出雲の駄菓子屋日誌

エピローグ

その後 1

拝啓――

　夏は盛りにいよいよ暑くなってまいりました。その後はいかがお過ごしでしょうか？

　思えば、あれからすでに４年の月日が流れようとしているのですね。あの頃使っていた相棒のボストンバッグは、すでに役目を果たし、新しい相棒と付き合っております。

　美琴ちゃんの方は、今年が高校受験だそうで、この夏が勝負。もしかしたら、美琴ちゃんは今年の集まりには欠席かもしれませんね。本人は参加したいらしいのですが、お母様が止めているみたいです。

　美琴ちゃんは商業に関心があるみたいです。父のようになりたい、父の跡を継ぎたいのだと、毎日お母様が苦心しているのだとか。

　私の愚息が美琴ちゃんの家庭教師としてアルバイトをしているのですが、美琴ちゃんは頭もよく、かつ努力を惜しまない。そのため、愚息といるとかえって時間の無駄になっているかもしれません。

　今年の供養祭には、私は参加いたします。毎年、夏になると熱海へ向かうようになった私に、妻はいよいよ浮気だと決めつけてうるさいものですから、今年は家族で参加しようかとも考えております。

　たまには一人ではなく、家族旅行も悪くない。そんなようにも思っております。大学生になった愚息は、家族よりも友人たちを優先しますが、男の子はそんなものです。

　もし家族で行くことがあれば、騒がしい連中ではございますが、どうぞよろしくお願い致します。

　お忙しい中、長文失礼を致しました。どうかお体にお気をつけて、真太郎様のご活躍とご多幸を陰ながらお祈りしております。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　敬具


追伸――

　昨年出版した『出雲の駄菓子屋日誌』は好調です。もしかしたらそちらにもご迷惑をおかけしているかもしれませんが、続編も決まり、またあらたにアイディアを頂けたらなと思っております。ご教示いただければ幸いです。



平成二八年七月二八日

　菅野真太郎様へ――

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　北野雄一