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第三章 告白をもう一度
ピンクの花びらが舞う季節
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「メアリーさん」
「あっ、お茶持ってきますね」
「メアリーさん」
「いけない茶葉いれてないわ」
「あの?メアリーさん?」
「そうだクッキーを、大変私教室に置いてきてしまったみたいです」
そういうとメアリーは一目散に部室を飛び出していった。
ダンスパーティーでの事件の後。メアリーとユアンはもちろん魔具研のメンバーは全員事情聴取のため王宮に集められた。
事情聴取といっても、こっちは被害者で仕掛けられたことに関して反撃しただけなので、特に陰謀を企てているという疑いなどもなくその日のうちに解放された。
そしてユアンと戦った三人の生徒もその後闇魔法で洗脳に近い暗示がかけられえていたことがわかった。
ちなみにユアンが魔法石を使って魔法を使ったという事実は隠密部隊により今回は闇に葬り去られた。
メアリーを助け出したのはあくまでレイモンドの隠密部隊によるものとされている。
そしてユアンは初めての戦闘によるストレスと魔法石の使いすぎによる反動からか、その後倒れてしまい、自宅療養のまま学園後期の終了を迎えることになった。
もちろん先輩たちの卒業式も参加することはできず、誰に会うこともなく長期休暇を終えそのまま新学期を迎えたのだった。
そしてあの日ボロボロになったため一から作り直された部室に、初めて足を踏み入れたユアンだったが、久々の再開だというのに挨拶もそこそこにメアリーのあの様子である。
「あの、マリーさんメアリーさんはいったい」
言わなくてもわかってますとばかりに手で制する。
「朝から落ち着かないと思っていましたが」
ローズマリーも朝からメアリーがいつになく落ち着きがないことには気が付いていた。まああんなことがあった後だし、久々の学園で落ち着かないのかしらぐらいに考えていた。しかし、ユアンに対するメアリー態度を見てローズマリーは言い切った。
「ユアン様!メアリーにいったい何をしたんですか」
「いや、僕はなにも」
しどろもどろに答えるが本当に心当たりなどない。
「でも明らかにおかしいですわ、特にユアン様に対して」
ビシリと指をさす。
「わかりませんよ。僕だってあれから会うの初めてなんですから。だからマリーさんに尋ねてるんじゃないですか」
二人で首を傾げる。
「違うだろあれは”あれ”だ」
いつからいたのか、いや初めからいたのだが、全く存在感を消していたアスタがクッキーを食べながらぼそりと呟いた。
「あれアスタ先輩、なぜここに」
「研究生になったら元部活に顔をだしちゃいけないのか?」
「いやそういうわけじゃないんですが……」
魔術の研究生として選ばれた学生は、学園内の研究塔に席を置くことができる。なので同じ学園内にいるのだから、この部室に来てもおかしくはないのだけれど。
(研究生はすごく忙しいと聞いていたんだけど)
新学期初日だというのに、やる気のなさそうな気怠そうなアスタを見てユアンが首を傾げる。
「はぁ、アンリがいない学園生活なんて、なんて空しいんだ……」
しかし次の瞬間そうため息をつくアスタを見て納得する。
「ところで、アスタ先輩はなにを召し上がっているのですか?」
ローズマリーがじっとアスタを見ながら問う。
「あぁ、このクッキーなら初めからここに置いてあったぞ、たぶんメアリー嬢の手作りだろう」
「えっ?」
ユアンとローズマリーが同時にメアリーが飛び出していった扉を見る。
今頃見つかるはずのないクッキーをメアリーは探しているのだろう。
「僕、メアリーさんにクッキーがあったこと教えにいってきます」
ユアンはそういうと部室を飛び出した。
「よろしくお願いするわ」
その背中にローズマリーが声をかけた。
「それより、”あれ”とはなんですの?」
ロースマリーがアスタの方に向き直すと再び問いただす。
「メアリーがなぜあのような状態になっているのか、アスタ先輩にはわかってますの?」
チラリとローズマリーを一瞥する。
「だからあれは”あれ”だ」
「だからなんですの?」
「春だね~てことさ」
「そんなことはわかってます」
窓の外にはピンク色の春の花びらが舞う季節。
ユアンとメアリーが出ていった部室で、ローズマリーとアスタの決してかみ合うことのない押し問答がしばらく続くのであった。
「あっ、お茶持ってきますね」
「メアリーさん」
「いけない茶葉いれてないわ」
「あの?メアリーさん?」
「そうだクッキーを、大変私教室に置いてきてしまったみたいです」
そういうとメアリーは一目散に部室を飛び出していった。
ダンスパーティーでの事件の後。メアリーとユアンはもちろん魔具研のメンバーは全員事情聴取のため王宮に集められた。
事情聴取といっても、こっちは被害者で仕掛けられたことに関して反撃しただけなので、特に陰謀を企てているという疑いなどもなくその日のうちに解放された。
そしてユアンと戦った三人の生徒もその後闇魔法で洗脳に近い暗示がかけられえていたことがわかった。
ちなみにユアンが魔法石を使って魔法を使ったという事実は隠密部隊により今回は闇に葬り去られた。
メアリーを助け出したのはあくまでレイモンドの隠密部隊によるものとされている。
そしてユアンは初めての戦闘によるストレスと魔法石の使いすぎによる反動からか、その後倒れてしまい、自宅療養のまま学園後期の終了を迎えることになった。
もちろん先輩たちの卒業式も参加することはできず、誰に会うこともなく長期休暇を終えそのまま新学期を迎えたのだった。
そしてあの日ボロボロになったため一から作り直された部室に、初めて足を踏み入れたユアンだったが、久々の再開だというのに挨拶もそこそこにメアリーのあの様子である。
「あの、マリーさんメアリーさんはいったい」
言わなくてもわかってますとばかりに手で制する。
「朝から落ち着かないと思っていましたが」
ローズマリーも朝からメアリーがいつになく落ち着きがないことには気が付いていた。まああんなことがあった後だし、久々の学園で落ち着かないのかしらぐらいに考えていた。しかし、ユアンに対するメアリー態度を見てローズマリーは言い切った。
「ユアン様!メアリーにいったい何をしたんですか」
「いや、僕はなにも」
しどろもどろに答えるが本当に心当たりなどない。
「でも明らかにおかしいですわ、特にユアン様に対して」
ビシリと指をさす。
「わかりませんよ。僕だってあれから会うの初めてなんですから。だからマリーさんに尋ねてるんじゃないですか」
二人で首を傾げる。
「違うだろあれは”あれ”だ」
いつからいたのか、いや初めからいたのだが、全く存在感を消していたアスタがクッキーを食べながらぼそりと呟いた。
「あれアスタ先輩、なぜここに」
「研究生になったら元部活に顔をだしちゃいけないのか?」
「いやそういうわけじゃないんですが……」
魔術の研究生として選ばれた学生は、学園内の研究塔に席を置くことができる。なので同じ学園内にいるのだから、この部室に来てもおかしくはないのだけれど。
(研究生はすごく忙しいと聞いていたんだけど)
新学期初日だというのに、やる気のなさそうな気怠そうなアスタを見てユアンが首を傾げる。
「はぁ、アンリがいない学園生活なんて、なんて空しいんだ……」
しかし次の瞬間そうため息をつくアスタを見て納得する。
「ところで、アスタ先輩はなにを召し上がっているのですか?」
ローズマリーがじっとアスタを見ながら問う。
「あぁ、このクッキーなら初めからここに置いてあったぞ、たぶんメアリー嬢の手作りだろう」
「えっ?」
ユアンとローズマリーが同時にメアリーが飛び出していった扉を見る。
今頃見つかるはずのないクッキーをメアリーは探しているのだろう。
「僕、メアリーさんにクッキーがあったこと教えにいってきます」
ユアンはそういうと部室を飛び出した。
「よろしくお願いするわ」
その背中にローズマリーが声をかけた。
「それより、”あれ”とはなんですの?」
ロースマリーがアスタの方に向き直すと再び問いただす。
「メアリーがなぜあのような状態になっているのか、アスタ先輩にはわかってますの?」
チラリとローズマリーを一瞥する。
「だからあれは”あれ”だ」
「だからなんですの?」
「春だね~てことさ」
「そんなことはわかってます」
窓の外にはピンク色の春の花びらが舞う季節。
ユアンとメアリーが出ていった部室で、ローズマリーとアスタの決してかみ合うことのない押し問答がしばらく続くのであった。
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