異世界恋愛 小説一覧
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1
幼なじみの方を奥様にお迎えになるのでしたら、料理人も庭師も御者も今月限りでございます。雇い入れたのは私の名ですので
「客人として迎えるだけだ。君は奥向きのことだけ見ていればいい」
そう言って婚約者が幼なじみを屋敷へ迎え入れた日、父は「侯爵家を怒らせるな、我慢しろ」と言いました。
ええ、待ちますとも。婚約を解くと仰るまでは。
この屋敷の奥向きで働く料理人も、庭師も、御者も、婚約が決まった年に雇い入れた者たちです。雇い入れ状に書かれているのは、侯爵家の名ではございません。「次の奥様」として、私の名です。
ですから、婚約を解かれた月の終わりに、あの者たちの雇いも終わります。私は何も申し付けておりません。
父に叱られた晩、母だけが灯りを消さずに待っていてくれました。
次の雇われ先も、もう決まっているとか。今さら呼び戻そうとなさっても、もう遅いのです。
※毎日6・10・12・16・18・21時に更新します。
2
「お姉様なんだから譲ってあげて」と言われたので、婚約者も工房も、あの青の名前もお譲りしました
「イルゼ。お姉様なんだから、譲ってあげて」
伯爵家の長女イルゼは、婚約者も、工房も、自分が染めた「夜明けの青」という名前まで、妹のものにされてきた。
顔合わせの席で、婚約者は言う。「妹君のほうが、才能がおありだ」
イルゼは手袋を外し、爪の際まで藍に染まった指を卓に置いた。
「はい。お譲りします。――ただ、あの青の染め方だけは、私の手の中にしかありませんので」
祖母の残した川上の染め屋で、ふたたび青を建てるイルゼ。
その手を二年前から探していたのは、王妃付きの、無口な仕立て師だった。
※家族と元婚約者は、あとからしっかり思い知ります/ハッピーエンド
※カクヨム・アルファポリスに、同じ名前で掲載しています
3
「毒婦」として処刑された薬師令嬢は、二度目の人生で辺境騎士団の専属薬師になります~前世で助けに来てくれた団長様が、初対面から溺愛してきます~
「クラリス・エインズワース。国王陛下に毒を盛った罪により、斬首に処す」 王太子の婚約者として尽くし、親友の「聖女」のために薬を作り続けた三年間。その果てに、私は「毒婦」として処刑された。 婚約者は目を逸らし、父は私を勘当し、親友は王太子の腕の中で涙をこぼしていた。 ただひとり――刑場に馬で飛び込み、私の名を叫んでくれた騎士がいた。一度しか話したことのない、西の辺境の騎士団長。 目を開けると、私は十八歳に戻っていた。婚約の誓約式の、前の日に。 「この婚約、辞退いたします」 二度目の人生は、誰にも利用されない。私の薬は、私が決めた人のために使う。 向かう先は、誰も志願しない西の辺境、黒鷲騎士団の専属薬師。あの日の借りを、今度は私が返すために。 ……そう思っていたのに、初対面の騎士団長様が開口一番、 「結婚してくれ」 いえ、あの、まだ名乗ってもいないのですが? 一方、「聖女の薬」を失った王都では、親友の奇跡が少しずつ嘘になり始めていた。
4
「何も望まない妻で助かる」と夫は笑いました。最後のお願いは、離縁です。
結婚して八年。テレーズは、何も望まない妻だと思われていた。
「何も望まない妻で助かる」
友人たちの前でそう笑った夫に、テレーズも微笑みを返した。
一緒に食事をしたかった夜も、守ってほしかった約束も、確かにあった。
何度も伝えた。何度も待った。
けれど、夫は彼女が何も言わなくなったことを、結婚生活がうまくいっている証拠だと思っていた。
「では、最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか」
夫は笑顔で頷いた。
その返事を、テレーズはもう喜べなかった。
5
《11/12完結予定》30回死んだ令嬢は、もう何もしたくない。
夫に刺し殺されたクラリーシャが、次に目を覚ましたのは十六歳の朝だった。
これで三十回目の死。そして三十一回目の人生。
婚約者を変えても、結婚相手を変えても、何をどう工夫しても、最後には死んでしまう。毒殺、監禁、暴力、過労……
もう、疲れた。
「なので、もう結婚したくありません。できれば学院も辞めたいです」
信じてもらえなくても構わないと、父にすべてを打ち明けたクラリーシャ。
娘を愛する善良な父は、話を慎重に確かめた末、伯爵位を親族に譲り、娘とともに亡き妻の遺した果樹園へ隠居することを決めた。
ところが、クラリーシャが貴族社会から姿を消すと、かつての婚約者候補たちや父の後妻を狙っていた女性が、次々と問題を起こし始める。
そんなことはもう知りません。
果樹園で静かに暮らし始めたクラリーシャの前に現れたのは、安くて美味しいお菓子を作ろうと奮闘する、少々野暮な菓子屋の跡取りだった。
※初日以外は6時・17時の更新となります。
6
【完結】あなたが番だと気づいた頃には、私はもうあなたを待っていません
幼い頃から、いつか幼馴染のミハイルのお嫁さんになると信じていた狼獣人のリゼット。
けれど成長した彼は次第にリゼットを当たり前の存在として扱うようになり、ついには“番”だと分かっても彼女を拒絶した。
「もう、あなたを待たない」
泣き明かした翌朝、リゼットは故郷を離れることを決意する。
そして三日後、王都へと旅立ち、薬師として自分の人生を歩き始めた。
そこで出会ったのは、誰にでも冷たいのに、なぜか自分にだけ優しい黒豹獣人のフェリクス。
一方、リゼットを失ったミハイルは、ようやく自分が一番大切なものを手放したことに気づいて――。
これは、誰かに選ばれるのを待つことをやめた少女が、自分の意思で愛する人を選ぶまでの物語。
7
愛人の宝石を鑑定しろと夫に命じられました。では、「盗品」と記載します
「イヴェット、この首飾りを鑑定してくれ。贈り物にふさわしい額をつけてな」
夫が私の作業台へ連れてきたのは、愛人だった。
彼女の胸元には、金の花びらに囲まれた青い石が揺れている。
石の奥を覗いた私は、息を呑んだ。
小さな白い点の並び。結婚前、私が帳面に描き残した特徴と同じだった。
一週間前、夫は母の首飾りを売ったと告げた。
買い手はもう遠方だと。名前も売却の記録も、教えてはもらえなかった。
それなのに、母の石は愛人への贈り物に作り替えられていた。
「妻の物なら家の物だ」
私の形見を奪い、今度は私の署名で贈り物に箔をつけるつもりらしい。
私は婚前の帳面を開き、新しい枠を作った工房へ照会する。
力を貸してくれたのは、以前から私の仕事を認めてくれていた宝飾商だった。
母の思い出に言葉が詰まっても、彼は結論を急かさず、私の話を聞いてくれた。
夫が客を集め、愛人への贈り物を誇る披露会。
そこで鑑定結果を告げるのは、私だ。
母の形見も、私の仕事も、あなたの物ではありません。
自分の名で事実を書いた妻が、形見と仕事を取り戻し、新しい恋を選ぶ物語。
全6話・ハッピーエンド。
8
「刺繍しか能のない妻」と言われたので、離縁して辺境で刺繍店を開きます ~ところで、隣国の大公閣下がお店に住みつきそうなのですが~
「刺繍しか能のない妻など、伯爵家には要らない」 結婚して三年。夫エドガーは幼馴染の未亡人ばかりを優先し、義母はリーゼロッテを「飾り物」と呼んだ。 誰も知らない。彼女が夜ごと縫い込んできた糸が、伯爵家を災いから守る〈守護刺繍〉だったことを。 離縁状を置いて辿り着いたのは、隣国との国境の町ベルン。小さな刺繍店を開いた彼女のもとには、なぜか毎日、冷徹と噂される隣国の大公閣下が通ってくるようになり――。 一方、守りを失った伯爵家では、小さな綻びが少しずつ広がり始めていた。 ※元サヤはありません。ハッピーエンド確定です。
9
「生贄なら役立たずの姉で十分」と竜王国へ嫁がされましたが、私のスープを飲んだ竜王様が番だと言って離してくれません
「生贄なら、役立たずのお姉様で十分よ」
伯爵家の長女リネットは、母を亡くしてから台所に立ち続け、家族からは「台所の匂いのする娘」と疎まれてきた。婚約者を妹に奪われた翌朝、屋敷に竜王国の使者が舞い降りる。竜王の花嫁は食べられてしまう――そう噂される竜の国へ、リネットは妹の身代わりとして差し出されることに。
持っていけたのは、母の形見の片手鍋ひとつだけ。
たどり着いた竜王国で待っていたのは、何を食べても灰の味しかしない呪いに蝕まれた竜王カイゼル。ところが、リネットが夜の厨房で煮たスープだけは、なぜか味がして――。
「明日も作れ。明後日も。ずっとだ」
自分は身代わりの料理番だと思い込むリネットと、一年前の雪の夜からずっと彼女を探していた不器用な竜王。母のレシピとあたたかいスープが、竜の国の食卓と二人の心をゆっくり満たしていく、じれじれ溺愛ファンタジー。
10
「お前には才能があるだろう」父はそう言って、私の婚約者を妹に譲ろうとしました
王立魔法学校を首席で卒業し、稀代の魔法使いと称される伯爵令嬢アルシェナは、その優れた才能を領地のために尽くしてきた。
父はそんな彼女を誇りに思っていたが、魔法の才能に恵まれなかった妹ルミシェナには甘く、幼い頃から何かにつけて姉に譲歩を求めていた。
アルシェナも家族のためだと自分に言い聞かせ、父の期待に応え続けてきたが、ある日、とうとう婚約者まで妹に譲るよう求められてしまう。
「お前には才能があるだろう。ルミシェナには、お前ほど多くの選択肢がないんだ」
父はそれが当然の判断であるかのように告げ、婚約を解消した後もアルシェナには伯爵家を支えてもらうつもりでいた。
これまで家族のために努力し、数え切れないほどの我慢を重ねてきたアルシェナだったが、今回ばかりは父の言葉を受け入れることができなかった。
そして彼女は、父も妹も、婚約者さえも予想していなかった選択をすることになる。
11
幼なじみを優先するのは当然だと殿下に教わりましたので、素直に実行しております
「病弱な幼なじみを優先するのは当然だろう」
婚約者の第二王子アルベルトに、またしても約束を破られた侯爵令嬢エレナ。
けれど、おっとり者の彼女は怒るどころか、目を輝かせて納得した。
「なるほど、それが王族の常識なのですね!」
そういえば、私にも幼い頃に病弱だった幼なじみがいる。今や王国屈指の宮廷魔術師となったルカだ。
殿下に教わった通り、これからはルカを優先しよう――。
焼き菓子を手に、にこにこと研究室へ通い始めたエレナ。悪意はひとかけらもない。
けれどなぜか殿下は青ざめ、社交界には妙な噂が広がり、ルカはなぜか頭を抱えていて……?
素直すぎる天然令嬢が、殿下の「教え」を守っていたら無自覚にざまぁしてしまう、両片思いの溺愛ラブストーリー。
ハッピーエンドです。
完結保証 最終話まで執筆済みです。
12
「華がない」と私を降格させた陛下へ。新しい王妃の教育は有料です
「今日から正妃はリュシアだ。君は側妃として残る」
八年尽くした夫に、エレオノーラは「華がない」と正妃の座を奪われた。
それなのに、新しい王妃の教育も、王宮の裏方も、これまで通り妻の務めとして続けろという。
――承知しました。では、報酬をお支払いください。
離縁を申し立て、勤務時間と報酬を定めた元王妃。
もう誰かの失敗を、徹夜と我慢で埋め合わせるつもりはない。
教える相手の新王妃は、故郷を救いたい一心で、商人の要求に逆らえずにいた。
エレオノーラは彼女に、自分で判断するための授業を始める。
そして、彼女の仕事を当然のように尊重する隣国の外交官との間にも、少しずつ、私的な言葉が増えていく。
手放した妻が必要になっても、もう以前の二人には戻れない。
これは、便利な妻だった女性が、自分の仕事と新しい恋を取り戻す物語。
※全28話・完結まで執筆済み。元夫との復縁なし。ハッピーエンド。
13
「私の方が可愛い」と婚約者を誘惑した令嬢が、翌日から大人しくなった理由
公爵令嬢カトリーヌを一方的にライバル視する男爵令嬢ユリア。
「私の方が可愛いもの」
婚約者である王太子アレクサンドルにまでそう言って近づいたユリアだったが、翌日からなぜか人が変わったように大人しくなってしまう。
一体、彼女に何があったのか――?
14
「君を愛することはない」と言われたので、白い結婚の三年間で公爵領を立て直してから離縁します~なのに冷徹公爵様が、契約の延長を申し込んできます
「フィオナ・クレメンス。君との婚約を破棄する」 五年間、第二王子ライナルトの論文も政策案も演説原稿も、すべて代わりに書いてきた。その結果、彼は「王国の頭脳」と讃えられ――夜会の真ん中で、可憐な義妹ミレイユの手を取った。 実家から厄介払いのように嫁がされた先は、三人の婚約者に逃げられたという北の「冷徹公爵」ジークハルト。 初夜の寝室で、彼は言った。 「君を愛することはない。三年後に離縁する。それまでは好きに過ごしてくれ」 「承知いたしました。では三年間、帳簿を見せていただけますか?」 赤字だらけの公爵領。口をきかない五歳の姪。真っ白な巨大狼。 三年後に気持ちよく出ていくため、フィオナは公爵領の立て直しを始めるのだけれど――なぜか旦那様の様子が、日に日におかしくなっていく。 一方、優秀な「代筆者」を失った王都の第二王子は、少しずつ化けの皮が剥がれ始めていた。
15
妹のために歌うのは、もうやめます ~名前を奪われた令嬢は、隣国王に愛されて幸せを歌う~
人々の心身を休める歌声を持ちながら、妹の演奏会で隠れて歌わされてきた伯爵令嬢セレーネ。その力も功績も、すべて妹のものにされていた。
自分の名前で歌いたい――。
家を出た彼女は、隣国で幼い王子と王女の音楽教師になる。
そこで出会った国王アルヴィンは、歌う力だけでなく、彼女自身を大切にしてくれた。穏やかな気遣いが甘い求愛へ変わる頃、セレーネも初めて、自分の望む未来に手を伸ばす。
一方、彼女を失った実家では、妹の「奇跡」が偽りだったと明らかになり……。
16
【完結】悲しみは、もう止まりました
侯爵令嬢クラリスは、婚約者エドガーが大好きだった。
エドガーも、クラリスほどではないものの、彼女に好意を寄せていた。
留学から帰国した親友ヴィオレットを紹介するまでは。
ひと目で惹かれ合った二人。
次第に離れていく婚約者の心。
そして、親友から告げられた「あの人と別れて」という言葉。
婚約者は何も言わない。
悲しくないはずがない。
傷つかないはずがない。
けれど、私は侯爵令嬢。
恋心は奪われても、誇りまで奪わせるつもりはない。
羽化した侯爵令嬢が手を取ったのは……?
17
余命一ヶ月の妻が死んでから後悔した夫は、彼女を溺愛する。けど、私に未練はない。
余命一ヶ月と告げられた侯爵夫人リュシア。
夫アルベリクは病気を信じず、愛人に子供を産ませるとまで言った。
「私は愛されていなかったんだ……」
そう思ったまま、リュシアは夫への想いを胸に死んだ。
けれど彼女の死後、アルベリクは初めて自分の本当の想いに気づく。
「どうして、もっと早く伝えなかったんだ……」
妻を失ってから、彼は彼女の肖像画を見つめ続ける。
――けれど、もうリュシアに未練はない。
18
「お前を愛する事はない」と私は婚約者に言いました。片想いは性に合わないんです。
婚約者の幼なじみが、毎回デートに現れる。
結婚はするけれど、これ以上あなたを好きになる努力はしません!
そう宣言した伯爵令嬢アルシェナ。
政略結婚だから婚約は解消できない。ならば、夫婦としての義務は果たしても、愛するつもりはない。
私は私の好きなことをして生きていきます。
19
花婿を雪の谷へ捨てた兄へ、私は迎えに行く道を知っています
結婚式の前夜、エステルは兄ベルトランから告げられた。花婿のレオンは、結婚が嫌になって逃げたのだと。
けれど差し出された別れの手紙は、レオンの字ではなかった。冬道組合の長となった兄は、北の交易路に金を出す家のギュスターヴとの縁談を押しつけ、母が遺した山小屋まで取り上げようとしている。
「私が誰と結婚するかを、兄上が決めるの?」
厩舎に戻されたレオンの馬、片方だけ残った手袋、林道に残る雪橇の跡。救護隊長のレオンは、閉ざされた救助門に抗議したせいで、雪の谷へ捨てられていた。
「花婿が谷底にいる結婚式なんて、できないわ!」
母と歩いた山道の記憶を頼りに、エステルは吹雪の夜へ踏み出す。花婿を迎えに行き、閉ざされた門を開けるために。
誰にも人生を決めさせず、愛する人と帰る道を自分の手で選び取る物語。
20
【完結】前の奥様のお部屋には入りません。形だけの後妻で構いませんので、どうぞ皆さまでお好きに偲んでくださいませ
「前の妻の部屋には入るな。君に求めるのは、伯爵夫人という形だけだ」
嫁いだ日、旦那様はそう仰いました。
侍女頭は止めたままの時計の前で「前の奥様なら」と繰り返し、お義母様は優しく微笑みながら、姪御さんのお話ばかりなさいます。
ええ、構いません。前の奥様のお部屋に入るつもりもございません。
ただ、七つになるお嬢様だけが、毎晩こっそり本を抱えて私の部屋へやって来ます。
「お母様の本。読んで」
その余白には、前の奥様が誰にも言えなかったことが綴られていました。花壇をなくすように言われた日。抱いた娘を、返してもらえなかった日々。
私は何も申しません。お父様に読んでさしあげると決めたのは、お嬢様ですから。
止まった時計が動きだす朝、このお屋敷でいちばん青ざめるのは、どなたでしょうね。
21
初夜に客間へ追いやられて三か月。幼馴染を優先する夫とは離縁します
初夜、夫は寡婦になった幼馴染を慰めに出かけ、私には客間の鍵を渡した。
「しばらく、ここで待っていてくれ」
あれから三か月。嫁入りの荷も解けないまま、私は夫の帰りを待っていた。
結婚して初めて、二人で夕食を取る約束をした夜。
料理が冷めるまで待った私に、帰宅した夫は、幼馴染の家で食事を済ませたと告げる。
約束を忘れたのではなかった。知ったうえで、彼女を選んだのだ。
「夫を亡くした彼女の前で、私たちが結婚を喜ぶようなことは」
二人で食事をするだけの願いまで、遠慮しなければならないらしい。
翌朝、私は客間の鍵を返し、実家へ帰ることにした。
「それで、次はいつ戻る?」
「戻りません。ディディエ様、私と離縁してください」
離縁後、小さな家を借りた私が頼んだのは、二人で座れる食卓だった。
希望を尋ね、約束の時刻に来てくれる家具職人の青年。彼と話すうち、誰かを食事へ招くのが楽しみになる。
そんな私に、元夫から便りが届く。
『私の分の合鍵を用意しておいてくれ』
もう、この家で誰を迎えるかは私が決める。
夫を待つばかりだった妻が、自分の暮らしと新しい恋を選ぶ物語。
全5話・ハッピーエンド。
22
「北の女は泣かないんだろう?」と夫に言われたので、離縁状を置いて泣ける場所へ行きます
「北の女は泣かないんだろう?」
結婚して三年の記念日。熱を隠して夫との約束を待っていた伯爵夫人リンネアは、幼馴染の発作に呼ばれた夫に、記念日の焼き菓子まで見舞いに持っていかれた。
その言葉を背中で聞くのは、三度目。
リンネアは離縁状を書いて、下町の施療院へ向かう。
「座って。……座ってください」
そこには、二年半前の雨の夜と同じ声があった。
※夫はあとからしっかり後悔します/ハッピーエンド
※全61話・完結まで毎日更新
動画版も10/23の20時より配信開始します。
ペンネームと同名義のYouTube にて視聴できますので、ぜひ遊びに来てくださいね。
(絵と声を生成AIを使って作っています。楽しんでいただける内容だと思っていますが、抵抗のある方にはおすすめできません。)
更新のお知らせは X でしています。
23
嫁ぎ先を交換したわたくしたちは二度とお前らに虐げられない!
バルドー伯爵家の双子姉妹は、顔こそ瓜二つだが、性格も得意分野も正反対だった。
姉のサロメは剣術に優れた勝ち気な令嬢。一方、妹は物腰こそ柔らかいものの、人の心を読み、巧みに立ち回ることを得意としていた。
そんな二人は、それぞれ名門貴族の家に嫁ぐことになる。
姉の嫁ぎ先は、母親の言いなりになる侯爵と、息子を溺愛する姑が支配するマクレ侯爵家。跡継ぎを出産したサロメは、姑に子供を取り上げられた挙げ句、毒殺未遂の濡れ衣を着せられて離れに幽閉され、病に倒れて命を落とした。
一方、妹が嫁いだソワイエ辺境伯家では、暴君の夫と寵愛される愛人が待ち受けていた。やがてできた愛人の子を正妻の子として届け出る陰謀に巻き込まれ、妹もまた悲惨な最期を迎える。
ところが、二人は結婚前に死に戻った。
互いの運命を知った姉妹は、いがみ合うことをやめ、嫁ぎ先を交換することに。
武芸に秀でた姉は、暴力で妻を支配しようとするソワイエ辺境伯のもとへ。
策略に長けた妹は、陰湿な陰謀を巡らせるマクレ侯爵家へ。
嫁ぎ先は今生ばかりは思い知る――今度の花嫁は、決して自分たちの思い通りにはならないということを。
これは、一度目の人生で命も尊厳も奪われた双子姉妹が、互いの仇を討ち、二つの名門貴族家を掌握していく復讐の物語。
※他サイトにも投稿しています。
24
【完結】幼なじみを妻にしたいと仰るなら、どうぞ勅書をお読みください。婚約を命じられたのは侯爵家の嫡男と、私の名でございます
「王命のお相手を、彼女に替えていただけるよう陛下にお願いする」
幼なじみの手を取ったまま、婚約者はそう仰いました。父は「王命だ、我慢しろ」とだけ言い、母は目を伏せました。
ええ、構いません。泣いてすがるつもりも、陛下に申し上げることもございません。
ただ、あの勅書は、読めば分かるように書かれております。
婚約を命じられたのは、侯爵家と伯爵家ではございません。「侯爵家の嫡男」と——私の名です。
名で下された王命は、陛下にしか書き換えられません。そして陛下は、一度下した命を書き換えないお方です。
替えられるのは、私のほうではございませんでした。
今さら勅書を読み返しても、もう遅いのです。
25
【完結】「辺境の娘は要らない」と仰せなら、どうぞ。国境の向こうから毎年届いていた縁談の封を、父が初めて切りました
「辺境の娘は要らない。王太子妃に迎える時代は、もう終わった」
夜会の広間で、殿下はそう仰いました。お隣には、王都育ちの侯爵令嬢。
ええ、承りました。引き留めるつもりも、昔の盟約を持ち出すつもりもございません。私は夜明けに、辺境へ帰ります。
ただ、殿下はご存じないのでしょう。国境の向こうの辺境伯家から、この二十年、毎年同じ縁談が届いていたことを。
父がそれを封も切らずに返し続けてきたのは、辺境伯家の娘は王家に嫁ぐという、古い盟約があったからです。
その婚約をお返しになったのは、殿下のほうでございます。
今年の縁談の封を、父は初めて切りました。
国境の両側がひとつの縁で結ばれる日を、殿下は王都でお聞きになるのでしょう。
※前作の反省を踏まえ、殿下やクラーラの視点のお話も入れて、物語を全面的に書き直しました。以前に公開していた第2話以降は書き直した版に差し替え、王都の宴や辺境の家々のお話も新しく加えています。
26
「妹と結婚するから、君は妹の侍女として一緒に嫁いでくれ」と婚約者に言われました。では、妹の世話役も辞めます
伯爵令嬢エレナは、幼い頃から妹ロザリーの身支度も予定も手紙も整えてきた。
婚約者ヴィクトルと妹が親しくなってからも、二人の予定を合わせ、足りない言葉を補うのはいつもエレナだった。
そんなある日、ヴィクトルから告げられる。
「ロザリーと結婚する。君は妹のことを一番よく分かっているのだから、侍女として一緒に嫁いでくれ」
侯爵邸にはすでに、妹の寝室の隣にエレナ用の侍女部屋まで用意されていた。
妻としてはいらない。
けれど、妹の世話役としては今までどおり働いてほしいらしい。
ならば婚約だけでなく、その役目も終わりにしよう。
「では、妹の世話役も辞めます」
エレナは妹の鍵と予定帳を返し、本当に何もしなくなる。
すると、今まで当然のように分かり合っていたはずのロザリーとヴィクトルの会話が、少しずつ噛み合わなくなっていく。
一方エレナは、隣国使節団で、これまで「妹の世話」だと思っていた能力を初めて仕事として評価される。
そしてそこで出会ったのは、「君なら分かるだろう」と求めるのではなく、エレナ自身に「あなたはどうしたいのですか」と尋ねる男性だった。
27
夫には忘れられない人がいる
「……済まないが、あなたを妻とも家族とも思えない」
クロエが王命で嫁いだその日、書類上の夫は今にも死にそうな目と声でそう言った。
夫の背後にはだいぶ年上の前妻の大きな肖像画。そして間にはおろおろと立つ、肖像画そっくりの半透明の“彼女”が。
「旦那様、憑かれてませんか?」
「ああ、疲れている」
*
“辺境伯”なんて立派なものではない、辺境にあるいち伯爵家。
幼くして両親を亡くしてすぐに結婚した領主・アルバートが、再び妻を失って一年以上。辣腕と名高かった彼は塞ぎこみ、殆ど一人で過ごしているという。
徐々に荒れる耕地に、滞る王家との共同事業。迫る王都の大きな祝祭でも、王へ捧げものをする義務を果たせそうにない。
事態を重く見た国王は、王妃の侍女であり高名な教会の令嬢・クロエを後妻として送り込む。
一年経っても変わらなければ、領主の地位から開放すると彼に約束をして。
妻兼監視役でありながら、葬儀を見慣れているクロエは夫の無気力さに死の気配を感じ取る。
そこに幽霊となった前妻・ローズマリーが度々訴えかけてきて……。
「分かりました、一緒に解決しましょう」
クロエは手帳片手にローズマリーの指さしでヒントを貰いながら、アルバートに生きてもらいたいと願うのだが――。
この作品は他サイトにも掲載しています。
※2万字以内の短編です。
※誤って完結設定のまま公開してしまいました。申し訳ありません。
28
仮面の花嫁を選ぶ舞踏会
子爵家の娘リディアに渡されたのは、婚礼用の白い仮面だった。
後見人の伯父グレイヴ侯爵は、十三歳の弟ノエルの居場所を隠し、王家の舞踏会で名も知らない相手との婚姻簿に署名しろと迫る。弟からの手紙は、目の前で火に近づけられた。
「お前の希望を聞く場ではない」
逆らえば弟がどうなるか分からない。そう思って黙ってきたリディアに、王宮で出会った近衛隊長エドガーは告げる。
「花嫁が断るための場でもある」
その夜、伯父は弟を国外へ移す馬車を手配していた。最後の鐘が鳴るまでに、リディアは自分の名前で返事をしなければならない。
人質にされた弟を取り戻し、望まない結婚を断り、隣を歩く人を自分で選ぶまでの物語。
29
婚約者の浮気相手は、私の刺繍の大ファンでした~婚約は解消しますが、私の作品は返してください~
婚約者が口づけていた令嬢は、私を見るなり目を輝かせた。
「白枝先生? 《冬灯の手袋》の、あの裏糸の始末を考えた方ですか?」
浮気相手は、私の刺繍の大ファンでした。
しかも「婚約は解消した」と騙されていたらしい。
刺繍職人リゼットは、不実な婚約者ロランとの別れを決める。
ところが彼は、彼女の作品を自分の名義で売ろうとし、知らないところで無理な注文まで引き受けていた。
婚約は解消します。けれど、私の名前も作品も、あなたには渡しません。
手を貸してくれる元恋敵は、作品の話になると止まらない。
隣で仕事をする染色職人は、恋の気配にも洗濯試験の話を始めてしまうほど不器用で――。
裏切られた刺繍職人が、仕事の誇りと新しい恋、思いがけない友情を育てていく物語。
全20話、ハッピーエンド。
30
婚約破棄された令嬢は、三日後に国を出る
「承知いたしました。では三日後、私はこの国を離れます」
王宮の華やかな夜会で、王太子レオナルトから突然婚約破棄を告げられた侯爵令嬢ミレイユ。
六年間、王太子の婚約者として彼を支え、王国の外交に尽くしてきた彼女だったが、その功績を認められることはなかった。
新しい恋人を隣に立たせた王太子は、ミレイユを冷たく突き放す。
「お前の代わりなど、いくらでもいる」
しかし、王太子は知らなかった。
隣国との重要な交易協定を陰で支えていたのが、ほかならぬミレイユだったことを。
そして、協定の更新期限が三日後に迫っていることを――。
彼女が去ると決めた翌朝から、王宮では次々と問題が発覚し始める。
外交交渉の停滞、隠されていた書類の不正、そして隣国から届く思いがけない通告。
それでも王太子は、自分の過ちを認めようとしない。
一方、すべてを失ったはずのミレイユのもとには、彼女の本当の価値を知る隣国の若き宰相から、一通の手紙が届いていた。
三日後、彼女が国を去るとき、王太子は何を失ったのかを思い知ることになる。
これは、愛する人に捨てられた一人の令嬢が、自分自身の価値を取り戻し、新たな幸せへと歩き出す物語。
婚約破棄から始まる、三日間の逆転劇。
31
「泣いて縋られても困る」と婚約破棄されたので、仕返しに犬猿の公爵へ求婚したら、恋人役のはずが本気で妬かれました
「君が僕を好きなのは分かっている。でも、泣いて縋られても困る」
別の女性を隣に立たせ、夜会で婚約破棄を告げたフェルナン。
彼は伯爵令嬢レオニーが傷つくことより、自分を追って騒ぎを起こすことを心配していた。
泣くとしても、あなたの前だけはご免だ。
踵を返したレオニーの前にいたのは、顔を合わせれば言い合いになるベルクール公爵だった。
「私と結婚していただけませんか」
思わず口にした求婚を、公爵は笑って受け入れる。
そのまま手を取られ、元婚約者の目の前で踊ることに。
二人きりになって明かした、仕返しのための求婚。
公爵はそれも承知で、三週間後の大夜会まで婚約者を演じると約束した。
手を取るのも、顔を近づけるのも、彼は少しもためらわない。
言い返しても笑って返してくる彼といると、レオニーも言葉を飲まずに笑えた。
ところが、元婚約者を妬かせるために口づけを頼んだ時、公爵は初めて拒む。
恋人のふりなら、あんなに上手だったのに。
どうして、その口づけだけは駄目なのか。
もう一度会いたいと思う理由が、いつの間にか仕返しではなくなっていく。
犬猿の二人が偽の婚約から始める、全6話の恋愛短編。ハッピーエンド。
32
「妻は飾りでよい」と三年間放置されました。夫が愛人の子を跡継ぎにすると言うので、結婚契約書の第七条を読み上げます
伯爵夫人セレスティアは、結婚初夜から三年間、夫アーヴィンに「飾りの妻」として放置されてきた。
父を亡くし、母から継いだルクレール商会を守るために結んだ婚姻。大恋愛ではなかった。それでもセレスティアは、いつか穏やかな夫婦になれるかもしれないと、ほんの少しだけ期待していた。
しかし半年ぶりに屋敷へ戻ったアーヴィンは、婚姻前から隠していた愛人リディアと五歳の息子ノエルを連れていた。
「この子を、オルブライト伯爵家の跡継ぎにする。君は今まで通り、飾りの妻でいればいい」
そう告げられたセレスティアは、静かに婚姻契約書を取り出す。
第七条。
夫が妻の書面同意なく婚外の子を跡継ぎとし、妻の持参財や商会権利をその子の相続財産に含めようとした場合、妻は即時離縁、持参財返還、違約金、資産回収を請求できる。
一か月前、王立契約院の立会人ユリウスに問われて、セレスティアはようやく自分の望みを言葉にした。
愛ではなく、自分の名を取り戻したい。
夫の契約違反が公の場で明らかになる時、飾りと呼ばれた妻は、自分の人生を取り戻す。
33
「水の話はもういい」と夫が言うので、来年の雨の話はしないで離縁します 〜十年つけた水帳は持って出ます。隣の辺境伯は、それを毎朝聞く人でした〜
伯爵夫人セリーヌには、十年続けてきた仕事があった。領内四十二本の井戸と三つの川の水位を毎朝測り、帳面につけ、水門を開ける日を決める「水見」の仕事だ。
けれど夫は言った。「水の話はもういい。夫人の仕事は社交だ」。隣には、隣領から戻ってきた夫の幼馴染が座っていた。
セリーヌは帳面を閉じた。「では、来年の雨の話もしません」
その夜、離縁の書面が届く。彼女は署名し、条件を一つだけ付けた。十年分の水帳は持って出ます、と。夫は「紙くずなら好きにしろ」と笑った。
翌年は、七年に一度の渇きの年。帳面にはそう書いてあった。
行き先は、井戸が七本枯れた北の高地。口の重い辺境伯は、セリーヌを名前ではなく「水見殿」と呼び、彼女が測った数字を一つ残らず聞いた。十年、誰にも聞かれなかった数字を。
元夫から「帳面を持って戻れ」と手紙が来るのは、ハルデンの井戸が枯れてからのことである。
※本編30話+後日談3話で完結済み。毎日3話(6:00/12:00/18:00)更新します。
※本作は生成AIを利用して本文を作成しています。
34
「愛さない」と誓った夫へ。毎夜幼馴染の元へ通っていたようですが本日付で妻を辞退させていただきます〜今まで立て替えた請求書を置いていきますね〜
「君を愛するつもりはない」――結婚初夜、そう言い放った見栄っぱりな伯爵セディック。彼は莫大な借金を隠したままアリアと『白い結婚』を結び、毎夜幼馴染の愛人メリッサのもとへ通い詰めていた。地味と虐げられてきたアリアだったが、実は類まれなる会計・領地経営の天才。夫が愛人に貢ぐ莫大な資金を裏で立て替え、歪んだ財政を支え続けていたのだ。しかし、二人の身勝手さが限界突破した日、アリアは全額の【請求書】と離婚届を置いて姿を消す。残されたのは破滅の一途を辿る愚夫と、新天地で極上の溺愛を受けるアリアの未来だった。
35
【完結】【R18】記憶喪失のシンママですが、恋人を失ったはずの騎士団長が離してくれません
シアは記憶を失いながらも、サバドの町で二歳の息子ヘリオスと暮らしている。シアが失った記憶は、サバドの町に来る前の自身に関するもので、ヘリオスの父親すらわからない。しかしそれ以外の記憶はしっかりとしており、読み書き、剣技は非常に優れていた。その技能を生かし、養護院で子どもたちに勉強や剣術を教えて生計を立てている。ある日、サバドの町に王太子が視察にやってきた。王太子が子どもたちの学習の様子を見学したいと希望したため、普段と同じように子どもたちに指導したシアだが、その日、帰宅しようとしたところ、なぜか近衛騎士団長のジェイラスに呼び止められ――。恋人を失ったはずの騎士団長と、記憶を失った彼女(子持ち)のすれちがいラブロマンス。
※以前、連載していた「記憶を失った女騎士~」のリメイク版です。
※設定を大きく変更しています。
36
死んだはずの姉の身代わりに嫁いだ先で、姉の日記は一年分足りませんでした 〜冷たい旦那様が毎月送る銀貨二十枚の行き先〜
子爵令嬢エリーゼには、三つ年上の姉がいた。二年前に北のヴァルデン伯爵家へ嫁ぎ、一年後に「亡くなった」と知らされた姉だ。
今年の一月、伯爵家から手紙が来た。婚姻の契約の第七条により、妹を後妻に、と。
父は言った。「顔が似ていれば誰でもいい」。
雪の道を北へ。伯爵は出迎えず、初めて会った日に「一年、妻の名でいてもらう。それ以上は求めない」とだけ言った。
姉の部屋には、十二の歳から毎年一冊ずつ付けていた日記が十一冊。嫁いだ年の一冊だけがない。寝台は新しく、暖炉に灰がない。
預けられた家計簿には、毎月十五日に「銀貨二十枚、リム」。二十四行。
これは、死んだ人に送るお金ではない。
五年、実家の帳簿を付けてきた妹は、数字の向こうにいる人を数え始める。
冷たい夫が隠していたのは、姉への愛ではなかった。
※本編32話+後日談3話で完結済み。毎日3話(6:00/12:00/18:00)更新します。
※本作は生成AIを利用して本文を作成しています。
37
愛人の歓迎会費を、妻の私に?――離縁を決めた伯爵夫人は、七歳年下の騎士と恋をする
夫の愛人の歓迎会。その請求書は、妻の私に回されました。
三十四歳の伯爵夫人アデライドは、九年間、自分の財産で夫の社交を支えてきた。
けれど、使用人の食費を削りながら愛人のためには金を求める夫に、最後の迷いが消える。
歓迎会費は払いません。あなたの体面を支えるのも、今期まで。
彼女は屋敷を出て、離縁を申し立てた。
新たに出会ったのは、見栄の寄付を断る七歳年下の騎士ダリオ。
欲しいのは名誉ある記念碑ではなく、怪我人が雨の日にも安全に通れる床だという。
誰かの機嫌を取るために払っていたお金が、誰かの暮らしを支えるものに変わっていく。
そして、不器用な彼と仕事を重ねるうちに、アデライドは気づき始める。
用事がなくても、この人と話していたい、と。
一方、妻が戻ると思い込んでいた夫は、失い始めた後援と信用を取り戻そうとするが――。
もう、支払い続けることで居場所を買わなくていい。
尽くすばかりだった女性の決別と、ゆっくり育つ大人の恋。
38
『縁談に困ったので頼れるお兄様に相談したら、なぜか私が口説かれています』
社交界にデビューしたばかりの伯爵令嬢エレノアに、舞い込んできたのは四件もの縁談。
どれもありがたいお話ではあるけれど、お相手は少々困った方ばかり。
お断りしたい。でも、せっかくのお申し出を断るのは失礼ではないでしょうか……?
悩んだエレノアが相談したのは、幼いころから顔なじみの、頼れるお兄様のような紳士、アレクシス・ローレンツ。
聡明で優しく、ちょっぴり茶目っ気のある彼は、どんな相談にも親身になってくれる。
「困るね」
「はい。困っているんです」
「いや、私が」
……アレクシス様まで、どうして困っていらっしゃるのでしょう?
相談を重ねるうちに、二人でお茶を飲んだり、庭を歩いたり、何でもないことで笑い合ったり。
いつしかエレノアは、相談する用事がなくても、彼に会いたいと思うようになっていた。
けれど、恋をしたことのない彼女には、まだわからない。
尊敬する方を好きなことと、恋をすることは、どう違うのでしょう?
一方、頼れる紳士には、どうやらずっと大切にしてきた想いがあるようで――。
恋を知らないおっとり伯爵令嬢と、一途で甘い年上紳士の、ちょっぴり可笑しくて、とびきり優しい恋のお話。
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異世界恋愛ざまぁ短編集・いろんなヒロインのスカッと話①
【全32作品 完結済】
様々な境遇のヒロインたちがおりなす、スカッとする復讐、因果応報、知略戦などなどのオムニバス短編集です。
どの話から読んでもだいたい1万字前後での完結のためお気軽にさくっと楽しめます。
皆さまの毎日のちょっとした気晴らしのお供にぜひどうぞ。
40
七年会っていない幼馴染が宮廷魔術師になって「私の料理が食べたい」と言っているらしい
料理をすることが何より好きな村娘、ココ。
ある日、彼女のもとへ伯爵家の青年フレイがやってくる。彼が告げたのは、七年前に突然村から出ていった幼馴染・ジェイドのことだった。
村を出たジェイドは、いつの間にか王都で宮廷魔術師になっていた。
けれど研究に没頭するあまり、食事も睡眠もろくに取らず、ついには倒れてしまったらしい。
そんな彼が口にしたのは、
「ココの料理が食べたい」
という一言。
放っておけなくなったココはフレイと共に三ヶ月だけという約束で王都へ向かう。
そして七年ぶりに再会したジェイドは、驚くほど背が高くなり、見違えるほど格好よくなっていた。
……でも、痩せすぎ。
村を出ていく前に交わした「もっと大きくてカッコよくなったら、もっと美味しいものを食べさせてあげる」という約束。
料理好きな村娘と彼女の料理を待っていた宮廷魔術師。
王都で始まる三ヶ月の暮らしが、止まっていた二人の時間を少しずつ動かしていく。