あなたにお仕えするのが、仕事なのですが <選ばれし神官、違う覚悟が必要だった>

樫村 和

文字の大きさ
4 / 11
第一部

第三章 アイルとアイロ

しおりを挟む
 デュアが、一体、どうするんだという目でバサルの顔を見上げている。
 バサルも渋い顔だ。分かっている。バサルが悪い。
 
 恐ろしい夢を見た。あまりの恐ろしさに、起きた瞬間、寝台の下に飛び込むという子供みたいなことまでした。しかも、夢だと気が付いたのに、寝台の下から出るのにもしばらくかかった。

 絶対に人に見られたくない姿だ。

 二十歳すぎている男の大人がすることではない。だが、あの夢はそれほど恐ろしかった。どうにか寝台の下から這い出ても、しばし、放心状態だった。

 夢が何を示唆するかなど知らない。ただ、あの黒髪の少年の事だけがひどく気になった。
 
 あれはいったい誰だ?

 会った事もない。それに、言葉がわからなかった。異国の民かもしれない。真面目に考えようとする反面、夢だろうという自分もいる。

 そう、たかが夢。

 昨日、いろんなことがあった。そして、久しぶりに酒も飲んだ。酔いが回っておかしな夢を見ることなど、騎士団にいうた時もなかった話ではない。

 そう、たかが夢だ。

 半ば無理やり自分の中にまだ残る夢に対する恐怖をねじ伏せた。もし、どうしても気になるようであれば、デュアに聞けばいい。

 そうだ。

 デュアに聞けばいい。そう思い、慌てて身支度をすませ、部屋を飛び出した。
 昨夜、食事を取った部屋を覗いたが、まだ、誰もおらず、今度は調理場に向かう。

 そこで、バサルは、今、一番見たくない物を見た。

「あ、おはようございます」

 アイルが朝日の中でにこやかにバサルを振り返り笑う。その両手に子供一人なら入れられそうなでかい鍋。

 バサルは自分でも、信じられないほど大きな叫び声をあげ、アイルの手からその鍋をひったくった。

 アイルもあまりの事に悲鳴を上げた。バサルはひったくった鍋の中が空だと分かった瞬間、その場に崩れ落ちた。鍋が床に落ちて転がりすごい音を立てる。

 心臓に悪すぎる。

 二人の叫び声と大きな音に、当たり前だが、皆がすっ飛んでくる。だが、見た物は転がった大きな鍋と床にへたり込んでいるバサルとその前で固まっているアイルだ。

 皆も、しばらく調理場に入ることができなかった。

 ◇

 アイルはアイが外に連れ出した。アイルはあんまりだわと顔を覆い泣きじゃくっていた。それはそうだろう。いきなり調理場に飛び込んできたバサルに鍋をひったくられたのだ。

「わ、私っ!た、だっ、鍋をっ!」

 そう。アイルはただ、邪魔だった大きな鍋を片付けようとしていただけだった。デュアも床にへたり込んだバサルの隣でなぜ、そこまで大騒ぎになった?と不思議そうだ。

 バサルに言えるはずがない。

 アイルが少年の生首を鍋に入れようとした夢を見たなど。

 違う意味で、さらにアイルが泣く。下手すれば、一生、口をきいてもらえなくなる。いや、怖がられる。いや、実はもう、バサルはアイルが少し怖い。

 バサルも両手で顔を覆い荒い息を繰り返す。立ち上がれないほど恐ろしかった。

「朝から騒がしい」

 コツコツと杖を突きながらマヌーサが調理場に入ってきて顔を顰める。デュアも真面目な顔ですごかったわと頷く。

「別に食べられない物を作るわけじゃないのよ?まずいだけで」

 いや、もう、そういう問題じゃない。アイルが何かを作るということ自体が恐ろしい。

「あの鍋が問題だったのかい?」

 マヌーサが杖の先で床に転がっている鍋を指す。いや、鍋が問題でもない。いや、鍋も怖いのか。

 アイルと鍋がセットで怖い。

「……俺が、飯を作る」

 アイルが鍋の側にいなければいい。できる事なら、アイルを調理場に入れたくない。

「でも、あんた……」

 デュアの言いたい事もわかる。昨日、デュアはバサルに役目があると言った。だが、バサルもそれどころじゃない。

「その、なんか来るのも、今日、明日っていうわけじゃないんだろ?」
「まぁ……多分」

 デュアが考えながら言う。デュアもよくわからないという顔だ。なら、とようやくバサルが顔から手を放した。

「俺がここにいる間、俺が飯を作る」

 異論は認めん。デュアがマヌーサを見る。マヌーサはどちらでもと肩を竦める。だが、それでもとデュアはバサルを真面目な顔で見た。

「あんたはアイに謝った方がいいと思う」

 異論があるはずがなかった。

 ◇

 アイルが食堂のテーブルに腰かけ、目の前に並んだ皿に目を見開く。

「これが、朝食によく出る卵料理だ」

 バサルはデュアにアイルとアイを呼びに行ってもらっているうちに、調理場で朝食を山のようにこしらえた。

 主に卵料理だが。

「こちらから、ゆで卵、目玉焼き、オムレツ……これらは、卵だけでできる」

 アイルの手元には紙がある。バサルが、書けとペンを差し出すと、かりかりと書き始めた。デュアがなるほどねぇと感心したように、二人を眺めている。アイはアイルの後ろからメモを覗き込んでいる。

「味はどうするんですか?」

 アイルがメモから顔を上げて聞く。先程まで、東屋で泣いていたらしいが、どうにか、気を取り直してくれたらしい。

 バサルがテーブルの上に、岩塩の砕いたものと、香辛料を置く。

「舐める」
「へ?」

 舐めると言われて、アイルがきょとんとする。その顔を真面目にバサルが見る。

「人それぞれ味覚が違う。感じ方もだ。まず、調味料が手に入ったら、自分で舐める。塩がしょっぱいのは知っているだろうが、これは舐めたことがあるか?」

 香辛料を指さすと、アイルは首を横に振った。そんなもんだ。

「ぴりっとするのよ」

 デュアの方が知っている。そして、自分でも香辛料が入った皿に指をちょんとつけ、ぺろと舐めた。軽く顔を顰める。

「味付けは最低限でいい。こっちにも調味料を揃えておけば、自分で好きな味にできるが……」
「……調味料の味を知らないとそれも駄目ですね」

 ん、とバサルが頷く。そして、後ろを振り向き、どうですか?とソロがかき混ぜていたボールを受け取る。

「それは?」
「これも、卵からできている」

 卵の黄身に油と酸味が強い果物の汁を入れ、丁寧にかき混ぜたものだ。アイルはそれも卵ですかと目を丸くしている。

「卵一つでも、色々作れる」

 バサルはそう言って、アイルの前にソロが混ぜた卵ソースを出した。舐めると言われ、慌ててまた、アイルが舐め、目を見開く。

「おいしっ!」
「私も!」

 デュアも指をボールに突っ込み、目を見開いた。

「ソロ!すごい!」

 ソロが照れたように、ははと笑う。バサルもまさかソロが料理ができるとは思ってもいなかった。ソロの生まれ育った場所でよく食卓に出た料理らしい。海の近くの町で茹でた野菜や魚に付け、食べたそうだ。

「そんで、こんだけ卵料理を並べてどうすんだい?」

 マヌーサが顔を顰めて言う。それはそうだ。テーブルの上が卵料理だらけだ。バサルがにやっと口端を上げて笑う。

「挟むんだ」

 そう言って、パンをテーブルの上に乗せた。

 ◇

 アイがパンを丁寧に切った。それにデュアが卵ソースを塗る。あとはもう好きな物を挟んで食べる。

「ほら」

 バサルが調理場から野菜も持ってくる。アイルが野菜を卵ソースを塗ったパンに乗せ、迷った挙句、目玉焼きを乗せる。

「おい、し」

 デュアはオムレツと葉物野菜だ。もっ、もっと口を一杯に膨らませ、幸せそうに食べている。だが、マヌーサはしかめっ面だ。

「ああ……こぼして」
「きゃ」

 アイが目玉焼きを潰してしまい、慌てて垂れた黄身を手拭いで拭く。マヌーサの顔がさらにしかめっ面になる。

「行儀はよくはないわな」

 くくっと笑ったバサルがそうだったと慌てて調理場に戻る。ふわんと香ばしい香りがして、皆がそちらを見る。バサルが皿に何かを持ってきた。

「ほらよ」

 デュアが歓声を上げる。マヌーサも口を尖らせた。どうやら、機嫌が良ければそういう顔になるらしい。分かりにくいが喜んでいるらしい。皿の上にある物は、昨日の干し肉を薄くそぎ焼いたものだ。

「まあ、焼いただけだから、少し獣臭いが」

 アイルがそう気になりませんと首を横に振る。その肉の上に何も考えずにテーブルにあった塩をかけようとするのを見て、バサルが止める。

「まず、舐める」
「え?これもですか?」

 食材の味を覚えるためには必要な事だ。バサルが頷くとアイルは真面目な顔で焼いた肉を舐め……少し顔を顰めた。

「しょっぱい」
「干し肉だもの」

 当たり前でしょう?と首を傾げるデュアに、そうなんですかとアイルが肩を落とす。しょっぱい干し肉にさらに塩をかけようとしたのだと、ようやく気が付いたらしい。

「アイル」
「はい」

 元気をなくしたアイルにバサルがアイルの前の皿を指さす。アイルが自分で組み合わせた卵と葉物野菜がパンの上に乗っかっている。

「それ、うまいだろ?」
「……はい」

 なぜか、しぶしぶとアイルが頷く。くくっとバサルが笑いながら、そうだろうと頷く。

「すごく簡単だろ?」
「……はい」

 悔しそうだ。

「朝はそんなもんでいい」

 そうなのだろうかという顔でアイルがデュアを見る。デュアは十分よと真面目な顔で頷く。

「で、野菜の方は頼む。火はまだ使ったら駄目だ」
「駄目……ですか」

 なぜ駄目なんだろうという顔でバサルを見るアイルに、バサルが真面目に言う。

「料理が下手な奴は火が点いているだけで慌てるんだ。焦げないかどうか気にしているうちに、生焼けだったり、味付けがおかしかったりする」

 思い当たるのだろう。アイルがはいと言いながら、肩を落とす。だからとバサルが胸を張って言う。

「俺がこちらにいる間、俺が料理を作るから、それで覚えろ」
「……はいっ!」

 デュアがうまい事言ったわねぇという顔で、干し肉も挟んだパンを食べる。アイルは機嫌がすっかり直ったのか、元気よく食べ始めた。
 だが、今度はアイが元気をなくした。アイがぐすっと鼻まですする。今度は、なんだと皆がそちらを見る。マヌーサがじろりとバサルを見た。

「どうした?」
「アイルと言ったね?」

 あ……とバサルとアイルが口を押える。アイがずるいと呟き、肩を震わす。

「お姉様ばかり!いつも、ずるい!」

 今度はアイが部屋を飛び出していった。

 ◇

 姉妹喧嘩勃発。

 だが、これは……バサルがデュアに事の次第を話すしかない。二人が両方ともアイと呼ばれていたことは知っていたが、昨日、バサルが混乱しないように片方のアイ(姉)にアイルと付けさせてもらったのだ。
 その時に、アイルからはきちんとデュアがいるから、皆の前では『アイ』と呼ぶようにとは言われていたことも話した。
 話を聞いたデュアの方が目を丸くしている。マヌーサはもう、知らんと食堂を出て行った。ソロは食後のお茶を美味しそうに飲んでいる。

「そんなこと、気にしてたの」

 デュアがしょぼくれたアイルに向かい、あきれたという顔をする。だが、自分に気を遣っていたとなると何も言えないのだろう。柔らかい褐色の髪を後ろに払いながら、考え込んでいる。

「私は、あまり名前に頓着しなかったから……」
「デュアになる前の名前もあったろう?」
「……んー」

 あったんだけど……とデュアが可愛い鼻の頭を掻く。

「物心ついた時には、自分はデュアだと分かっていたから、そっちの名前で呼ばれる方が変な感じだったの」

 へぇとバサルが頷く。五歳の頃にはもう、デュアの記憶かなんかがあったという事なのだろう。

「だって、私が神殿に早く迎えに来いって手紙書いたんだもの」

 んっ?!と今度はソロを見る。ソロがその通りだと頷く。

「子供の字で、早く来てくださいと書簡が届いた。デュア様が山から下りて町に初めて来た時に、町にあった神殿に駆け込んだらしい。まあ、最初は子供のたわごとかと聞かなかったらしいが……」
「……まぁ、そうでしょうね」

 駆けこまれた神殿の神官も驚いたことだろう。自分がデュアだと名乗る少女がいきなり来られても……。

「あんまり話を聞いてくれなかったものだから、頭にきて聖伝を最初から唱ってやったわ。聖伝全部やってやろうかと思ったんだから」

 バサルも目を見開く。聖伝とデュアは軽く言ったが、聖伝は神職だけが知る唱だ。なるほどとバサルが感心して頷く。五歳の子供が神殿にいたとしても、聖伝など知らぬだろう。

「それは良い手だ」
「でしょう」

 にまとデュアが笑う。おそらく今までも神殿からの迎えが遅い時など、使っていた手なのだろう。確かに手っ取り早い。

「あのぉ……」

 アイルが恐る恐る話に入ってくる。だったと、バサル達がアイルを見る。

「もし……その、デュア様がよろしければ」
「あ、構わないわよ。ええと、あなたがアイルで……あっちは?」
「アイロです」

 本当の名前か?とソロが尋ねると、はいとアイルが頷く。そして、右腕のブレスレットを差し出す。

「私達の生まれた所では、右を『ル』左を『ロ』というので」
「……もしかして、ご両親もわからなかった?」

 デュアが聞くと、アイルが少し寂しそうに、はいと頷く。だから、目印を付けたのだろう。

「アイロ、呼んでらっしゃい。でも、多分、マヌーサは『アイ』って呼ぶわよ?」
「はいっ!」

 アイルがすっ飛んでいった。

 ◇

 バサルが改めて食堂に集まった人間を見る。

 大神官 デュア・シュセリ。
 神官長 ソロ・ボツウル。
 大神官の従者 アイル(姉)アイロ(妹)

 あと、また、どこかへ消えたマヌーサ。

「この広い神殿にこれだけなのか?」

 いや、ソロは神殿から来ているから、普通は四人か。デュアがそうねと頷く。

「人が多くてもいいことないし。食べ物は神殿から届くし」
「神殿から?」
「祭壇に毎日、供物をあげているだろうに」

 ソロが知らんのかという顔でバサルを見たが、バサルは書庫に配属されたため、祭壇までは気が回らなかった。だが……それは。

「祭壇に供物がなかった場合はどうなるんですか」

 バサルの言葉に、ソロは口を閉じ、デュアは目を伏せた。アイル達は考えた事もないという顔でバサルを見る。

「そんなことはないですよ?」
「毎日、きちんと……」

 デュアが椅子から下りた。ソロも立ち上がる。

「いらっしゃい。案内してあげる」

 デュアの後に続こうとバサルも立ち上がった。

 ◇

 奥神殿の入り口まで戻る。
 バサルも改めて神殿を見上げる。

 やはり、でかい。

 そして、不思議な事に気が付いた。バサルがあたりを見回す。

「表の神殿はどこにあるんだ?」

 そう、昨日までバサルが勤めていた神殿がここからだと見えない。庭の片隅に、小さな石造りの小屋は見える。記憶が確かなら、昨日はあそこから出てきた気がする。

 だが、昨日通った道はトンネルの様な道だった。小屋の後ろにはそういう通路は見えない。小屋の後ろは雑木林だ。その雑木林の向こうにも神殿は見えなかった。

「神殿はあの山向こうよ」

 デュアが奥神殿のさらに奥にそびえる岩山を指さした。ん?とバサルがもう一度、岩山を見る。

「あの向こう?」
「そう」

 なら、本当に昨夜はソロはあの山向こうから来たのだろうか。

「遠回りだと言っただろう」

 はぁと言うしかないが、あの桶に溢れんばかりの水を担いだ神官達を思い出す。あの桶を担いであの山を越えるのか。

 それは、とても、重労働だったことだろう。

 うーんと唸るバサルにこっちとデュアが歩き出す。どうやら大神官自ら案内をしてくれるらしい。

「神殿の造りは表と一緒。あっちが広間で、真ん中が祭壇。こっちが倉庫ね」
「倉庫……」

 表では自分がいた書庫があった場所を倉庫と言われ、頭を掻く。それなりに重要な部署ではあったと思っていた自分にも驚く。

「書庫もあるのか」

 ありますとアイロが答える。もしかして、バサルの部屋にあった本もそこから持ってきたのだろう。

「こちらの祭壇とあちらの祭壇が繋がっているの」

 デュアが祭壇の間にまっすぐに入り、躊躇うことなく壇上に上がる。アイル達は壇の下で足を止める。上がってはならないのだろう。

 バサルが祭壇を見る。表の神殿の祭壇はこれでもかと装飾が施されているが、こちらはシンプルだ。向こうでは神殿の紋章が彫られている場所に、赤い垂れ幕がかかっている。

 デュアはそこに手を差し入れた。

「アイロ」
「はい」

 アイロが呼ばれ、デュアの隣に行く。デュアの手が垂れ幕から抜かれると、そこには供物が乗った大きな盆があった。アイロが受け取り、それをアイルが持ってきた籠に入れていく。

 果物が多い。次いで香辛料。主食のパン。他、何か細々したもの。

「香辛料が多いわね」

 デュアも気が付いたのか、アイロから空になった盆を受け取りながら呟く。ソロがそう言えば、交易船が入ったはずですと返事をした。なら、珍しい香辛料なのだろう。それも、献上品だ。

「そう」

 どこかしらと呟くデュアにソロが後でお伝えしますと答える。

「向こうとのやり取りは、ここで?」
「ええ」

 だいたいとデュアが答えながら祭壇を下りた。アイル達が祭壇に向かい礼をするが、デュアはしない。バサルも一応は頭を下げた。ソロも下げる。

「向こうには空の盆が帰るのか?」
「そうよ。受け取りましたっていう返事だもの」
「……なら、受け取らない日がある?」
「私が死んだ日とかね」

 あっさりと言ったデュアにバサルが固まるが……そうかとも思う。他に、デュアが病気とかで受け取れなければ、分かるようにしているのだろう。
 だが……。

「アイル達はそういう時、どうするんだ?」

 食べる物がなくなるんじゃないだろうか。だが、アイル達は分からないという顔をした。

「まだ、私達そういう事がなくて……」

 ありがたい事なのですが……と呟くアイロにデュアがもういいわと手を上げた。

「二人共、戻りなさい。昼には戻るから、やることをすませて」

 同じ顔の従者達は綺麗な所作で「はい」と言い、頭を下げた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...