれないか?」
「ああ、勿論だ。それで…どこまで鍛錬すればいい?」
「あれ? なんか、うっすら怖いこと言ってないっスか?」

 その後ろを、ホクホク顔のアーチが通りかかった。
「早いな、もうギルドに報告して来たのか?」
 俺の問いに、アーチは笑みを深める。
「おうよ。ちっとばかり懐が温まってな。ちょいとばかりナンパにでも…」
 そう言いかけた時、彼の背後から音もなく女将さんが現れた。
「はっっ!?  このオレが背後を取られるとは…!」
「あんた、臨時収入があったんだって? だったら滞納してる宿代、払ってもらおうかね?」
「ぎゃああああ! 頼む、見逃してくれ! それはギルドの人材紹介料二人分…!」
 すがりつくアーチから、女将さんは容赦なく財布をむしり取る。
「収入は収入、だろ? 二月分の宿代、ここから頂くよ!」
「だあああああぁぁ!」
 身も世もないアーチの絶叫に、女将さんはくるりと振り返った。
「そうそう。今回の件について話があるから、みんな例の部屋においで」

「まず、依頼料の件だけどね。フランシスの実家、カッパーフィールド領から支払われたけど…報告書はぼかして書かなきゃならないね、『今回も』…」
 ああ、やっぱりか。今回の一件は、地方とはいえ有力な貴族が多く関わりすぎている。いつも思うのだが、どうして俺たちは毎回こんなややっこしい事件に遭遇しまくるのだろうか? こんな事件を余すことなく書いていたら、フランシスのところの領地で一大スキャンダルの嵐が吹き荒れるに違いない。領主によると、処罰を受けた貴族たちは『病気療養』などといった名目で辺境に飛ばされるか『代替わり』とされて幽閉かという処分がほとんどなんだそうだ。
 
「まあ、それ以前に…特に罪が深かった貴族には怪奇現象が起きていてね。怪我や病気が相次いでるんだそうだよ。悪いことはできないもんだねぇ…」
 その女将の言葉に、なぜかラスファは目をそらした。…心当たりでもあるのか?
「領内の被害をの修復に、貴族への断罪をせねばならないから、あまり出せなくて申し訳ないって手紙が付いていたよ。だけど今後何かあったら、遠慮せずに頼ってほしいと書いてある。まあ、有力貴族へのコネができたってことは大きいだろうね。それと…」
 女将は改まっておらたちを見回す。
「勝手に依頼を取り付けるというのは、ルール違反じゃないのかね?」
 …あれ? 確かフランシスは伝書鳩を飛ばしてなかったか?
 俺がそう言うと、女将さんは一枚の紙を取り出してため息をついた。
「伝書鳩の手紙ってこれかい? 途中で雨に当たって、滲んで読めなかったよ。さあさあ、詳しく報告してもらおうかね?」

 その事実に、少女たちは悲鳴をあげる。
「ちょっと待って! それじゃ試験を勝手にサボったことにならない? 私も、ラグちゃんも!」
「大変ですわ、今すぐ報告書を…」
 その行く手を、女将さんが阻む。
「だから、ぼかして書いてもらわなくちゃいけないんだよ。ここで書いてくれるかい? あたしが判定するからさ」
「うそでしょおおおおお!?」

「やあ、お疲れさん。君たち元気かい?」
そこに、ド派手な鎧を再びまとって復活したフランシスの能天気な声が割り込む。
 一斉に、彼に凶悪な視線が突き刺さった。

 相次ぐ悲鳴が宿屋を揺るがす。
 帰還するなり、白銀亭は賑やかだ。
 ああ、今日も冒険都市は平和である…。



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