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第16幕 新たな決意
08
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***
春休みに突入して早々、悠斗から『助けて』と、可愛らしい泣き顔ワンコスタンプでメッセージが送られてきた。
休み初日は惰眠を貪ろうと計画していたが、メッセージを見るなり飛び起き、寝癖がついたまま俺はお隣へと駆け込んだ。
「早朝からごめん、瀬菜。起こしちゃったよね」
「うん、平気だ」
若干フラフラする俺の頭に悠斗の視線が留まる。
「寝癖……凄いね? ……可愛いけど」
歩くたびに揺れるアホ毛のどこが可愛いのやら。
悠斗と二階に向かい、一つの扉を開けて俺は足を留めた。というより、前に進むことができなかったと言ったほうがいいかもしれない。
そんな俺に、か細く今にも泣きそうな声がかかった。
「せっちゃん、いつもはこうじゃないのよ? ちょっと収集付かなくて。本当に朝早くから呼び出してごめんなさい……」
「そ、そうなんだ……ははは、全然平気。俺、暇だし。それよか美久さん体調悪いんだよね?」
「そうなの。つわりがこんなに大変だとは思わなかった……」
元々細身の美久さんは、ご飯もあまり食べられていないようで、以前よりさらに痩せてしまっていた。そんな訳で暇人の俺が召集されたのである。
おじさんは仕事で、男手が足りないと来たはいいが、俺に重い物など持てるはずもなく、結局大きな家具は義信さんと悠斗が移動していた。
仕方なく俺はおばさんと二人で、細かい作業をすることになった。義信さんの荷物は少いが、美久さんの荷物が鬼のようで、片付けても片付けても次から次へと溢れてくる。片付けついでに、要らない物を選別するのに時間を食った。
床が見えはじめた頃には、すっかり日が暮れてしまっていた。
「はぁ~~……」
「ご苦労さま。疲れたよね」
悠斗が作ってくれたかけ蕎麦をみんなで食べると、あとは自分達で対応すると、義信さんに何度もお礼を言われた。だしの効いた温かい蕎麦が身体に染み込み、疲れが一瞬吹き飛んだ。
それでも悠斗の部屋で寛ぎながら落ち着くと、筋肉が悲鳴をあげ、あちこちが筋肉痛になっていた。
「ん~身体中痛い……」
「俺も。それに、埃っぽいよね」
「だな」
「一緒にシャワー浴びる?」
パッと悠斗に視線を向けると、なんとも嘘くさい笑顔。一瞬肯定しそうになるが、危険を感じゴクンと唾を飲み込み抑え込む。
「……い、や、だ」
「そっか。じゃ行こう」
「なぁ、人の話し聞いてる?」
「うん。ほら、これじゃベッドに入れないでしょ? 瀬菜、寝癖ついたままだし」
「寝癖はもういいだろ⁉ どうせすぐに寝るんだから」
「休みだし、瀬菜夜更かしするでしょ?」
「家出ないから寝癖関係ねぇーし‼」
「俺が気になるから。はい、行くよー」
悠斗の特技の一つ。既読スルーならぬ既言スルーだ。ズルズルと嫌がる俺を引きずり、浴室へと強制送還される俺でした……。
春休みに突入して早々、悠斗から『助けて』と、可愛らしい泣き顔ワンコスタンプでメッセージが送られてきた。
休み初日は惰眠を貪ろうと計画していたが、メッセージを見るなり飛び起き、寝癖がついたまま俺はお隣へと駆け込んだ。
「早朝からごめん、瀬菜。起こしちゃったよね」
「うん、平気だ」
若干フラフラする俺の頭に悠斗の視線が留まる。
「寝癖……凄いね? ……可愛いけど」
歩くたびに揺れるアホ毛のどこが可愛いのやら。
悠斗と二階に向かい、一つの扉を開けて俺は足を留めた。というより、前に進むことができなかったと言ったほうがいいかもしれない。
そんな俺に、か細く今にも泣きそうな声がかかった。
「せっちゃん、いつもはこうじゃないのよ? ちょっと収集付かなくて。本当に朝早くから呼び出してごめんなさい……」
「そ、そうなんだ……ははは、全然平気。俺、暇だし。それよか美久さん体調悪いんだよね?」
「そうなの。つわりがこんなに大変だとは思わなかった……」
元々細身の美久さんは、ご飯もあまり食べられていないようで、以前よりさらに痩せてしまっていた。そんな訳で暇人の俺が召集されたのである。
おじさんは仕事で、男手が足りないと来たはいいが、俺に重い物など持てるはずもなく、結局大きな家具は義信さんと悠斗が移動していた。
仕方なく俺はおばさんと二人で、細かい作業をすることになった。義信さんの荷物は少いが、美久さんの荷物が鬼のようで、片付けても片付けても次から次へと溢れてくる。片付けついでに、要らない物を選別するのに時間を食った。
床が見えはじめた頃には、すっかり日が暮れてしまっていた。
「はぁ~~……」
「ご苦労さま。疲れたよね」
悠斗が作ってくれたかけ蕎麦をみんなで食べると、あとは自分達で対応すると、義信さんに何度もお礼を言われた。だしの効いた温かい蕎麦が身体に染み込み、疲れが一瞬吹き飛んだ。
それでも悠斗の部屋で寛ぎながら落ち着くと、筋肉が悲鳴をあげ、あちこちが筋肉痛になっていた。
「ん~身体中痛い……」
「俺も。それに、埃っぽいよね」
「だな」
「一緒にシャワー浴びる?」
パッと悠斗に視線を向けると、なんとも嘘くさい笑顔。一瞬肯定しそうになるが、危険を感じゴクンと唾を飲み込み抑え込む。
「……い、や、だ」
「そっか。じゃ行こう」
「なぁ、人の話し聞いてる?」
「うん。ほら、これじゃベッドに入れないでしょ? 瀬菜、寝癖ついたままだし」
「寝癖はもういいだろ⁉ どうせすぐに寝るんだから」
「休みだし、瀬菜夜更かしするでしょ?」
「家出ないから寝癖関係ねぇーし‼」
「俺が気になるから。はい、行くよー」
悠斗の特技の一つ。既読スルーならぬ既言スルーだ。ズルズルと嫌がる俺を引きずり、浴室へと強制送還される俺でした……。
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