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13 いいえ、お断りします
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「信じられません…まさか子爵家がそのようなことを…」
「私もはじめは信じられなかった。…が、間者を送って調べてみたりもしたのだが、子爵家が帝国と何かしらの関係を持っているのは確定だ。だが、なかなか証拠が出ない。それで子爵家のガーネットに目をつけた」
殿下は苦しそうに私を見つめ、私をいたわるような仕草で手をとった。
「リリア、私はガーネットと体の関係を持ったことは一度も無い。毎晩、酒に自白剤を混ぜて飲ませて子爵家について知っていることを話させていただけなのだ。だからどうか、婚約を継続してくれないだろうか?」
「は…?じ、自白剤?」
私は殿下の追い詰められたような表情を見つめた。殿下がガーネット様と関係を持っていなかった。それは私にとって喜ぶべきことのはずなのに、驚くほどそんな感情は湧いてこない。それより、目の前の人が自白剤を毎晩仮にも自分の側室に使っていた、そのことの衝撃が大きすぎる。
「自白剤って…じゃあ、私があんなに苦しんだのは何だったんですか?寵愛がない婚約者として王城で虐げられていたのは何だったんですか?」
声が震える。自分の心臓の音がうるさくて周りの音が聞こえない。
「それは…ガーネットに自白剤のことを知られないようにするためには、そういうことにしておかないとだめだったんだ…。リリア、全て解決したら皆に本当のことを話す。そしてあなたの信頼を回復する。だからそれまで待ってくれ」
「お断りします」
反射的に固い声でそう答えてしまっていた。殿下が目を丸くする。
「全て解決したら皆に話す?それっていつになるんですか?このまま子爵家のことが明らかにならなければ、私はずっと王城で肩身の狭い思いをしなくちゃだめってことですよね?」
「すまない…王城の者たちには、そなたに当たらないようにと言っていたのだが…」
「それは初耳でしたわ。殿下がご命令されているのかとすら疑っておりました」
殿下は途端に青くなって頭を下げる。そこまで私が自分を疑っていたとは想わなかったのだろう。
「…本当にすまない!謝って済むことではないが…」
「もういいのです。殿下は結局ご自分のことしか考えていらっしゃらない…私は幼い頃より王太子妃になるのだと言われ、自分でもそう思って努力して参りましたが、正直これ以上は耐えられません。もう、終わりにしましょう?殿下」
「……!リ、リリア…」
「そうね、もう限界でしょう」
そういって口を挟んだのはお母様だった。
「あなたが王城で蔑ろにされているときいて、私とお父様は殿下にお会いしに行ったのよ。一体どうなっているんですかとね。そうしたら、殿下は今の話を教えてくださったの。これはすぐに解決することだ、だから待ってくれ、ってね。そのお言葉を信じて今までリリアには何も言いませんでした。ですがその時から今まで、全く状況が変わっていないようにお見受けします。これはどういうことでしょうか?ここまで娘を軽んじられて、これ以上黙ってはいられません」
「…っ!」
お母様の剣幕に押され、殿下は押し黙る。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
「―――――…殿下、アドルフ皇太子殿下!」
窓の外を覗いていた青年は、後ろからかけられた声に振り返った。青年の軍服の胸には、帝国皇太子であることを証明する龍の紋章が描かれている。青年の視線の先には、彼の部下が息を切らして立っていた。それを見て皇太子は口角を上げる。
「さて、もうすぐ会えそうだね、リリア?」
「私もはじめは信じられなかった。…が、間者を送って調べてみたりもしたのだが、子爵家が帝国と何かしらの関係を持っているのは確定だ。だが、なかなか証拠が出ない。それで子爵家のガーネットに目をつけた」
殿下は苦しそうに私を見つめ、私をいたわるような仕草で手をとった。
「リリア、私はガーネットと体の関係を持ったことは一度も無い。毎晩、酒に自白剤を混ぜて飲ませて子爵家について知っていることを話させていただけなのだ。だからどうか、婚約を継続してくれないだろうか?」
「は…?じ、自白剤?」
私は殿下の追い詰められたような表情を見つめた。殿下がガーネット様と関係を持っていなかった。それは私にとって喜ぶべきことのはずなのに、驚くほどそんな感情は湧いてこない。それより、目の前の人が自白剤を毎晩仮にも自分の側室に使っていた、そのことの衝撃が大きすぎる。
「自白剤って…じゃあ、私があんなに苦しんだのは何だったんですか?寵愛がない婚約者として王城で虐げられていたのは何だったんですか?」
声が震える。自分の心臓の音がうるさくて周りの音が聞こえない。
「それは…ガーネットに自白剤のことを知られないようにするためには、そういうことにしておかないとだめだったんだ…。リリア、全て解決したら皆に本当のことを話す。そしてあなたの信頼を回復する。だからそれまで待ってくれ」
「お断りします」
反射的に固い声でそう答えてしまっていた。殿下が目を丸くする。
「全て解決したら皆に話す?それっていつになるんですか?このまま子爵家のことが明らかにならなければ、私はずっと王城で肩身の狭い思いをしなくちゃだめってことですよね?」
「すまない…王城の者たちには、そなたに当たらないようにと言っていたのだが…」
「それは初耳でしたわ。殿下がご命令されているのかとすら疑っておりました」
殿下は途端に青くなって頭を下げる。そこまで私が自分を疑っていたとは想わなかったのだろう。
「…本当にすまない!謝って済むことではないが…」
「もういいのです。殿下は結局ご自分のことしか考えていらっしゃらない…私は幼い頃より王太子妃になるのだと言われ、自分でもそう思って努力して参りましたが、正直これ以上は耐えられません。もう、終わりにしましょう?殿下」
「……!リ、リリア…」
「そうね、もう限界でしょう」
そういって口を挟んだのはお母様だった。
「あなたが王城で蔑ろにされているときいて、私とお父様は殿下にお会いしに行ったのよ。一体どうなっているんですかとね。そうしたら、殿下は今の話を教えてくださったの。これはすぐに解決することだ、だから待ってくれ、ってね。そのお言葉を信じて今までリリアには何も言いませんでした。ですがその時から今まで、全く状況が変わっていないようにお見受けします。これはどういうことでしょうか?ここまで娘を軽んじられて、これ以上黙ってはいられません」
「…っ!」
お母様の剣幕に押され、殿下は押し黙る。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
「―――――…殿下、アドルフ皇太子殿下!」
窓の外を覗いていた青年は、後ろからかけられた声に振り返った。青年の軍服の胸には、帝国皇太子であることを証明する龍の紋章が描かれている。青年の視線の先には、彼の部下が息を切らして立っていた。それを見て皇太子は口角を上げる。
「さて、もうすぐ会えそうだね、リリア?」
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