婚活をがんばる枯葉令嬢は薔薇狼の執着にきづかない~なんで溺愛されてるの!?~

白井

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溢れるほどの4

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 薔薇色の瞳に、わずかに寂しそうな光が滲む。
 あなたは知っているはずだと言わんばかりのそれに、ちくりと頭が痛んだ。
 なにかが頭の片隅で存在を主張しているような違和感。
 しかし痛みを辿るまえに、ブリジットの声で思考は途切れてしまった。

「こ~ら! なに考えてるのステラったら。婚約破棄されたと知ったらすぐに男に色目つかって。デリックはまだ寝込んでいるのよ? 姉としてそんなふしだらな行いは見過ごせないわ!」

 ブリジットはハウンドに対して完璧な決め顔になるように角度を調整して立っていた。
 ハウンドを貴族だと思っているのか、模範的な貴族子女らしいことを説教している。

 婚約者がいるのにアピールするほうが『ふしだら』なのではないだろうかとステラは思うが、この家ではブリジットがルールだ。

 ブリジットの手にはステラが来る前に箱から取り出したのであろう宝石がいっぱいだったはずだが背後に押し込めたらしい。

 背後のカウチには品定めしているかのようにドレスが隠しきれずに並べられている。
 たとえハウンドが貴族であったおしてもあのパーティーでブリジットを見ているはずなので、いまさら無意味なのではないかとステラは思う。

「やだぁ、不出来な妹が申し訳ございません。 ええっと……?」

 ハウンドの名前を聞こうと豊かな胸を盛り上げるようにして、上目遣いで促す。
 しかしハウンドはうっすらとした笑みを変えることはなく、名前も言わない。
 母親が咳ばらいをしても気づかないふりをしている。

 あからさまに不自然で失礼な態度だが、ハウンドは悠然と構えていた。
 不思議なことに、そんなハウンドに自然と家主の方が気をつかっている。
 その場の全員から視線を受け、ステラはがっくりと肩を落とした。

「この方はハウンドさんです。困っているところを助けていただきました」

 出会いについては濁したものの、ブリジットから理不尽に睨まれる。

「まあ、ステラがお世話に」

 母親があらあらと手を頬に添えてうっとりと見惚れている。

「ええ。ステラ様にはたいへん良くしていただいております。それでは私は帰りますね」

「えっあっ、じゃ~あ! お見送りだけでもっ」

 ブリジットの猫なで声を無視してハウンドは長い脚で器用に箱をよけながら帰ってしまった。


 
 バーンズ家の舞踏会までの時間はステラにとってはたいへん過ごしやすかった。 
 グレアム家は贈り物を確認して箱を処分する時間に追われて誰もステラに構う時間がなかったのである。
 靴やドレスのサイズは全てステラに合わせられており、ブリジットは『自分のものではない』ことにいちいち面食らっていた。

 (それにしてもすごい量よね)

 遠慮しないとは言っていたが、限度を超えている。
 一応鑑定士を呼んだが、宝飾類はどれも本物だという。
 グレアム家も同じ買い物をしようと思えば出来るのだろうが、それをぽんと他人に渡せるかと言われると無理だ。

(資産を狙う詐欺師だと思っていたけれど、いったい何者なのかしら)   

 「さて……舞踏会へのドレスはどうしようかしら」

 急にあらゆる選択肢が増えてしまい、見比べて迷うのは嬉しい悲鳴だ。
 夜会姿のモデルはブリジットくらいしか知らないのだが、自分がそのまま真似しても滑稽なのはこの間のドレスで身に染みた。

 とりあえず着てみて、自分でも大丈夫なものを探すしかないと思うのだった。
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