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mission 3 祝祭の神様
自警団の肩書
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Side-ラスファ 4
街中は異常なまでの賑わいと盛り上がりを見せていた。それも当然か、オラクルの祝祭は全世界のあらゆる街で繰り広げられているのだから。
私はアーシェにもらった獣耳に手をやった。なかなかの優れもので、本来のエルフ耳にかぶせてアクセサリーをかたどった留め具でつけるという使い方をするものだ。作りもリアルで、下手をすれば祝祭の日以外でも使えるのではないのだろうか? いつものバンダナは、たまに窮屈で困る。ちなみに、長めの尻尾もセットだ。
ともあれ、宝珠の件だ。
あのライラとかいう嫌な女は、セラの部屋にあった宝珠の件については知らないと白状した結果だ。そうなると、外部犯や手口を探る必要性が出てくる。デュエルは聖女候補のリストを検証したり、部屋の内部を調査する担当に。アーチは、この街の盗賊ギルドに聞き込みをすると言って出て行った。期間限定とはいえ、あの派手な格好でよく外に出られるものだ…。
仮装しているのは自分たちだけじゃない。街中が常とは違う彩りをまとって、祝祭ムードを盛り上げている。エルダードほど大規模なものではないが、楽しげな人々の表情は変わらなかった。
ちなみにこの街はアローガという中規模の街だ。芸術に力を入れているだけあって、芸術神の神殿が結構な力を持っているという。
しかし参った。ここのところの祝祭で仮装している者が多いために『怪しいやつを見なかったか』という聞き込みが全く効果がないのだから。こういう場合、仮装というものは格好の隠れ蓑になりうる。真犯人がもし、それも考慮したというなら…かなりの知能犯ということになるだろう。
とりあえず有力なツテを持たない身としては、どうするかと途方に暮れかけたその時だった。
「あら? もしかしてアンタ、この前手当てしてくれたお兄ちゃんじゃないの?」
知り合いなどいるはずのないこの街で、いきなり声をかけられた。振り向けば、先日自警団の詰め所で怪我をして難儀していた中年の婦人がにこやかに立っている。
「あの時は本当にありがとうねー! あたしゃ、こんな若くて綺麗な子に親切にされて、若返った気になっちゃったよ♪ みんなに自慢しちまったわ」
こっちが言葉を挟む間も無く、彼女はひたすら喋り倒す。おかげでこっちは相槌しか打てない。
「は…はあ…」
「よかったら、ちょっと寄っておいでな。アローガの町長は、うちの旦那でね? お礼をさせてちょうだいな」
「え…ちょ!」
そのまま、有無を言わせぬ押しの強さで私は町長宅まで引っ張っていかれてしまった。
彼女に連れられて気がつけば、街の中心にある立派な屋敷の応接室に通されていた。
まさか、こんな形でアローガの町長夫人にコネができるとは思っても見なかった。しかしなんというか…祝祭で浮かれている街とは裏腹に、ここの空気は少々重い。何かあったのだろうか?
「お待たせしてすいませんな、エルダードの自警団詰所で家内がお世話になったようで…」
しばらくして現れた町長は、婦人と比べて影が薄く感じられた。だが、実直さを感じられる。地味ながら実績を重ねて来たのだろう。
エルダードでの自警団という肩書きは、彼らの信頼を勝ち取るには十分なものだった。…とりあえず『臨時』という一言は伏せておこう。そこで互いに簡単な自己紹介をしたところで婦人が戻って来た。
「お待たせしてごめんなさいねぇ! ちょっと呼ばれちゃっててね。困ったもんだよ、祝祭のどさくさで街の宝が盗まれちゃっててね。なんていうのかね、火事場泥棒? っていうのかねえ…」
「…宝が、盗まれた?」
穏やかな話ではない。自警団という肩書きが手伝って、婦人は相談モードに入っている。通常は聞き流す話だが、芸術神の宝珠が盗まれたあとだ。妙に引っかかった。
「もしかして、何か魔力がかかった品だったとか?」
ダメ元で聞いてみると、婦人は表情を曇らせた。
「あら…なんでわかっちまったかねぇ。恥ずかしい話、わかってるのは魔力があった杖ってだけで、どういうものかわからなかったんだよね」
「…」
魔術に詳しい者が乏しい街では、よくある話だ。鑑定しなければ魔道具の効果はわからないことがほとんどな昨今、魔力はあるらしいが鑑定できる者がいないからと放置しているということは案外多い。
「それで一度は鑑定してもらおうということになったんだけど、魔術師ギルドの鑑定師っていう人が来たんで頼んでみたら、詐欺師でねえ。そのまま持ち逃げされちまったんだよ」
これは…ビンゴかもしれない!
「その犯人の特徴を詳しく教えてくれないか? 何か、力になれるかもしれない!」
ほぼ、賭けかもしれない状況だが…分がいい賭けだということは直感的にわかった。
街中は異常なまでの賑わいと盛り上がりを見せていた。それも当然か、オラクルの祝祭は全世界のあらゆる街で繰り広げられているのだから。
私はアーシェにもらった獣耳に手をやった。なかなかの優れもので、本来のエルフ耳にかぶせてアクセサリーをかたどった留め具でつけるという使い方をするものだ。作りもリアルで、下手をすれば祝祭の日以外でも使えるのではないのだろうか? いつものバンダナは、たまに窮屈で困る。ちなみに、長めの尻尾もセットだ。
ともあれ、宝珠の件だ。
あのライラとかいう嫌な女は、セラの部屋にあった宝珠の件については知らないと白状した結果だ。そうなると、外部犯や手口を探る必要性が出てくる。デュエルは聖女候補のリストを検証したり、部屋の内部を調査する担当に。アーチは、この街の盗賊ギルドに聞き込みをすると言って出て行った。期間限定とはいえ、あの派手な格好でよく外に出られるものだ…。
仮装しているのは自分たちだけじゃない。街中が常とは違う彩りをまとって、祝祭ムードを盛り上げている。エルダードほど大規模なものではないが、楽しげな人々の表情は変わらなかった。
ちなみにこの街はアローガという中規模の街だ。芸術に力を入れているだけあって、芸術神の神殿が結構な力を持っているという。
しかし参った。ここのところの祝祭で仮装している者が多いために『怪しいやつを見なかったか』という聞き込みが全く効果がないのだから。こういう場合、仮装というものは格好の隠れ蓑になりうる。真犯人がもし、それも考慮したというなら…かなりの知能犯ということになるだろう。
とりあえず有力なツテを持たない身としては、どうするかと途方に暮れかけたその時だった。
「あら? もしかしてアンタ、この前手当てしてくれたお兄ちゃんじゃないの?」
知り合いなどいるはずのないこの街で、いきなり声をかけられた。振り向けば、先日自警団の詰め所で怪我をして難儀していた中年の婦人がにこやかに立っている。
「あの時は本当にありがとうねー! あたしゃ、こんな若くて綺麗な子に親切にされて、若返った気になっちゃったよ♪ みんなに自慢しちまったわ」
こっちが言葉を挟む間も無く、彼女はひたすら喋り倒す。おかげでこっちは相槌しか打てない。
「は…はあ…」
「よかったら、ちょっと寄っておいでな。アローガの町長は、うちの旦那でね? お礼をさせてちょうだいな」
「え…ちょ!」
そのまま、有無を言わせぬ押しの強さで私は町長宅まで引っ張っていかれてしまった。
彼女に連れられて気がつけば、街の中心にある立派な屋敷の応接室に通されていた。
まさか、こんな形でアローガの町長夫人にコネができるとは思っても見なかった。しかしなんというか…祝祭で浮かれている街とは裏腹に、ここの空気は少々重い。何かあったのだろうか?
「お待たせしてすいませんな、エルダードの自警団詰所で家内がお世話になったようで…」
しばらくして現れた町長は、婦人と比べて影が薄く感じられた。だが、実直さを感じられる。地味ながら実績を重ねて来たのだろう。
エルダードでの自警団という肩書きは、彼らの信頼を勝ち取るには十分なものだった。…とりあえず『臨時』という一言は伏せておこう。そこで互いに簡単な自己紹介をしたところで婦人が戻って来た。
「お待たせしてごめんなさいねぇ! ちょっと呼ばれちゃっててね。困ったもんだよ、祝祭のどさくさで街の宝が盗まれちゃっててね。なんていうのかね、火事場泥棒? っていうのかねえ…」
「…宝が、盗まれた?」
穏やかな話ではない。自警団という肩書きが手伝って、婦人は相談モードに入っている。通常は聞き流す話だが、芸術神の宝珠が盗まれたあとだ。妙に引っかかった。
「もしかして、何か魔力がかかった品だったとか?」
ダメ元で聞いてみると、婦人は表情を曇らせた。
「あら…なんでわかっちまったかねぇ。恥ずかしい話、わかってるのは魔力があった杖ってだけで、どういうものかわからなかったんだよね」
「…」
魔術に詳しい者が乏しい街では、よくある話だ。鑑定しなければ魔道具の効果はわからないことがほとんどな昨今、魔力はあるらしいが鑑定できる者がいないからと放置しているということは案外多い。
「それで一度は鑑定してもらおうということになったんだけど、魔術師ギルドの鑑定師っていう人が来たんで頼んでみたら、詐欺師でねえ。そのまま持ち逃げされちまったんだよ」
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