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intermission 3 〜ブラインドデート〜
知識神の祝福あれ!
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Side-ラグ 3
次の日。
お借りしたイヤリングを落としてしまうなんて、申し訳ないことをしてしまいました。きっと、大切なものに違いないでしょうに…!
「申し訳ありません! わたくしったら、落としたことにも気づかないで…!」
懸命に頭を下げるわたくしに、コギーさんは苦笑いをしながら言いました。
「いいって。しょうがないよ、落としたものは。もともと私たちが無理やり着せちゃったものだしね。…ね、それよりどうだった?」
「え?」
「お師匠さんには見せたの?」
その質問には、答えることはできませんでした。
ちょっと動揺しながらメガネを拭こうとポケットを探ります。すると、眼鏡拭きの布と一緒に何かがポケットから転がり落ちました。
「あれ、何か落としたよ?」
「あら、何でしょう?」
転がり落ちたものは金色に光る、落としたはずのイヤリング です! でも何故でしょう? 落としたことにも気づいていなかったはずですし、第一わたくしは拾った覚えもありませんし…。
「何それ怖い」
「ええー…」
皆さん、ちょっと引き気味ですわ。無理もありません、当のわたくしも驚いているのですから。
「あーもー、深く考えるのやめやめ! いいじゃない、落としたのが戻ってきてたんならさ」
アーシェさんは、さばさばした口調で話題を切り替えてくれました。
「…そうですわね、この件に関しましては深く考えないほうがいいかもしれません…」
わたくしが出した結論に、最終的には皆さん同意してくれました。
「それに、実は皆さん、怪談話が苦手なんですよね…」
「そうよ、当たり前でしょ? 幽霊とか魔物って実在するんだもん! 怖がるなっていうほうが無理でしょ?」
「そうよ! あたしたちみんな、魔力あるから普通の人よりも見えるほうなんだしさ。多分この中じゃ、占い科に進もうとしてるセーラが一番視える素質あるんじゃないかな?」
話題に上ったセーラさんに、今度は視線が集まります。
「え…でも、アーシェやラグの方が視る『機会』そのものは多くない? 冒険にも出てるし…」
次はわたくしとアーシェさんが注目される番です。
「わたくしよりはアーシェさんですかね? わたくしは神官ですから、魔力の質が違うというか…信仰の力、というか…」
アーシェさんは目をそらしながら呻くように答えました。
「ああ…そういやこないだ見ちゃったわ、うっすらと…」
「えええ!? どんなのどんなの?」
途端に食いつくコギーさん。怖いとおっしゃいましたが、怖いもの見たさが勝ったようですね。
「絵に描いたような活きの良い悪霊と、残してきた家族を心配してた、存在感ない幽霊…」
「どんなのよ? 特に前者!」
「悪事を働いた挙句に、口封じに殺られちゃった奴って言ってたな、兄貴は。家族を心配してた幽霊の方に用事があったからって、放り出したっぽいけど」
「ちょ…対応! それでいいの?」
「加害者も被害者も相当な悪事を働いてたから、好きにさせたみたいね。多分、あたしでもそうする」
「おいおいおい…」
日常に戻った実感とともにそのやり取りを楽しく聴きながら、わたくしは昨日のペンダントにそっと手を当てました。日常から離れたちょっと夢みたいな一日だったけれど、でも夢じゃない証拠がそこにあります。
お互いに名乗ることはなかったので、彼の方はどこのどなたかわかりません。まして、わたくしは眼鏡を外していましたから何も見えませんでしたし。
「楽しかったみたいね。昨日は」
小さな声でセーラが微笑みます。笑い返しながら頷くと、わたくしは窓の外に目をやりました。彼の方も、この街のどこかで日常を過ごしているのでしょう。その日々が、どうか楽しいものでありますように…。わたくしの神様の祝福が届きますように!
余談。
「ぶえっくし!」
白銀亭の床をモップで磨きながら、アーチは盛大にくしゃみをかました。
「ちょっと! 汚いねぇ…そこもしっかり磨くんだよ!」
容赦ない女将の言いように、流石にアーチも苦言を呈する。
「んだよ。ちったあ心配しろよな?」
「おサボり後の罰で床磨きしてるってことをお忘れかい?」
アーチ、撃沈。助けを求めるような目を通りかかったデュエルに向けるが、彼はかぶりを振って諭した。
「諦めろ。そもそも女に口で勝とうっとことが無茶なんだ、ましてこの女将さんだぞ?」
「デュエル、あんたもそれどういう意味だい?」
ジロリと睨む女将の迫力に負けた彼は、早々に逃げの一手を打った。流石に元傭兵、危機管理能力は健在だ。
「荷運びのバイトに行ってくる!」
「あ、コラ逃げるな~!」
アーチは早朝の床磨きで、見覚えのあるイヤリングを拾った。その後で、さらに見覚えのあるペンダントをつけた弟子に挨拶されて全てを悟ったのだ。
(まったく末恐ろしいな、我が弟子ながら…)
不覚にも、それまで全く気づいていなかったのがいまだに信じられない。それほどの変貌ぶりだったのだ。
(女は化けるっていうが、まさかあそこまでとはね?)
思い出し笑いを見咎められて、女将の雷が再び落ちる。
おかげでその日は一日中、美化運動に勤しむことになるアーチだった。
次の日。
お借りしたイヤリングを落としてしまうなんて、申し訳ないことをしてしまいました。きっと、大切なものに違いないでしょうに…!
「申し訳ありません! わたくしったら、落としたことにも気づかないで…!」
懸命に頭を下げるわたくしに、コギーさんは苦笑いをしながら言いました。
「いいって。しょうがないよ、落としたものは。もともと私たちが無理やり着せちゃったものだしね。…ね、それよりどうだった?」
「え?」
「お師匠さんには見せたの?」
その質問には、答えることはできませんでした。
ちょっと動揺しながらメガネを拭こうとポケットを探ります。すると、眼鏡拭きの布と一緒に何かがポケットから転がり落ちました。
「あれ、何か落としたよ?」
「あら、何でしょう?」
転がり落ちたものは金色に光る、落としたはずのイヤリング です! でも何故でしょう? 落としたことにも気づいていなかったはずですし、第一わたくしは拾った覚えもありませんし…。
「何それ怖い」
「ええー…」
皆さん、ちょっと引き気味ですわ。無理もありません、当のわたくしも驚いているのですから。
「あーもー、深く考えるのやめやめ! いいじゃない、落としたのが戻ってきてたんならさ」
アーシェさんは、さばさばした口調で話題を切り替えてくれました。
「…そうですわね、この件に関しましては深く考えないほうがいいかもしれません…」
わたくしが出した結論に、最終的には皆さん同意してくれました。
「それに、実は皆さん、怪談話が苦手なんですよね…」
「そうよ、当たり前でしょ? 幽霊とか魔物って実在するんだもん! 怖がるなっていうほうが無理でしょ?」
「そうよ! あたしたちみんな、魔力あるから普通の人よりも見えるほうなんだしさ。多分この中じゃ、占い科に進もうとしてるセーラが一番視える素質あるんじゃないかな?」
話題に上ったセーラさんに、今度は視線が集まります。
「え…でも、アーシェやラグの方が視る『機会』そのものは多くない? 冒険にも出てるし…」
次はわたくしとアーシェさんが注目される番です。
「わたくしよりはアーシェさんですかね? わたくしは神官ですから、魔力の質が違うというか…信仰の力、というか…」
アーシェさんは目をそらしながら呻くように答えました。
「ああ…そういやこないだ見ちゃったわ、うっすらと…」
「えええ!? どんなのどんなの?」
途端に食いつくコギーさん。怖いとおっしゃいましたが、怖いもの見たさが勝ったようですね。
「絵に描いたような活きの良い悪霊と、残してきた家族を心配してた、存在感ない幽霊…」
「どんなのよ? 特に前者!」
「悪事を働いた挙句に、口封じに殺られちゃった奴って言ってたな、兄貴は。家族を心配してた幽霊の方に用事があったからって、放り出したっぽいけど」
「ちょ…対応! それでいいの?」
「加害者も被害者も相当な悪事を働いてたから、好きにさせたみたいね。多分、あたしでもそうする」
「おいおいおい…」
日常に戻った実感とともにそのやり取りを楽しく聴きながら、わたくしは昨日のペンダントにそっと手を当てました。日常から離れたちょっと夢みたいな一日だったけれど、でも夢じゃない証拠がそこにあります。
お互いに名乗ることはなかったので、彼の方はどこのどなたかわかりません。まして、わたくしは眼鏡を外していましたから何も見えませんでしたし。
「楽しかったみたいね。昨日は」
小さな声でセーラが微笑みます。笑い返しながら頷くと、わたくしは窓の外に目をやりました。彼の方も、この街のどこかで日常を過ごしているのでしょう。その日々が、どうか楽しいものでありますように…。わたくしの神様の祝福が届きますように!
余談。
「ぶえっくし!」
白銀亭の床をモップで磨きながら、アーチは盛大にくしゃみをかました。
「ちょっと! 汚いねぇ…そこもしっかり磨くんだよ!」
容赦ない女将の言いように、流石にアーチも苦言を呈する。
「んだよ。ちったあ心配しろよな?」
「おサボり後の罰で床磨きしてるってことをお忘れかい?」
アーチ、撃沈。助けを求めるような目を通りかかったデュエルに向けるが、彼はかぶりを振って諭した。
「諦めろ。そもそも女に口で勝とうっとことが無茶なんだ、ましてこの女将さんだぞ?」
「デュエル、あんたもそれどういう意味だい?」
ジロリと睨む女将の迫力に負けた彼は、早々に逃げの一手を打った。流石に元傭兵、危機管理能力は健在だ。
「荷運びのバイトに行ってくる!」
「あ、コラ逃げるな~!」
アーチは早朝の床磨きで、見覚えのあるイヤリングを拾った。その後で、さらに見覚えのあるペンダントをつけた弟子に挨拶されて全てを悟ったのだ。
(まったく末恐ろしいな、我が弟子ながら…)
不覚にも、それまで全く気づいていなかったのがいまだに信じられない。それほどの変貌ぶりだったのだ。
(女は化けるっていうが、まさかあそこまでとはね?)
思い出し笑いを見咎められて、女将の雷が再び落ちる。
おかげでその日は一日中、美化運動に勤しむことになるアーチだった。
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