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第六章 鉛色の空
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あの事件以来、空は曇りっぱなしだ。
暖かな朝日が目を覚ましてくれることも、町の湖をキラキラと輝かせてくれることも無くなった。
今日も空は分厚い雲に覆われて、小さな少年を見下ろしている。
瓦礫の山になった大都市オルストン。
高い建物が多く窮屈なその都市は、今では見晴らしが良い。全てが崩れ、全てが碎けた。
少年は、毎日トゲのある木材を持ち上げて、狭い石の間を潜り抜ける。
缶詰めや腐ったパンを探す毎日には、この空模様はぴったりなのかもしれない。
丸っこい鼻に虫が止まる。少年はそれを追い払って目を明けた。
瓦礫を集めて作った簡易なテントは、雨も風も充分に塞いではくれない。
あの日、大都市オルストンが黄金竜に壊滅させられてから、少年バルは一人でこの都市で生きていた。
難民たちの誘いも断り、ここに居座る理由は、連れていかれたヒカルがいつ帰ってきても良いように。
きっと帰ってきてくれる。そして、不思議な物をたくさん見せてくれる。
小さな身体と心に理想の鎧を着て、バルは今日も食糧を探す。
伸びた癖毛の前髪が鬱陶しかった。
どんよりとした鉛色の空は、瓦礫の山とそっくりだった。
躓かないように、足場を確かめながらゆっくりと歩くバルは、ヒカルとリンゴを買った元市場を目指していた。
途中、死体を何体か見つけた。すっかり慣れてしまった彼の目には、それらがただの物にしか写らなくて、「何か持っているのか」と物色するようにもなっていた。
元市場に着くと、バルは崩壊した店の瓦礫を丁寧に除けていき、いつものように食糧を探した。
鳥たちに横取りされないよう、時々鉛色の空を見上げながら……。
「やった……」
見つけたのは、丁寧に密閉された豚肉の燻製だった。ここ最近で一番のご馳走に、少年の顔は心なしか綻ぶ。
とりあえず一口。ああ、美味しい。
食糧を片手に、バルは瓦礫に腰をおろした。
「それにしても、今日はやけに静かだな」
風の音も、虫の声も、鳥たちの羽の音も今日は聞こえない。
食べ物をずる賢く狙う鳥たちも、トゲのある足で身体にへばり着く虫たちも、湿気を伴う生暖かい風も、いざ無くなると寂しく思ってしまう。
すぐそこにいたものが消えた。
その悲しみは、バルの様な少年には早すぎたのだろう。
すぐそばに、金色の大きな鐘を見つけた。あちらこちらに亀裂が入った綺麗な鐘は、あの日、敵襲の知らせをした物なのだろうか。
あの音も、もう聞くことはないだろう。
争いは終わった。オルストンは黄金竜に負けたのだから。
バルは、仰向けになって空を見上げた。
「もう嫌だな……一人は」
鉛色の空は、オルストンを中心にどこまでも広がっているかのようにも思われた。
暖かな朝日が目を覚ましてくれることも、町の湖をキラキラと輝かせてくれることも無くなった。
今日も空は分厚い雲に覆われて、小さな少年を見下ろしている。
瓦礫の山になった大都市オルストン。
高い建物が多く窮屈なその都市は、今では見晴らしが良い。全てが崩れ、全てが碎けた。
少年は、毎日トゲのある木材を持ち上げて、狭い石の間を潜り抜ける。
缶詰めや腐ったパンを探す毎日には、この空模様はぴったりなのかもしれない。
丸っこい鼻に虫が止まる。少年はそれを追い払って目を明けた。
瓦礫を集めて作った簡易なテントは、雨も風も充分に塞いではくれない。
あの日、大都市オルストンが黄金竜に壊滅させられてから、少年バルは一人でこの都市で生きていた。
難民たちの誘いも断り、ここに居座る理由は、連れていかれたヒカルがいつ帰ってきても良いように。
きっと帰ってきてくれる。そして、不思議な物をたくさん見せてくれる。
小さな身体と心に理想の鎧を着て、バルは今日も食糧を探す。
伸びた癖毛の前髪が鬱陶しかった。
どんよりとした鉛色の空は、瓦礫の山とそっくりだった。
躓かないように、足場を確かめながらゆっくりと歩くバルは、ヒカルとリンゴを買った元市場を目指していた。
途中、死体を何体か見つけた。すっかり慣れてしまった彼の目には、それらがただの物にしか写らなくて、「何か持っているのか」と物色するようにもなっていた。
元市場に着くと、バルは崩壊した店の瓦礫を丁寧に除けていき、いつものように食糧を探した。
鳥たちに横取りされないよう、時々鉛色の空を見上げながら……。
「やった……」
見つけたのは、丁寧に密閉された豚肉の燻製だった。ここ最近で一番のご馳走に、少年の顔は心なしか綻ぶ。
とりあえず一口。ああ、美味しい。
食糧を片手に、バルは瓦礫に腰をおろした。
「それにしても、今日はやけに静かだな」
風の音も、虫の声も、鳥たちの羽の音も今日は聞こえない。
食べ物をずる賢く狙う鳥たちも、トゲのある足で身体にへばり着く虫たちも、湿気を伴う生暖かい風も、いざ無くなると寂しく思ってしまう。
すぐそこにいたものが消えた。
その悲しみは、バルの様な少年には早すぎたのだろう。
すぐそばに、金色の大きな鐘を見つけた。あちらこちらに亀裂が入った綺麗な鐘は、あの日、敵襲の知らせをした物なのだろうか。
あの音も、もう聞くことはないだろう。
争いは終わった。オルストンは黄金竜に負けたのだから。
バルは、仰向けになって空を見上げた。
「もう嫌だな……一人は」
鉛色の空は、オルストンを中心にどこまでも広がっているかのようにも思われた。
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