黄金竜のいるセカイ

にぎた

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第二章 大都市オルストン

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 草原を一日中走った後は、森を抜けなければならなかった。

 背が高く、太い幹の木々たちが太陽を隠しているのに、森の中はキラキラと七色に光っているように見える。苔に覆われて、地面からはみ出した根っこたちのせいで、原付バイクが走れるようなところではなかった。

 出発の日、ヒカルは村長に一番近い村の方角だけを教えてもらい、一心に進んできたのだ。森を迂回しても良かったのだけれど、慌てることなかれ。この世界に来て、この世界の一部になってまだまだ時間が経っていない。歩くことも大切だろうと、原付バイクを押して森を一直線に抜けようと考えたのだった。入ってすぐに後悔はしたのだけれども。

「やっぱり、迂回すればよかった」

 大きな根っこを原付バイクと一緒に乗り越えると、原付バイクのスタンドを立てて、根っこにもたれかかった。汗と露のおかげで手が滑って仕方がない。

 はあ、と一息つく。
 木漏れ日の太い光の筋が、森の中にはたくさん落ちていた。ヒカルは原付のバイクのシートポケットから、麻の袋を取り出すと、村人たちから貰った食料をひとつ食べた。あの日、村の人たちはどこぞの誰かも分からないヒカルを、暖かく見送ってくれたのだ。村長からは、この世界の硬貨もいただいてしまった。遠慮すると、「今のこの村には必要ないですから」と。そして、やはり「すべては竜神様の御心に」と、両手を挙げてお祈りをする。

 麻の袋には、果物を乾燥させたグミと、固いお煎餅のようなものが入っていた。けして多くは無いのだけれど、ヒカルは優しさのつまったそれらを、大切に頂こうと決めていたのだ。

 バサバサ、と森の木々たちが揺れる。何かが飛んでいる。黄金竜かな? と見上げてみると、鳥の番いが追いかけっこをしていた。

 黄金竜は空を飛ぶ。世界は広いのだ。鳥たちを目で追いながら、黄金竜が今どこで何をしているのかを、漠然と考えてみた。

 ちらと、腰に付けた時計を手に取る。小包に入っていた黄金の懐中時計だ。
 滑らかな文字盤は光を反射して、動かす度に様々な顔を見せてくれる。まるで、何者かに呼ばれ続けているような、不思議な気持ちになった。

 目が離せない。いったい、中はどうなっているのだろうか、とヒカルは釘付けであった。 

 そしてうとうと――と。
 森の優しい息遣いにあおられて、こくり、こくり、と頭が垂れる。すると、木々たちのゆれる声に隠れて、小さな足音が近づいてくる。眠気もあったのだろう。持っていた麻の袋がひったくられてしまうまで気がつかなかった。
 足音がかけていく。

「待て!」

 ヒカルは、ここが森の中であるということを忘れて、思わずバイクのエンジンを掛ける――が、すぐに根っこに引っかかって、ドン、と派手に倒れてしまった。

 慌てて起き上がる。大切な食べ物と硬貨だ。早く追いかけねば、と辺りを見渡すと、原付バイクの大きな音に驚いたのだろうか、躓いてしっかり伸びてしまった小さな犯人を見つけることができたのだった。
 
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