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プロローグ
砕けた心〜過去を写す〜
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俺の名前はデュリエル・ネイト。
立派にも冒険者としてのスキルはない。
だから何? って俺は普通に思っている。冒険者になるのに能力なんて関係ない。
気合、根性、やる気──そして死をも恐れぬ気持ちを持っていれば、冒険者として最強の力を発揮できる。
──まっ、父譲りの話だかな。
と、俺は思っていたが…………実戦はそう簡単に行かなかった。
事実魔獣を目の前にしてしまえば、縮み上がるってもんよ。
体格に腕力、野生である本能──人を殺せと瞳は訴える。
その気迫に臆する事なく立ち向かえる奴こそ冒険者。
──俺には…………出来なかった。
だからこうして、冒険者になった者の自堕落な生活を送っている。少しでも考える時間があれば、あの日の事が脳裏をよぎってしまい、身体は震え上がり、俺は俺でいられなくなってしまう。
だからこそ理解する。
──死の恐怖って言うのは自分が思う程簡単な物ではない。
一度、体に染み付いてしまえば、体は言う事を聞かない。
俺は理解した。
同じように逃げ帰った……冒険者の気持ち。
──同じなんだと…………。
身の毛もよだつ記憶が俺の脳味噌を支配する。
抗う術を知らぬままに…………。
まるで俺が俺を見ているかのように。
──長かった【ビルディスタ冒険者育成学校】卒業の日。
俺はこの日を楽しみに夜通し起きていた。
特に楽しみを抱く程の事はなかったのに。どうしてか心はワクワクしていた。
外を見れば茜色の光が差し込む。
気分良く腕を伸ばし、大きなあくびと共にベットから起き上がり、両親の声が響くリビングに足を運ばせる。
「おはよう!」
「あら、珍しく早起きね──おはようネイト」
「ネイト! お前眠れなかったんだろ?」
「? えっ、何でわかるの?」
「顔に書いてあるぞ! 早く顔洗ってきなさい!」
顔に書いてある? そんな筈ないだろ……。
俺は父に言われた言葉を鵜呑みに鏡に写る自分の顔を眺めた。
やっぱり書いてないじゃねぇーか!
蛇口を捻り水が溢れ出す。
掌に水を救い上げ、顔に勢いよくぶつけた。
ぶっはぁー。
寝ていないせいか妙にスッキリする。
──よしっと。
頬を叩き自分を叩き起こす。
母さんは朝食の準備、父さんはと言うと、ビルディスタが配布するニュース記事を広げ、目を走らせていた。
「父さん何か面白い記事でもあるの?」いつもの日常会話。
些細な会話にずきない。
面白い記事があれば父さんは目を輝かせ、俺に話を始める。
チラッと見えた冒険者にまつわる記事。
……父の目はそこで止まっているのだろう
「……そうだなぁー! この記事読んでみな」
〈最年少にして最速ランカー誕生〉
……確かに凄いのはわかる。
でもそれだけだと俺は思ってしまった。
何故なら俺も冒険者になる身、他人を羨んでも始まらない。
逆に火が付く──俺が最年少の記録を更新してやるとな。
「最速ねぇー。ふーん」
「興味なさそうだな!」
「興味ない事はないけど…………えっっ!」
先程までの考えを改めた。
数秒前の俺の脳内は──最速と言っても《Aランク》そこいらだろ……! と思っていたからだ。
目を滑らし記事を読むと──《SSランク》……これは驚いたっ!
《SSランク》と言えば、ビルディスタには二人しかいない。
──最年少……それも、たった18歳にしてそれを成したと……。
記事には〈3人目の《SSランク》誕生〉と大々的に記載されていた。
だからこそ、俺は小声を漏らしてしまう。
「ありえない……」
「父さんもそう思う。だが凄いな、たった18歳で《SSランク》とはな。父さんでも《Sランク》止まりなのにな」
俺は初めて父さんのランクを知ってしまった。
そうこうしている内に母さんの声が俺の耳に響く。
「──朝食出来たわよ。早く食べなさい! 間に合わなくなるわよ! 父さんも早く食べてよね」
時刻を見れば遅刻ギリギリ。
俺は母さんの朝食を味わう事なく、口に放り込み、勢い良く飲み込んだ。
普通に食べれば凄く美味しいのに、少し損した気分になってしまう。
──でも遅刻は許されない、特に卒業式と言う大事な日だからこそ。
「母さん、父さん、いってきまぁーす」
俺は元気よく扉を開けた。
背後からは見送る両親の声が耳に届く。
「行って来い」「気を付けていくのよぉ」
【ビルディスタ冒険者育成学校】に足を向け走り向かった。
この時の俺…………は。今の俺の気持ちを知らない。……まだ何も知らない青二才。
だからこそ助言をしてやりたい──冒険者などにならなくていいとな。命を投げ打つ覚悟なんて、所詮絵空事……現実は甘くなかった………………。
……そして、俺の耳に響く──(緊急放送)
『ビルディスタ冒険者に告ぐ。即座に東門に行き魔獣の群れを阻止、もしくは撃滅して下さい──繰り返します。即座に東門に行き魔獣の群れを阻止、もしくは撃滅して下さい。これはビルディスタ直の依頼の為拒否は認められません──即座に向かい殲滅して下さい』
放送が終わると同時に、俺の鼓動は早くなった。
目の前に絶望の壁が立ちはだかったのではないかと錯覚してしまい、体は竦み、一歩、足を前に出す事が叶わない。
再び魔獣を前にして俺は俺でいれるのか?
死にたくない……この気持ちが俺を閉じ込める。
冒険者になる事なんて…………選ばなければ良かった。
──過去の俺よ…………どうか冒険者にならないでくれ。
立派にも冒険者としてのスキルはない。
だから何? って俺は普通に思っている。冒険者になるのに能力なんて関係ない。
気合、根性、やる気──そして死をも恐れぬ気持ちを持っていれば、冒険者として最強の力を発揮できる。
──まっ、父譲りの話だかな。
と、俺は思っていたが…………実戦はそう簡単に行かなかった。
事実魔獣を目の前にしてしまえば、縮み上がるってもんよ。
体格に腕力、野生である本能──人を殺せと瞳は訴える。
その気迫に臆する事なく立ち向かえる奴こそ冒険者。
──俺には…………出来なかった。
だからこうして、冒険者になった者の自堕落な生活を送っている。少しでも考える時間があれば、あの日の事が脳裏をよぎってしまい、身体は震え上がり、俺は俺でいられなくなってしまう。
だからこそ理解する。
──死の恐怖って言うのは自分が思う程簡単な物ではない。
一度、体に染み付いてしまえば、体は言う事を聞かない。
俺は理解した。
同じように逃げ帰った……冒険者の気持ち。
──同じなんだと…………。
身の毛もよだつ記憶が俺の脳味噌を支配する。
抗う術を知らぬままに…………。
まるで俺が俺を見ているかのように。
──長かった【ビルディスタ冒険者育成学校】卒業の日。
俺はこの日を楽しみに夜通し起きていた。
特に楽しみを抱く程の事はなかったのに。どうしてか心はワクワクしていた。
外を見れば茜色の光が差し込む。
気分良く腕を伸ばし、大きなあくびと共にベットから起き上がり、両親の声が響くリビングに足を運ばせる。
「おはよう!」
「あら、珍しく早起きね──おはようネイト」
「ネイト! お前眠れなかったんだろ?」
「? えっ、何でわかるの?」
「顔に書いてあるぞ! 早く顔洗ってきなさい!」
顔に書いてある? そんな筈ないだろ……。
俺は父に言われた言葉を鵜呑みに鏡に写る自分の顔を眺めた。
やっぱり書いてないじゃねぇーか!
蛇口を捻り水が溢れ出す。
掌に水を救い上げ、顔に勢いよくぶつけた。
ぶっはぁー。
寝ていないせいか妙にスッキリする。
──よしっと。
頬を叩き自分を叩き起こす。
母さんは朝食の準備、父さんはと言うと、ビルディスタが配布するニュース記事を広げ、目を走らせていた。
「父さん何か面白い記事でもあるの?」いつもの日常会話。
些細な会話にずきない。
面白い記事があれば父さんは目を輝かせ、俺に話を始める。
チラッと見えた冒険者にまつわる記事。
……父の目はそこで止まっているのだろう
「……そうだなぁー! この記事読んでみな」
〈最年少にして最速ランカー誕生〉
……確かに凄いのはわかる。
でもそれだけだと俺は思ってしまった。
何故なら俺も冒険者になる身、他人を羨んでも始まらない。
逆に火が付く──俺が最年少の記録を更新してやるとな。
「最速ねぇー。ふーん」
「興味なさそうだな!」
「興味ない事はないけど…………えっっ!」
先程までの考えを改めた。
数秒前の俺の脳内は──最速と言っても《Aランク》そこいらだろ……! と思っていたからだ。
目を滑らし記事を読むと──《SSランク》……これは驚いたっ!
《SSランク》と言えば、ビルディスタには二人しかいない。
──最年少……それも、たった18歳にしてそれを成したと……。
記事には〈3人目の《SSランク》誕生〉と大々的に記載されていた。
だからこそ、俺は小声を漏らしてしまう。
「ありえない……」
「父さんもそう思う。だが凄いな、たった18歳で《SSランク》とはな。父さんでも《Sランク》止まりなのにな」
俺は初めて父さんのランクを知ってしまった。
そうこうしている内に母さんの声が俺の耳に響く。
「──朝食出来たわよ。早く食べなさい! 間に合わなくなるわよ! 父さんも早く食べてよね」
時刻を見れば遅刻ギリギリ。
俺は母さんの朝食を味わう事なく、口に放り込み、勢い良く飲み込んだ。
普通に食べれば凄く美味しいのに、少し損した気分になってしまう。
──でも遅刻は許されない、特に卒業式と言う大事な日だからこそ。
「母さん、父さん、いってきまぁーす」
俺は元気よく扉を開けた。
背後からは見送る両親の声が耳に届く。
「行って来い」「気を付けていくのよぉ」
【ビルディスタ冒険者育成学校】に足を向け走り向かった。
この時の俺…………は。今の俺の気持ちを知らない。……まだ何も知らない青二才。
だからこそ助言をしてやりたい──冒険者などにならなくていいとな。命を投げ打つ覚悟なんて、所詮絵空事……現実は甘くなかった………………。
……そして、俺の耳に響く──(緊急放送)
『ビルディスタ冒険者に告ぐ。即座に東門に行き魔獣の群れを阻止、もしくは撃滅して下さい──繰り返します。即座に東門に行き魔獣の群れを阻止、もしくは撃滅して下さい。これはビルディスタ直の依頼の為拒否は認められません──即座に向かい殲滅して下さい』
放送が終わると同時に、俺の鼓動は早くなった。
目の前に絶望の壁が立ちはだかったのではないかと錯覚してしまい、体は竦み、一歩、足を前に出す事が叶わない。
再び魔獣を前にして俺は俺でいれるのか?
死にたくない……この気持ちが俺を閉じ込める。
冒険者になる事なんて…………選ばなければ良かった。
──過去の俺よ…………どうか冒険者にならないでくれ。
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