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第2話 目が覚めたら石畳の王都でした
冷たい。
そして、硬い。
頬に触れるひんやりとした感触と、全身を打ちつけるような石の硬さに、私はゆっくりと重い瞼を開けた。
最初に視界に飛び込んできたのは、見慣れたリビングの白い天井でも、雨の降る日本の夜空でもなかった。
うっすらと白み始めた、どこか見知らぬ空。
そして、苔のむした重厚なレンガ造りの建物の壁だった。
「……ここ、どこ……?」
ゆっくりと身を起こす。
体のどこにも痛みはなかった。
横断歩道でトラックの強烈な光に包まれ、体が弾き飛ばされたあの感覚は、確かにあったはずなのに。
辺りを見回すと、中世のヨーロッパを思わせるような石畳の路地が続いていた。
少し離れた大通りからは、馬の蹄が石を叩くパカッ、パカッという音と、木車のきしむ音が聞こえてくる。
街灯のようなポールには、電球ではなく、青白く光る不思議な石が入ったランタンが揺れていた。
夢でも見ているのだろうか。
そう思って自分の頬をつねってみたけれど、しっかりとした痛みが走る。
雨に濡れた衣服は冷たく張り付き、微かに土と獣のような、異国の匂いが鼻を突いた。
「あら、こんなところで倒れているなんて。大丈夫?」
ふいに、頭上から声が降ってきた。
驚いて顔を上げる。
そこに立っていたのは、五十代くらいの恰幅の良い女性だった。
パリッとした濃紺の制服のようなものを着崩し、手には革張りのバインダーを抱えている。
鋭く知的な瞳に、少しだけ心配そうな色を浮かべて私を見下ろしていた。
彼女の口の動きと、私の耳に届く言葉の響きは、明らかに日本語ではなかった。
それなのに、なぜかその意味がスッと頭の中に入ってくる。
「……あ、あの……」
「その服装、それに黒い髪……。なるほどね、あなた『迷い人』ね」
マヨイビト。
耳慣れない単語に首を傾げる私をよそに、女性はテキパキと指示を出し始めた。
「私はマチルダ。王宮の人事官をしているわ。とりあえず、こんな裏路地に座り込んでいたら風邪を引くわよ。私の執務室へいらっしゃい」
マチルダと名乗ったその人は、有無を言わさぬ力強さで私の腕を引き、立たせてくれた。
その手は温かく、力強かった。
「あ、ありがとうございます……」
混乱したまま、私はマチルダさんの後に続いて石畳を歩いた。
すれ違う人々の服装は、やはりテレビや映画でしか見たことのないような、チュニックや長いマントばかりだった。
時折、立派な鎧を着た人たちが、腰に剣を下げて歩いているのまで見える。
本当に、日本じゃないんだ。
夫に離婚届を突きつけられ、絶望の中で雨の街を飛び出して……気がつけば、違う世界に来てしまったらしい。
普通なら、パニックになってもおかしくない状況だった。
けれど、私の心は不思議なほど冷え切って、どこか他人事のように今の状況を受け入れていた。
帰りたい、という強い思いが湧いてこなかったからだ。
元の世界に帰ったところで、私には何もない。
仕事も、お金も、誇れるものも。
「お前は家事しかできない」「俺がいなかったら生きていけない」と、私を全否定した夫の冷たい目があるだけだ。
帰りたくない。
でも、ここで一人で生きていく力なんて、私にはもっとない。
「さあ、入りなさい。とりあえずこれを羽織って」
案内されたのは、王城の敷地内にあるという、重厚な石造りの建物の一室だった。
暖炉には赤々と火が燃えていて、部屋中を暖かな空気が包んでいる。
マチルダさんは私をふかふかのソファに座らせると、分厚い毛布を肩にかけてくれた。
そして、湯気の立つマグカップを私の手に握らせた。
「温かいハーブティーよ。少しは落ち着くでしょう」
「……ありがとうございます」
両手で包み込んだカップの熱が、冷え切った体にじんわりと染み渡る。
一口飲むと、カモミールに似た優しい香りと、ほんのりとした甘さが口の中に広がった。
美味しい。
誰かに温かい飲み物を淹れてもらうなんて、一体何年ぶりのことだろう。
「さて、落ち着いたところで話をしましょうか。ここはアルディア王国。あなたがいた世界とは、まったく違う場所よ」
マチルダさんは私の向かいに座り、足を組み替えた。
「時折、別の世界から魂が流れ着くことがあるの。私たちはそれを『迷い人』と呼んでいるわ。言葉が通じるのは、この世界に定着する際に与えられる恩恵のようなものね」
「……あの、元の世界に帰る方法は……?」
「今のところ、ないわね。過去に帰還できたという記録は残っていないの」
マチルダさんの言葉は、残酷な事実であるはずなのに、私の胸の奥に小さな安堵をもたらした。
もう、あの冷え切った食卓に戻らなくていい。
ため息をつかれながら、作った料理を無視されることもない。
けれど、同時に強烈な不安が襲ってきた。
「私……これから、どうすればいいんでしょうか」
ぽつりと漏れた声は、情けないほど震えていた。
「元の世界でも、私はただの専業主婦でした。仕事のスキルも、特別な能力もありません。……私なんて、一人じゃ何もできないんです」
夫の言葉が呪いのように蘇る。
誰の役にも立てない私に、この見知らぬ世界で生きていく価値などあるのだろうか。
マチルダさんは、じっと私を見つめた。
そして、マグカップを握りしめている私の手を、まじまじと見下ろした。
「……あなた、その手」
「え?」
「水仕事や家事で荒れているけれど、爪は短く綺麗に切り揃えられている。それに、さっきから私の執務室の調度品や、暖炉の薪の減り具合を無意識に確認していたわね?」
ハッとした。
確かに私は、部屋に入った瞬間から「この部屋は少し埃が溜まっているな」「薪のストックが足りなくなりそうだな」と、いつもの癖で無意識に生活環境をチェックしてしまっていた。
「専業主婦、と言ったわね。料理や洗濯、掃除といった生活管理はできるの?」
「え? あ、はい。それは十二年間、ずっとやってきましたけど……でも、そんなの誰でもできることですから……」
「誰でもできる、ですって?」
マチルダさんは、呆れたように、けれどどこか歓喜を含んだような声で笑った。
「あなた、素晴らしいわ! まさに私が探し求めていた人材よ!」
「えっ……?」
予想外の反応に、私は目を丸くした。
「我がアルディア王国は、迷い人を無下にはしない。ただの保護対象として囲うのではなく、適性を持った『働き手』としてきちんと職を斡旋する制度があるの」
マチルダさんはバインダーを開き、一枚の書類をペンで叩いた。
「あなたには、ある職場の『寮母』として住み込みで働いてもらいたいわ。もちろん、無給のボランティアじゃない。正当な給与を支払い、あなたの私室と休日は王国が完全に保証する。正式な雇用契約よ」
給与。私室。休日。
それは、私が十二年間の結婚生活で一度ももらったことのないものだった。
「私みたいな、ただ家事しかできない女でも……お給料をもらって、働けるんですか?」
「家事『しか』じゃないわ。生活を整えることは、立派な専門技能よ。あなたをただの保護対象にするつもりはない。あなたは、我が国に必要な『戦力』よ」
戦力。
その言葉が、ひび割れた心に温かく染み込んでいく。
誰でもできることだと、一番身近な人に否定され続けてきた私の十二年間を、目の前の見知らぬ女性が肯定してくれたのだ。
「……やります」
気がつけば、私はまっすぐにマチルダさんの目を見ていた。
「私にできることなら、なんでもさせてください」
「いい返事ね。そうこなくっちゃ」
マチルダさんは満足そうに頷き、書類にサラサラと何かを書き込んだ。
これで、私の新しい居場所ができる。
今日からもう、夫の顔色をうかがわなくていいのだ。
安堵で胸をなでおろした私に向かって、マチルダさんはふと、哀れむような、同情するような視線を向けた。
「あらかじめ言っておくけれど、給与が良いのには理由があるの」
「理由、ですか?」
マチルダさんは重々しくため息をつき、書類を閉じた。
「あなたが配属されるのは、王国最強と呼ばれるエリート集団の寮よ。……ただし、これまでの寮母は全員、三日以内に逃げ出しているわ」
「三日……?」
「ええ。心して行きなさい。配属先は、控えめに言って最悪の環境よ」
その時の私はまだ、マチルダさんの言葉の本当の意味を分かっていなかったのだ。
(続く)
そして、硬い。
頬に触れるひんやりとした感触と、全身を打ちつけるような石の硬さに、私はゆっくりと重い瞼を開けた。
最初に視界に飛び込んできたのは、見慣れたリビングの白い天井でも、雨の降る日本の夜空でもなかった。
うっすらと白み始めた、どこか見知らぬ空。
そして、苔のむした重厚なレンガ造りの建物の壁だった。
「……ここ、どこ……?」
ゆっくりと身を起こす。
体のどこにも痛みはなかった。
横断歩道でトラックの強烈な光に包まれ、体が弾き飛ばされたあの感覚は、確かにあったはずなのに。
辺りを見回すと、中世のヨーロッパを思わせるような石畳の路地が続いていた。
少し離れた大通りからは、馬の蹄が石を叩くパカッ、パカッという音と、木車のきしむ音が聞こえてくる。
街灯のようなポールには、電球ではなく、青白く光る不思議な石が入ったランタンが揺れていた。
夢でも見ているのだろうか。
そう思って自分の頬をつねってみたけれど、しっかりとした痛みが走る。
雨に濡れた衣服は冷たく張り付き、微かに土と獣のような、異国の匂いが鼻を突いた。
「あら、こんなところで倒れているなんて。大丈夫?」
ふいに、頭上から声が降ってきた。
驚いて顔を上げる。
そこに立っていたのは、五十代くらいの恰幅の良い女性だった。
パリッとした濃紺の制服のようなものを着崩し、手には革張りのバインダーを抱えている。
鋭く知的な瞳に、少しだけ心配そうな色を浮かべて私を見下ろしていた。
彼女の口の動きと、私の耳に届く言葉の響きは、明らかに日本語ではなかった。
それなのに、なぜかその意味がスッと頭の中に入ってくる。
「……あ、あの……」
「その服装、それに黒い髪……。なるほどね、あなた『迷い人』ね」
マヨイビト。
耳慣れない単語に首を傾げる私をよそに、女性はテキパキと指示を出し始めた。
「私はマチルダ。王宮の人事官をしているわ。とりあえず、こんな裏路地に座り込んでいたら風邪を引くわよ。私の執務室へいらっしゃい」
マチルダと名乗ったその人は、有無を言わさぬ力強さで私の腕を引き、立たせてくれた。
その手は温かく、力強かった。
「あ、ありがとうございます……」
混乱したまま、私はマチルダさんの後に続いて石畳を歩いた。
すれ違う人々の服装は、やはりテレビや映画でしか見たことのないような、チュニックや長いマントばかりだった。
時折、立派な鎧を着た人たちが、腰に剣を下げて歩いているのまで見える。
本当に、日本じゃないんだ。
夫に離婚届を突きつけられ、絶望の中で雨の街を飛び出して……気がつけば、違う世界に来てしまったらしい。
普通なら、パニックになってもおかしくない状況だった。
けれど、私の心は不思議なほど冷え切って、どこか他人事のように今の状況を受け入れていた。
帰りたい、という強い思いが湧いてこなかったからだ。
元の世界に帰ったところで、私には何もない。
仕事も、お金も、誇れるものも。
「お前は家事しかできない」「俺がいなかったら生きていけない」と、私を全否定した夫の冷たい目があるだけだ。
帰りたくない。
でも、ここで一人で生きていく力なんて、私にはもっとない。
「さあ、入りなさい。とりあえずこれを羽織って」
案内されたのは、王城の敷地内にあるという、重厚な石造りの建物の一室だった。
暖炉には赤々と火が燃えていて、部屋中を暖かな空気が包んでいる。
マチルダさんは私をふかふかのソファに座らせると、分厚い毛布を肩にかけてくれた。
そして、湯気の立つマグカップを私の手に握らせた。
「温かいハーブティーよ。少しは落ち着くでしょう」
「……ありがとうございます」
両手で包み込んだカップの熱が、冷え切った体にじんわりと染み渡る。
一口飲むと、カモミールに似た優しい香りと、ほんのりとした甘さが口の中に広がった。
美味しい。
誰かに温かい飲み物を淹れてもらうなんて、一体何年ぶりのことだろう。
「さて、落ち着いたところで話をしましょうか。ここはアルディア王国。あなたがいた世界とは、まったく違う場所よ」
マチルダさんは私の向かいに座り、足を組み替えた。
「時折、別の世界から魂が流れ着くことがあるの。私たちはそれを『迷い人』と呼んでいるわ。言葉が通じるのは、この世界に定着する際に与えられる恩恵のようなものね」
「……あの、元の世界に帰る方法は……?」
「今のところ、ないわね。過去に帰還できたという記録は残っていないの」
マチルダさんの言葉は、残酷な事実であるはずなのに、私の胸の奥に小さな安堵をもたらした。
もう、あの冷え切った食卓に戻らなくていい。
ため息をつかれながら、作った料理を無視されることもない。
けれど、同時に強烈な不安が襲ってきた。
「私……これから、どうすればいいんでしょうか」
ぽつりと漏れた声は、情けないほど震えていた。
「元の世界でも、私はただの専業主婦でした。仕事のスキルも、特別な能力もありません。……私なんて、一人じゃ何もできないんです」
夫の言葉が呪いのように蘇る。
誰の役にも立てない私に、この見知らぬ世界で生きていく価値などあるのだろうか。
マチルダさんは、じっと私を見つめた。
そして、マグカップを握りしめている私の手を、まじまじと見下ろした。
「……あなた、その手」
「え?」
「水仕事や家事で荒れているけれど、爪は短く綺麗に切り揃えられている。それに、さっきから私の執務室の調度品や、暖炉の薪の減り具合を無意識に確認していたわね?」
ハッとした。
確かに私は、部屋に入った瞬間から「この部屋は少し埃が溜まっているな」「薪のストックが足りなくなりそうだな」と、いつもの癖で無意識に生活環境をチェックしてしまっていた。
「専業主婦、と言ったわね。料理や洗濯、掃除といった生活管理はできるの?」
「え? あ、はい。それは十二年間、ずっとやってきましたけど……でも、そんなの誰でもできることですから……」
「誰でもできる、ですって?」
マチルダさんは、呆れたように、けれどどこか歓喜を含んだような声で笑った。
「あなた、素晴らしいわ! まさに私が探し求めていた人材よ!」
「えっ……?」
予想外の反応に、私は目を丸くした。
「我がアルディア王国は、迷い人を無下にはしない。ただの保護対象として囲うのではなく、適性を持った『働き手』としてきちんと職を斡旋する制度があるの」
マチルダさんはバインダーを開き、一枚の書類をペンで叩いた。
「あなたには、ある職場の『寮母』として住み込みで働いてもらいたいわ。もちろん、無給のボランティアじゃない。正当な給与を支払い、あなたの私室と休日は王国が完全に保証する。正式な雇用契約よ」
給与。私室。休日。
それは、私が十二年間の結婚生活で一度ももらったことのないものだった。
「私みたいな、ただ家事しかできない女でも……お給料をもらって、働けるんですか?」
「家事『しか』じゃないわ。生活を整えることは、立派な専門技能よ。あなたをただの保護対象にするつもりはない。あなたは、我が国に必要な『戦力』よ」
戦力。
その言葉が、ひび割れた心に温かく染み込んでいく。
誰でもできることだと、一番身近な人に否定され続けてきた私の十二年間を、目の前の見知らぬ女性が肯定してくれたのだ。
「……やります」
気がつけば、私はまっすぐにマチルダさんの目を見ていた。
「私にできることなら、なんでもさせてください」
「いい返事ね。そうこなくっちゃ」
マチルダさんは満足そうに頷き、書類にサラサラと何かを書き込んだ。
これで、私の新しい居場所ができる。
今日からもう、夫の顔色をうかがわなくていいのだ。
安堵で胸をなでおろした私に向かって、マチルダさんはふと、哀れむような、同情するような視線を向けた。
「あらかじめ言っておくけれど、給与が良いのには理由があるの」
「理由、ですか?」
マチルダさんは重々しくため息をつき、書類を閉じた。
「あなたが配属されるのは、王国最強と呼ばれるエリート集団の寮よ。……ただし、これまでの寮母は全員、三日以内に逃げ出しているわ」
「三日……?」
「ええ。心して行きなさい。配属先は、控えめに言って最悪の環境よ」
その時の私はまだ、マチルダさんの言葉の本当の意味を分かっていなかったのだ。
(続く)
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