最弱にして最強となる冒険者〜龍神の恩恵を授かりし最弱ランクの闘い〜

uyosiの脳内は茜色

文字の大きさ
2 / 20
プロローグ

砕けた心〜過去を写す〜

しおりを挟む
 俺の名前はデュリエル・ネイト。

 立派にも冒険者としてのスキルはない。
 だから何? って俺は普通に思っている。冒険者になるのに能力なんて関係ない。
 気合、根性、やる気──そして死をも恐れぬ気持ちを持っていれば、冒険者として最強の力を発揮できる。

 ──まっ、父譲りの話だかな。

 と、俺は思っていたが…………実戦はそう簡単に行かなかった。
 事実魔獣を目の前にしてしまえば、縮み上がるってもんよ。

 体格に腕力、野生である本能──人を殺せと瞳は訴える。
 その気迫に臆する事なく立ち向かえる奴こそ冒険者。

 ──俺には…………出来なかった。

 だからこうして、冒険者になった者の自堕落な生活を送っている。少しでも考える時間があれば、あの日の事が脳裏をよぎってしまい、身体は震え上がり、俺は俺でいられなくなってしまう。

 だからこそ理解する。
 ──死の恐怖って言うのは自分が思う程簡単な物ではない。
 一度、体に染み付いてしまえば、体は言う事を聞かない。
 
 俺は理解した。

 同じように逃げ帰った……冒険者の気持ち。
 ──同じなんだと…………。

 
 身の毛もよだつ記憶が俺の脳味噌を支配する。
 抗う術を知らぬままに…………。

 まるで俺が俺を見ているかのように。

 

 ──長かった【ビルディスタ冒険者育成学校】卒業の日。
 俺はこの日を楽しみに夜通し起きていた。
 特に楽しみを抱く程の事はなかったのに。どうしてか心はワクワクしていた。

 外を見れば茜色の光が差し込む。

 気分良く腕を伸ばし、大きなあくびと共にベットから起き上がり、両親の声が響くリビングに足を運ばせる。

「おはよう!」
「あら、珍しく早起きね──おはようネイト」
「ネイト! お前眠れなかったんだろ?」
「? えっ、何でわかるの?」
「顔に書いてあるぞ! 早く顔洗ってきなさい!」

 顔に書いてある? そんな筈ないだろ……。

 俺は父に言われた言葉を鵜呑みに鏡に写る自分の顔を眺めた。

 やっぱり書いてないじゃねぇーか!

 蛇口を捻り水が溢れ出す。
 掌に水を救い上げ、顔に勢いよくぶつけた。

 ぶっはぁー。
 寝ていないせいか妙にスッキリする。

 ──よしっと。
 頬を叩き自分を叩き起こす。

 
 母さんは朝食の準備、父さんはと言うと、ビルディスタが配布するニュース記事を広げ、目を走らせていた。
 
「父さん何か面白い記事でもあるの?」いつもの日常会話。
 些細な会話にずきない。
 面白い記事があれば父さんは目を輝かせ、俺に話を始める。

 チラッと見えた冒険者にまつわる記事。

 ……父の目はそこで止まっているのだろう

「……そうだなぁー! この記事読んでみな」

〈最年少にして最速ランカー誕生〉
 
 ……確かに凄いのはわかる。
 でもそれだけだと俺は思ってしまった。
 何故なら俺も冒険者になる身、他人を羨んでも始まらない。
 逆に火が付く──
 
「最速ねぇー。ふーん」
「興味なさそうだな!」
「興味ない事はないけど…………
 
 先程までの考えを改めた。

 数秒前の俺の脳内は──最速と言っても《Aランク》そこいらだろ……! と思っていたからだ。

 目を滑らし記事を読むと──《SSランク》……これは驚いたっ!

《SSランク》と言えば、ビルディスタには二人しかいない。
 ──最年少……それも、たった18歳にしてそれを成したと……。
 記事には〈3人目の《SSランク》誕生〉と大々的に記載されていた。

 だからこそ、俺は小声を漏らしてしまう。
「ありえない……」
「父さんもそう思う。だが凄いな、たった18歳で《SSランク》とはな。父さんでも《Sランク》止まりなのにな」

 俺は初めて父さんのランクを知ってしまった。
 そうこうしている内に母さんの声が俺の耳に響く。

「──朝食出来たわよ。早く食べなさい! 間に合わなくなるわよ! 父さんも早く食べてよね」

 時刻を見れば遅刻ギリギリ。
 俺は母さんの朝食を味わう事なく、口に放り込み、勢い良く飲み込んだ。
 普通に食べれば凄く美味しいのに、少し損した気分になってしまう。
 ──でも遅刻は許されない、特に卒業式と言う大事な日だからこそ。
 
「母さん、父さん、いってきまぁーす」

 俺は元気よく扉を開けた。
 背後からは見送る両親の声が耳に届く。

「行って来い」「気を付けていくのよぉ」

【ビルディスタ冒険者育成学校】に足を向け走り向かった。
 

 この時の俺…………は。今の俺の気持ちを知らない。……まだ何も知らない青二才。
 だからこそ助言をしてやりたい──命を投げ打つ覚悟なんて、所詮絵空事……現実は甘くなかった………………。


 ……そして、俺の耳に響く──(
 
『ビルディスタ冒険者に告ぐ。即座に東門に行き魔獣の群れを阻止、もしくは撃滅して下さい──繰り返します。即座に東門に行き魔獣の群れを阻止、もしくは撃滅して下さい。これはビルディスタ直の依頼の為拒否は認められません──即座に向かい殲滅して下さい』

 放送が終わると同時に、俺の鼓動は早くなった。
 目の前に絶望の壁が立ちはだかったのではないかと錯覚してしまい、体は竦み、一歩、足を前に出す事が叶わない。

 再び魔獣を前にして俺は俺でいれるのか? 

 死にたくない……この気持ちが俺を閉じ込める。


 冒険者になる事なんて…………選ばなければ良かった。
 ──過去の俺よ…………どうか冒険者にならないでくれ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

魔法が使えない落ちこぼれ貴族の三男は、天才錬金術師のたまごでした

茜カナコ
ファンタジー
魔法使いよりも錬金術士の方が少ない世界。 貴族は生まれつき魔力を持っていることが多いが錬金術を使えるものは、ほとんどいない。 母も魔力が弱く、父から「できそこないの妻」と馬鹿にされ、こき使われている。 バレット男爵家の三男として生まれた僕は、魔力がなく、家でおちこぼれとしてぞんざいに扱われている。 しかし、僕には錬金術の才能があることに気づき、この家を出ると決めた。

処理中です...