【完結】二度目の人生、君ともう一度!〜彼女を守りたいだけなのに〜

トト

文字の大きさ
50 / 147
第一章 出会いからもう一度

そうして僕らは……

しおりを挟む
「うわっ!びっくりした!」

 訓練から帰ってきたキールは部屋の明かりをつけるなり、机に突っ伏しているユアンに気が付き、驚きの声を上げた。

「ど、どうしたんだよ。今日はケーキバイキングに行ってきたんじゃなかったのか?」

 尋常でないユアンのありさまに、怖いもの知らずのキールさえ恐る恐る声をかける。

「これ、お土産」

 いきなり突きつけられた紙袋に、思わずキールが一歩後ろに飛ぶ。

「あっ、ありがとう」

 慎重にそれを受け取ると、

「何があったんだよ。ケーキ食べれなかったのか?」

 子供をあやす父親のような優しい声音で尋ねる。

「おいしかった」

 初めこそ緊張で味もなにもわからなかったが、後半は結構しっかり味わっていた。

「楽しくなかったのか?」
「楽しかった」

 ならなぜ?キールの戸惑いもごもっともである。

「僕は、臆病者な、チキンヤローだ!」

 いうなりガッとキールの胸に飛びつく。そんなユアンをしっかり抱きとめながら、キールもとりあえず背中をやさしくトントンと叩く。

「なにがあったかはわからないが。ユアンはチキンヤローなんかじゃないさ。それは俺が保証する」

 幼馴染とはいえキールは自分に甘すぎる。とユアンは思う。

(でも今日だけはその甘えを存分にいただこう)


 ──数時間前。メアリーとの帰り道。

 感謝の言葉を向けるメアリーと目が合った瞬間、これはチャンスなんじゃないかとそう思った。

「メアリーさん──!」

 付き合ってください。と言おうとしたわずかな間にユアンの脳がフル回転した。

 もし、振られたら!?
 クラブ活動気まずくならないか?
 感謝と好意は別物だぞ!
 この間、何一ついいところ見せていないと自分でいっていたばかりじゃないか!
 これからいい男になって、メアリーを惚れさせるんじゃなかったのか!
 早まるな、まだ早い!
 来年別々の学部塔になったら挽回する機会なんてなくなるず、今は慎重にクラブ活動で自分の魅力をアピールしてからでも遅くはない!

 一瞬の迷いだった。しかしその一瞬がユアンの勢い任せの告白に急ブレーキをかけた。

「どうしました、ユアン様?」

 若草色の瞳が問いかける。

「メアリーさんならきっと大丈夫です。きっとりっぱな回復魔法士にだってなれますよ」
 
 若草色の瞳を見つめ返しながらゆっくりとでも力強く言葉にする。それは本当に思っていたことなので、ちょっと初めの勢いとはニュアンスが違っていたかもしれないが、それでも嘘偽りない言葉として届いたに違いない。

「なんてったって、魔術大会優勝者のアレクさんが直接指導してくれているんですよ。それに本当に魔具研で魔法石に込める魔力量も増えてきているじゃないですか」

 アスタが毎日部員の魔力量を計測しているが、もともと魔力量の多いアレクは訓練してもほとんど変わらないのに対し、魔力の少なかったメアリーは少しづつではあるが、確実にその量を増やしていっていた。
 それに伴い魔法の威力も増していっているのがしっかりと数値として表れている。

「本当にそう思いますか」
「えぇ、来年魔法学部でさらにちゃんとした指導を受ければ、きっとメアリーさんは魔法使いだろうが、回復魔法士だろうが、きっとあなたがなりたいものになれますよ」

 隠すように口元を手で覆いながら、その瞳が嬉しそうに細めらる。

「ユアン様にそう言ってもらえたら、なんだか私もできそうな気がしてきました」
「メアリーさんなら大丈夫です。自信をもって頑張ってください」
「ありがとうございます。私頑張ります」

 未来を夢見て瞳を輝かすメアリーを見ながら、ユアンは今回はこの流れで間違っていなかったとそう確信した。ただ──
 
「メアリーさん」
「なんですか?」
「来年、魔法学部と行政学部、学部も塔も違ってしまいます」

 何を言いたいのかわからないと言いうように、メアリーが首をかしげる。

「素敵な出会いもあるかもしれません。でもこれからも僕たちはずっと魔具研の仲間です。だから、これからも良いお友達として、末永くよろしくお願いします!」

 真っ赤な顔でそういうユアンにメアリーはちょっとびっくりした様子だったが、すぐに「あたりまえじゃないですか。こちらこそ、よろしくお願いします」と、言って満面の笑みを向ける。
 その頬もユアン同様少し赤らんで見えたのは夕焼けに照らされただけのせいなのか。

(メアリー)

 キラキラ輝く可愛らしいメアリーの顔が脳裏に浮かぶ──


「それでも、一歩前進したんだよな」
「あぁ、そうだな」

 抱きついたまま押し黙っているユアンがようやく呟いた一言に、話が全く見えないがとりあえずキールが同意する。
 
 もうすぐ一学年が終わろうとしている時期のことである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

「わざわざ始まるまでまたないで、今のうちに手を打ったってよくない?」

イチイ アキラ
恋愛
アスター公爵令嬢エステルは、夢をみる。それは先を映す夢。 ある日、夢をみた。 この国の未来を。 それをアルフレッド王太子に相談する。彼女を愛して止まない婚約者に。 彼は言う。 愛する君とぼくの国のためなら、未来を変えるのも仕方なくない?

処理中です...