黄金竜のいるセカイ

にぎた

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第二章 大都市オルストン

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 ヒカルは意気揚々と、鼻歌でも歌いながらバルと原付バイクを森の外へ連れ出した。

 頭のすぐ上には鳥が羽を広げたまま、先ほどのバルのように空中で止まっていた。

 夜空の雲さえ動いていない。
 ここまで来たらもう大丈夫だろう。青く薄暗い草原の上に、まだ驚き顔のままのバルと原付バイクを停めて、ヒカルは考えた。

「さて、どうしたらもとに戻るのか」

 いまだ、赤く輝き続ける懐中時計。試しに振ってみても、竜頭を押してたり、引っ張っても無反応だ。

「時よ、動け!」

 これは困った。時間が止まり、無事危機を脱出できたところで、再び時間が動き出さなければ意味がない。

 動いてくれよ、と語りかけるように、懐中時計を見つめてみる。

「おや?」

 赤く光る懐中時計。その文字盤に、宝石のような小粒の装飾を見つけた。

 これが光っているのか。ヒカルがそっと指先でその装飾を押してみると、カチ、と気持ちの良い音がした。

 チクチクチクチク……。
 秒針が動き始める。

「食べないで!」

 さっきまで無音だった世界に、音が蘇った。夜の風が草原の葉っぱを撫でていく。

「え?」

 いつの間にか大蛇が目の前から消えていて、なおかつ森の外にいることに、バルは面をくらっている。

「何が、起こったの?」

 きょとんと目を大きくするバルを無視して、「動いた」とヒカルがつぶやく。森の中からドン! と大きな何かが大木にぶつかる音が聞こえてきた。

 明日はきっと満月だ。少しだけ掛けた大きなお月様が、空から呆然と立ち尽くす二人を見下ろしていた。



 二人は森の側の草原で目を覚ました。

 昨夜のことが未だに忘れられず、二人は終始無言だった。バルは、何度も自分の手のひらを開いては閉じ開いては閉じをして、まるで生きている実感を確かめているよう。

 ヒカルと言えば、隙があれば黄金の懐中時計を眺めていた。

 時間を止めることが出来る懐中時計だ。夜になると現れるというお化けの大蛇も例外ではない。

 無事? に危機を脱出できたのもこいつのお陰なのだけれど、それ以上にその異常すぎる現象が怖くなってしまったのだった。
 昼食のグミとお煎餅を一緒に食べたところで、バルが耐え切れずに口を開いた。

「それ何?」

 硬結びをした葉っぱをひょいと投げ捨てると、相変わらず時計を見つめていたヒカルの側にバルが腰を下ろした。

「時計だよ」
「とけい?」
「そう。時間が分る便利な物さ」

 本当は他にも秘密があるのだけれども。

 ヒカルは懐中時計を軽く振ってから、バルに見せてやった。チクチクチク。滑らかに動く秒針に、バルの目が輝いた。

「すごい」
「な? すごいだろ」

 自分が褒められたような気がして、ヒカルも気分が良くなった。

「どうやってるの?」
「仕組みはわからない。こればっかりは中を開けてみないと」

 それはヒカルの本心であり、願望でもあった。憧れと言っても良いかも知れない。

 時計職人として、これほど滑らかに、そして美しい時計の内部が気になって気になって仕方がなかったのだ。

「実は俺も持ってるんだ。これ、俺が作ったんだよ」

 そう言って、ヒカルは左腕に巻いた自信作である腕時計を見せてやった。

「自分で?」
「そうさ」
「すごい! もしかして君は技術者なの!?」

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