「ありがとう、先生」
「……先生と呼ぶのは、やめてください」
S級救助冒険者となった女性を前に、下級神官ヨハンは慌てて扉を閉めた。
七年前、彼女にこっそり手紙を渡したことは、誰にも知られてはいけない。
第五等級――通称、ハズレスキル。
その判定ひとつで、家族にも働き先にも見捨てられる子どもたちがいる。
ヨハンの仕事は、その残酷な等級を告げること。
けれど彼には、技能に隠された条件を読み取る力があった。
判定は変えられない。
それでも、生きていく方法なら伝えられるかもしれない。
そうして七年間、渡し続けた二十三通。
救われた子たちは、全員が英雄になったわけではない。
職人になった者。家庭を持った者。使い方を読み違え、傷を負った者もいる。
それでも――全員、生きていた。
秘密が暴かれれば、ヨハンは神官の居場所を失う。
その時、彼を「先生」と呼ぶ人々は、それぞれの仕事と経験を携えて動き始める。
一枚の手紙から始まる、救済と再出発のファンタジー。
文字数 44,813
最終更新日 2026.10.19
登録日 2026.10.16
宝石より、お祖母様と暮らしたい。
そう伝えたら、七十三歳の大奥様が誰より喜んで荷造りを始めました。
「クレア。君との婚約は、今夜をもって破棄する」
侯爵家の嫡男に捨てられた伯爵令嬢クレアは、慰謝料に好きなものを選べと言われる。
けれど彼女が誘ったのは、五十年も屋敷を支えてきた彼のお祖母様だった。
「私の町家で、一緒に暮らしませんか?」
「喜んで!」
小さな家に、使用人はいない。
けれど、自分で焼くパン、黄色いカーテン、好きな花を植えられる庭がある。
大奥様を連れ戻そうとする孫にも、ご本人はもう遠慮しない。
そして家の修繕を頼んだ建築監督レオンは、元婚約者の従兄なのに、クレアを急かさず、仕事も暮らしも大切にしてくれる人だった。
図面を持たずに訪ねてきた彼が、伝えたいこととは――。
七十三歳の人生も、二十三歳の恋も、ここから。
家族愛と新しい恋、軽いざまぁを楽しむ異世界恋愛。全32話・完結まで執筆済み。ハッピーエンド。
※公開済み短編『婚約破棄の慰謝料は、あなたのお祖母様でお願いします』を、新しい場面とその後の展開を加えて再執筆・長編化した連載版です。第1〜7話は短編を加筆・再構成し、第8話から短編にはない新展開に入ります。短編未読でも第1話からお読みいただけます。
※小説家になろうにも掲載予定です。
文字数 52,569
最終更新日 2026.10.19
登録日 2026.10.16
家族のために働き続けた令嬢が、たった三つの荷物を持って家を出た。
翌朝、彼女を「出来損ない」と呼んだ屋敷は、いつもの仕事さえ回らなくなっていた。
彼女を逃がしたのは、王都の夜逃げ屋ミレイユ。
持ち出す私物は三つまで。行き先を決めるのは依頼人。
彼女の仕事は、虐げられた人を外へ連れ出し、その先の暮らしにつなぐことだ。
そんな彼女を追うのは、法と記録を信じる堅物の追跡官カイン。
逃がす女と、追う男。会えばぶつかる二人だったが、逃げた人々を食い物にする仲介業者を前に、協力することになる。
一緒に人を助けるたび、彼の不器用な優しさが見えてくる。
一人で何でも背負ってきた彼女にも、帰りを待ってくれる人ができていく。
けれど、恋をしたからといって、逃げ道まで手放さなくていい。
自分の人生を選ぶ人たちと、ようやく隣に立てるようになる二人の物語。
お仕事×救出劇×大人の不器用な恋。
全50話・完結まで執筆済み。ハッピーエンドです。
文字数 97,919
最終更新日 2026.10.19
登録日 2026.10.08
「私に、無断で触れないこと」
生贄にされるはずだった聖女が、皇帝に突きつけた条件だった。
誰も逆らえない声を持つ皇帝レオンハルト。
その命令が届かなかったリシェルは、祭壇の前で「死にたくない」と告げる。
すると皇帝は、彼女の前に跪いた。
「私を拒んでいい」
与えられた猶予は百日。
生きる方法を探して彼と過ごすうちに、リシェルは気づく。
冷たいと思っていた人が、自分の返事を待っている。
触れようとした手を止め、低く掠れた声で、自分に頼ろうとしている。
その不器用さに、心が近づいていく。
けれど、守りたいという願いさえ、絶対の力を持つ彼の過ちになる。
傷ついた信頼を、甘い言葉だけでは取り戻せない。
彼に「いいえ」と言えるまま、いつか自分から「はい」と伝えたい。
生贄聖女と孤独な皇帝の、恋と再生の物語。
全50話・ハッピーエンド。
文字数 73,387
最終更新日 2026.10.19
登録日 2026.10.14
私を捨てて妹を選んだ王太子が、囚人として送られてきました。
迎えるのは、彼が断罪した私。今は、この施設の所長です。
妹の嘘で婚約も仕事も奪われたクラウディアは、無実が認められた後、辺境で賠償金を被害者へ返す仕事に就いた。
そこへ、廃嫡された元婚約者がやってくる。妹も側近たちも、同じ灰色の作業着で。
「許しを乞う必要はありません。必要なのは着金です」
働いて、稼いで、奪った金を全額返していただく。
その金を待っているのは、明日の家賃も払えない商人や、仕事を失った職人たちなのだから。
そんな彼女の隣に立つのは、厳格な監察官アルヴィン。
仕事の手抜きには厳しいくせに、彼女の休息にはもっと厳しい。
向けられる気遣いに、仕事だけで満たしていた毎日が少しずつ変わっていく。
ところが、被害者へ送ったはずの金が届かなくなって――。
元婚約者には、最後まで返済を。
私には、仕事の外でも隣にいたいと思える人を。
※元婚約者との復縁なし。ハッピーエンド。全50話、完結まで執筆済み。
10/10 表紙画像変更しました。
文字数 125,775
最終更新日 2026.10.17
登録日 2026.10.05
「慰謝料は宝石でも屋敷でも、好きなものを選べ」
婚約者の侯爵家嫡男ギルバートから、夜会で一方的に婚約破棄された伯爵令嬢クレア。
彼女が選んだのは、宝石でも屋敷でもなく――元婚約者の「お祖母様」だった。
もちろん、人を品物として受け取るわけではない。ご本人に一緒に暮らしませんかと尋ねただけ。
ところが、五十年にわたり侯爵家を支えてきた大奥様エレノアは、誰よりも嬉しそうに立ち上がる。
「行きます! さっそく荷造りをしてきますわ!」
始まったのは、小さな町家での自由な二人暮らし。
焦げたパンに、黄色いカーテン、自分の手で植える花。七十三歳の大奥様が新しい毎日を楽しむ一方、彼女の無償の働きに頼っていた侯爵家は慌て始める。
そしてクレアにも、大奥様の孫で誠実な青年レオンとの、思いがけない恋が訪れて――。
元婚約者への軽いざまぁ、女性二人の家族愛、新しい恋を描く、全6話(10/13中に投稿)完結のハッピーエンドです。
文字数 10,292
最終更新日 2026.10.16
登録日 2026.10.13
婚約破棄の夜、六年間の仕事まで奪われかけたエレナの前に、王国の冷徹監査官が現れた。彼は改竄の証拠となる原資料を封印保全し、彼女が自分の仕事を証明できるようにした。
赤字領地の再建官になったエレナは、自分の名前で働き始める。
厳しい監査、山積みの帳簿、冬を越せない村の食糧。それでも、自分の考えで道を切り開く毎日は、婚約者の陰にいた頃よりずっと自由だった。
エドガーは冷たい人だと思っていた。
けれど、夜更けに差し出される温かいお茶も、危機を越えた後の「怖かった」という声も、仕事だけでは説明できない。
好きになったから、そばにいたい。
好きになったからこそ、相手の自由を奪いたくない。
近づきたい二人は、肝心なところで何度もすれ違ってしまう。
「君に、私を選んでほしい」
仕事を手放さず、恋も諦めない。
名前を奪われた才女が自分の人生を取り戻し、誰より彼女を望む不器用な監査官と、互いを選び合うまでの物語。
※全50話・完結まで執筆済み。ハッピーエンド。
【タグ・半角スペース区切り】
文字数 138,552
最終更新日 2026.10.13
登録日 2026.10.01
「本日の聖女様の涙は、三回です」
けれど、聖女イリスは今日も一度も泣いていない。宮廷記録係ニアが代わりに涙を流し、嘘の公報に署名しているからだ。
そんなある日、南区の水が汚染され、八十人の飲み水が失われた。宮廷は聖女に大噴水を浄めさせようとする。本人に尋ねるより先に、公報には「承諾済み」の四文字。
三年前、同じ言葉に追い詰められた聖女。冬の薪代のため、黙って署名してきた記録係。
「昼の公報には署名できません」
人を助けるために、自分を犠牲にしなければならないのか。二人がそれぞれの答えを選ぶ、全8話の異世界ファンタジー。
【完結/女性二人の信頼/恋愛要素なし】
文字数 9,217
最終更新日 2026.10.12
登録日 2026.10.11
「婚約破棄するなら、私の美点を三つどうぞ」
王太子レオナールから突然の婚約破棄を告げられた侯爵令嬢クラリス。
しかし、この国には古い決まりがあった。婚約破棄を申し出た者は、相手の美点を三つ、自分の目で見て認めた言葉で証言する。果たせなければ、その不名誉が記録に残るのだ。
「美しい」
「優秀だ」
ところが、真偽の鐘は一度も鳴らなかった。
長年の婚約者だった殿下は、クラリスのことを何も見ていなかったのである。
猶予は七日間。
今さら彼女の美点を探し始める殿下。だが、クラリスには彼の評価を待つつもりなどなかった。
これまで王太子室の名に隠されてきた仕事を、今度こそ自分の名前で成し遂げる。その矢先、彼女が危険を指摘していた王都の祭典で事故が起こり――。
一方、以前から彼女の仕事を知っていた書記官テオも、自らの過ちと向き合い始める。
七日後、王太子がようやく彼女の価値を認めたとき、クラリスが選ぶ答えとは?
見落とされていた有能令嬢が、自分の意思で未来を選び直す、婚約破棄から始まる異世界恋愛。
王太子の後悔、軽いざまぁ、不器用な書記官との新しい恋。
全6話で完結する物語です。
【全6話・完結保証】10月10日(土)・11日(日)に各3話更新。11日18時に完結予定です。
文字数 10,255
最終更新日 2026.10.11
登録日 2026.10.10
「九時間も寝る怠け者に、冒険者は務まらない」
眠らず努力することが正義の王都で、レンが授かったのはハズレスキル《休養》。だがこの力には、昼間に失敗し、観察し、自分で試した経験を、九時間の睡眠で確かな動きへ変える効果があった。
昨日は負けた魔獣を、今日は無傷で倒す。
眠らぬ剣姫セレナの崩れかけた剣を立て直し、仲間と交代で休みながら、長期戦の戦果を積み上げていく。
一方、ライバルのレグルスは九十分で集中を戻せる本物の短眠冒険者。短眠も九時間睡眠も、本人に合っている限り間違いではない。
やがて百時間迷宮の出口が消え、眠る人間を狙う魔獣が押し寄せる。
レンが作るのは、誰もが同じ時間眠る軍団ではない。それぞれの休息を組み合わせ、眠る仲間の命を起きている仲間が守る戦い方だった。
昨日の失敗を、明日の一歩へ。
睡眠を削れない青年が、休むことを武器に迷宮と王都を生き残る、完結済み異世界ファンタジー。
文字数 134,912
最終更新日 2026.10.11
登録日 2026.09.29
王国最強の公爵が、私にだけは不器用すぎる。
家庭教師を終えて十年。三十一歳のオリヴィアのもとへ、元教え子フェリクスから「月謝」が届き続けている。
もう教えることなどないのに、今月は机の修繕代まで。
預かったお金を返そうと会いに行けば、食事に誘われ、休日まで一緒に過ごすことに。
立派な公爵になった二十七歳の彼が、私の返事ひとつで、こんなに嬉しそうな顔をするなんて。
恩返しだと思っていた。
けれど彼が会いたいのは、「先生」だけではないらしい。
もう一度、自分の名前で教壇に立ちたい私。
その願いを大切にしながら、少しずつ距離を縮めてくる彼。
月謝という口実がなくなったあと、二人はどんな約束を交わすのだろう。
年下公爵の一途な恋と、元家庭教師の仕事と恋の再出発。
全48話・完結まで執筆済み/恋愛相手は一人/ハッピーエンド。
文字数 91,312
最終更新日 2026.10.04
登録日 2026.09.25
六年間尽くした王太子から婚約破棄を告げられた夜、ヴィクトリアは仕事の印章も置いて王宮を去った。
母から継いだ北の領地で、これからは自分のために生きていこう。
そう決めたはずなのに、気づけばまた、食事を後回しにして書類に向かっている。
役に立つことが、愛される条件だと思っていた。
そんな彼女の仕事を認めた辺境伯レオンハルトは、忙しい予定表に「夕食」と書き込んだ。
彼と交易路を育てるうち、王都を離れた実務官や職人たちも仲間になっていく。
手を動かした分だけ、誰かの暮らしが温まっていく。
一方、彼女を手放した王宮では、予算も物資の手配も滞り始めていた。
戻ってほしいと言われても、もう、私の帰る場所は決まっています。
契約と帳簿で領地を支える有能令嬢と、彼女の働かない時間も共に過ごしたい辺境伯。
仕事の相棒から、人生を共にする二人へ――。
全45話/完結まで執筆済み/ハッピーエンド。
文字数 131,366
最終更新日 2026.09.30
登録日 2026.09.22
危険な結界に完成印を押さなかっただけで、婚約破棄と国外追放。
魔法構造監査官の伯爵令嬢ルネを「書類女」と切り捨てた王太子は、その夜、彼女の警告が正しかったと知る。
一方、ルネを雇った隣国の冷酷公爵レオンは、彼女の監査報告書を読んでいた。
用意されたのは、研究費と仕事部屋。そして、危険な工事を拒む権利。
見栄の噴水より畑の水を。豪華な街灯より、火事にならない夜を。ルネは職人たちと、暮らしを支える魔法網を直していく。
やがて元婚約者が、爵位と復縁の話を持って帰還を求めてきても、答えは変わらない。
私の仕事を認め、判断を守ってくれる人の隣で、もう新しい未来を選んだから。
専門職令嬢の再出発と、冷酷公爵との不器用な恋。元の国へは戻らず、救うべき人々へ手を伸ばす国づくりファンタジー。
文字数 125,191
最終更新日 2026.09.29
登録日 2026.09.16
「……なぜ笑う?」
元魔王軍の首席罠師ルークは、本気で困惑していた。
魔王軍を滅ぼした勇者への復讐のため、その故郷・地球に作った極悪ダンジョン。
不可視の鋼線。
毒沼と圧殺罠。
一瞬の判断ミスで死亡する極悪ギミック。
もちろん手加減などしていない。
ところが――。
「今の罠、見返したらちゃんとヒントあったぞ!」
「初見殺しなのに理不尽じゃない!」
「こんな本気で殺しに来る運営初めて見た。神運営だろ!」
地球には、死亡しても入口へ帰還できるダンジョンの法則と、何度殺されても喜んで再挑戦する「死にゲー狂い」が存在した。
ルークが心を折ろうと罠を凶悪化する。
↓
配信者が歓喜して攻略する。
↓
配信がバズる。
↓
投げ銭でダンジョンの予算が増える。
↓
さらに凶悪な罠を作る。
なぜか誰も絶望しない。
それどころか、
「殺意が丁寧すぎる」
「プレイヤーを信頼している神調整」
「初心者教育までしてくれる神運営」
と評価は上がる一方だった。
「違う! 俺は貴様らを殺したいだけだ!」
人類嫌いの元魔王軍罠師VS死ぬほど高難度ゲームが好きな配信者たち。
殺意と称賛が永遠にすれ違う、現代ダンジョン運営コメディ。
文字数 130,178
最終更新日 2026.09.29
登録日 2026.09.17
魔力27。婚約破棄。父からは、辺境の領地を整理してこいと言われた。
何かの役に立たなければ、私には居場所がないのだと思っていた。
けれどリディアには、十八歳の成人判定の日に蘇った記憶がある。
前世はプロボディビルダー。大きな魔法は使えなくても、小さな魔法なら鍛えられる。
食事を整え、使った時間を測り、無理をする前に交代する。薬師の娘や守備隊と積み重ねた記録を、研究者の第二王子フェリクスは信じてくれた。
そして彼は、成果を尋ねるより先に、こう聞く。
「今日は、きちんと食べましたか?」
頑張っていない時間まで隣にいたいと言う人に、どう返せばいいのだろう。
会話を十二通り用意しても、脈拍を数えても、恋だけは予定どおりに進まない。
魔力は27のまま。捨てられた辺境で、自分の居場所と恋を育てる令嬢の物語。
全45話・完結まで執筆済み。ハッピーエンド。
文字数 98,317
最終更新日 2026.09.28
登録日 2026.09.20
才能を伸ばす先生は、いくらでもいる。
五十二歳の辺境教官グレンが教えるのは、「才能がなくても死なない方法」だった。
選択肢が増えると動けない。大術式を続けられない。深い傷を塞げない。魔力を感じられない。急かされると文字を読み違える。
そんな五人が挑む王国統一資格試験で、魔法が本当に止まる。
教師不在、通信不能、地下からは魔力を喰う古い生物。十八人を生還させるため、五人は派手な必殺技ではなく、人数確認、退路確保、止血、縄、紙の手順で動き始める。
これは、落ちこぼれが実は天才だった物語ではない。
欠点を残したまま人を救い、その方法を社会と次の世代へ手渡していく、五人と一人の教官の長編ファンタジー。
文字数 178,524
最終更新日 2026.09.21
登録日 2026.09.03
七年間婚約者だったオスカーから、「華がない」「帳簿と駅路ばかりの女」と建国祭の夜に捨てられた伯爵令嬢リディア。
だが、その場で彼女の過去の仕事に救われた商会長、辺境伯、隣国の王子、魔王が相次いで求婚する。熱狂する会場で、リディアが返した言葉はただ一つ。
「私は、誰かの業績に対する賞品ではありません」
全員への返事を保留した彼女は、大雪による北峠封鎖まで三十日と迫った四境交易の危機へ挑む。空の薬草棚、動かない荷馬車、同じ名で量の違う樽、すべてを止める巨大契約。記録と交渉で詰まりを解くほど、元婚約者が見ようとしなかった七年間が明らかになっていく。
そんな中、北境辺境伯レオンハルトだけは、彼女の能力を奪い合わず、答えを急かさず、仕事をしない時間にも価値があると伝えてくれた。
これは、捨てられた有能令嬢が別の誰かの賞品になる話ではない。仕事も、休息も、隣にいる人も、自分で選べるようになる話。
契約と記録による納得型ざまぁ/一途で不器用な辺境伯との大人の恋/全36話・完結。
文字数 73,778
最終更新日 2026.09.19
登録日 2026.09.10
大夜会の真ん中で、王太子から婚約破棄を宣言された公爵令嬢クラリッサ。
本来なら泣き崩れるはずだったその瞬間、彼女は三人の子を育て上げた四十九歳の前世を思い出す。
「殿下。そのお話、ご両親には通してありますの?」
国王にも王妃にも、双方の家にも無断。おまけに「真実の愛」の相手は、王太子を好きでも王太子妃になる気などなかった。
クラリッサの一言で公開婚約破棄は無効となり、暴走した王太子には即日仮処分が下る。
三か月後の正式審議まで、クラリッサは自分の名誉を取り戻すため社交季の仕事を続けることに。
恋に浮かれた令息、悪辣な婚約者、条件を知らされない令嬢たちを、前世の生活力と貴族令嬢の実務能力で救っていく。
そして彼女の隣には、冷徹と恐れられる王弟公爵レオナールがいた。
役割ではなく一人の女性として見てくれる彼との距離は、仕事を重ねるたび静かに近づいていく。
だが、誰かのためにと差し伸べた手が、相手の選択を奪ってしまった時――。
「あなたは、私のお母様ではありません」
これは、正しいつもりで間違えた大人の女性が、責任を引き受け、自分自身の恋と人生も選び直す物語。
王太子との復縁なし。公的責任あり。年の差の大人恋愛、ハッピーエンド。全40話完結。
文字数 92,818
最終更新日 2026.09.07
登録日 2026.08.27
麦が凍り、村が飢える。
そんな北辺の寒村に転生したユアンが頼ったのは、前世で種苗会社に勤めていた経験だった。
南方から手に入れたのは、たった三個の芋。
殖やせば、麦が駄目になった年にも人を食わせられる。
そう考えて植えた芋は見事な葉を茂らせ――収穫はゼロだった。
北辺では、なぜ芋ができないのか。
一株だけにできた十一個の小芋。四千三百粒から選ぶ、北の気候でも育つ株。食べれば毒になる芋。殖やすほど弱っていく種芋。そして、未来のために残す種を食べなければ今日を生きられない人々。
税と配給を計算する元・代官代理セリカ、在来種の灰芋を守るミラ、土地を知り尽くした老農ガーヴ。
彼らとともに、ユアンは「一番よく穫れる芋」ではなく、「飢饉が来ても誰かが生き残れる農業」を作っていく。
やがて訪れる大飢饉。
村人二百一人。残された食料は七十三日分。その先にある収穫へ、本当に間に合うのか。
三個の芋と一冊の帳簿から始まる、異世界農業改革譚。
四十年後。かつて十一人を失った北辺で、餓死者はゼロになる。
文字数 127,653
最終更新日 2026.09.05
登録日 2026.08.20