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第一章 黄色い目をした少女
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「追いかけてくるよ!」
「いいから黙って!」
大きなワニだ。
金色に光る巨大ワニ。そいつが今、ヒカルとリオンを捕まえようと追いかけてきている。差はどんどん短くなっていく。ドンドンドン、と足音が大きくなっていく。
「やばい! 追いつかれるぞ!」
金色のワニは、すぐそこまで迫っていた。開いた大きな口の中には、数十本の歯が、螺旋状に渦を巻いている。まるで巨大なミキサーだ。飲み込まれたらどうなるか。想像してしまったヒカルは、リオンを追い越して反対に彼女をひっぱって走るようになった。
ワニの咆哮がすぐ後ろで聞こえた。その時、ぐい、とヒカルの腕が後ろに引っ張られた。リオンが転んでしまったのだ。
まずい! つられてヒカルも倒れてしまう。ワニの口はすぐ目の前だ。大きな口を開いた巨大ミキサーに飲み込まれてしまう。思わず頭を抱えて草原の地面に顔を埋めた。食べられる!
しかし、金色の巨大ワニは二人の上を通り過ぎて行った。ワニのお腹の下、足の間をすり抜けることが出来たのだ。
突然の出来事に、呆気にとられる二人であったが、「良かった……」と無事に危機を脱出できたヒカルは、ほっと息を吐き出す。座り込んだヒカルの隣でリオンは立ち上がった。息が上がっていて、呼吸が追いついていないようだ。汗で濡れた白い頬に、草原の葉っぱがひとつ付いていた。
ワニが進んだ先――すでに小さく見えるワニを、リオンは睨みつけるようにして見つめていた。
「だめ」
リオンの黄色の目が、みるみる大きくなる。
「え?」
「あいつ、村に向かってる!」
ワニの狙いは二人ではなく、草原を抜けた先にある小さな村であった。リオンが生まれ、育ち、今も暮らしている村だ。
「追いかけなきゃ!」
駆け出すリオンの後ろを、ヒカルも追いかけた。
「待って! 間に合わないよ!」
走りながら彼女の背中に投げつける。しかし、リオンは振り返らない。大切な村に、大変な危機が迫っているのだから。しばらくは追いかけていたものの、ヒカルはワニを、リオンを追いかけることを止めてしまった。
到底追いつけっこないさ。僕たちが走ったところでさ。
悪態を吐いて踵を返した瞬間――ヒカルの頭に、ある物が浮かんできた。そして、そのまま駆け出す。
まだそう遠くへは離れていないはず。急がねば!
〇
リオンは必死になって「鱗」を追いかけていた。
ぼこぼこの地面に何度も足を取られても、草に足を切られ、爪が割れ、熱い息が喉を通っても、走ることを止めなかった。
――皆に知らせなきゃ。それが私の役割なのに!
村には大切な人たちがたくさんいるのだ。今までみんなに守ってもらってきた。今度はみんなを守らせてほしい。だからこそ、この役割に志願したのだから。危険だけど、それでも良い。みんなのために死ねるのなら、それでも良い。
ワニの姿はどんどん小さくなっていく。
だめ、このままじゃ何もできない!
苦しさとの葛藤で、リオンはいつの間にか涙を流していた。
――お願いします。神様。竜神様!
その時、後ろから聞いたことのないうるさい音が近づいてきた。振り向くと、きっと後ろでついてきているとばかり思っていた青年が馬ではなく、へんてこりんな物に乗って向かってきている。
「乗って!」
腕を掴まれたリオンは、その乗り物の後ろに座らされた。
生き物ですらないこれは一体何なのだろうか。でも――。
「しっかり掴まってて!」
青年の言う通り、リオンはぎゅっと彼の背中に腕をまわす。走り出した乗り物はすごいスピードだった。リオンは後ろに落ちそうになって、腕に力をこめた。
これならきっと追いつける。追い越せる。
「いいから黙って!」
大きなワニだ。
金色に光る巨大ワニ。そいつが今、ヒカルとリオンを捕まえようと追いかけてきている。差はどんどん短くなっていく。ドンドンドン、と足音が大きくなっていく。
「やばい! 追いつかれるぞ!」
金色のワニは、すぐそこまで迫っていた。開いた大きな口の中には、数十本の歯が、螺旋状に渦を巻いている。まるで巨大なミキサーだ。飲み込まれたらどうなるか。想像してしまったヒカルは、リオンを追い越して反対に彼女をひっぱって走るようになった。
ワニの咆哮がすぐ後ろで聞こえた。その時、ぐい、とヒカルの腕が後ろに引っ張られた。リオンが転んでしまったのだ。
まずい! つられてヒカルも倒れてしまう。ワニの口はすぐ目の前だ。大きな口を開いた巨大ミキサーに飲み込まれてしまう。思わず頭を抱えて草原の地面に顔を埋めた。食べられる!
しかし、金色の巨大ワニは二人の上を通り過ぎて行った。ワニのお腹の下、足の間をすり抜けることが出来たのだ。
突然の出来事に、呆気にとられる二人であったが、「良かった……」と無事に危機を脱出できたヒカルは、ほっと息を吐き出す。座り込んだヒカルの隣でリオンは立ち上がった。息が上がっていて、呼吸が追いついていないようだ。汗で濡れた白い頬に、草原の葉っぱがひとつ付いていた。
ワニが進んだ先――すでに小さく見えるワニを、リオンは睨みつけるようにして見つめていた。
「だめ」
リオンの黄色の目が、みるみる大きくなる。
「え?」
「あいつ、村に向かってる!」
ワニの狙いは二人ではなく、草原を抜けた先にある小さな村であった。リオンが生まれ、育ち、今も暮らしている村だ。
「追いかけなきゃ!」
駆け出すリオンの後ろを、ヒカルも追いかけた。
「待って! 間に合わないよ!」
走りながら彼女の背中に投げつける。しかし、リオンは振り返らない。大切な村に、大変な危機が迫っているのだから。しばらくは追いかけていたものの、ヒカルはワニを、リオンを追いかけることを止めてしまった。
到底追いつけっこないさ。僕たちが走ったところでさ。
悪態を吐いて踵を返した瞬間――ヒカルの頭に、ある物が浮かんできた。そして、そのまま駆け出す。
まだそう遠くへは離れていないはず。急がねば!
〇
リオンは必死になって「鱗」を追いかけていた。
ぼこぼこの地面に何度も足を取られても、草に足を切られ、爪が割れ、熱い息が喉を通っても、走ることを止めなかった。
――皆に知らせなきゃ。それが私の役割なのに!
村には大切な人たちがたくさんいるのだ。今までみんなに守ってもらってきた。今度はみんなを守らせてほしい。だからこそ、この役割に志願したのだから。危険だけど、それでも良い。みんなのために死ねるのなら、それでも良い。
ワニの姿はどんどん小さくなっていく。
だめ、このままじゃ何もできない!
苦しさとの葛藤で、リオンはいつの間にか涙を流していた。
――お願いします。神様。竜神様!
その時、後ろから聞いたことのないうるさい音が近づいてきた。振り向くと、きっと後ろでついてきているとばかり思っていた青年が馬ではなく、へんてこりんな物に乗って向かってきている。
「乗って!」
腕を掴まれたリオンは、その乗り物の後ろに座らされた。
生き物ですらないこれは一体何なのだろうか。でも――。
「しっかり掴まってて!」
青年の言う通り、リオンはぎゅっと彼の背中に腕をまわす。走り出した乗り物はすごいスピードだった。リオンは後ろに落ちそうになって、腕に力をこめた。
これならきっと追いつける。追い越せる。
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