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一章 ステータスプレート
卒業証書授与式
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無造作に散りばめる白髪がよく目立つ【ビルディスタ冒険者育成学校】校長──長垂らしい挨拶が魔術演習フロアーに響きわたる。
俺は真面目にも校長の挨拶をしっかりと耳に入れていた。
何故かって? 校長の話は俺の心を熱く握っているからだ!
冒険者としての威厳を強く語り、間違っている事を言わないからだ。
時にはいき過ぎる熱血振りを披露するが俺にとっては造作もない事。
だからこそ──勉強になり気合が入る。
俺と同じくして冒険者を目指す者達は校長を嫌う者など一人もいない。
何故なら校長直々が冒険者になる者の指導者だからだ。
目指す目標──校長を超える事。
……卒業までに校長から一本取りたかった…………それは叶わなかった。
老いぼれのくせして、腕力、動体視力・俊敏さは俺たち生徒を遥に凌駕する強者。
だからこそ、校長の話に瞳をギラギラさせ見つめる者達は冒険者志願者って事がわかってしまう。
あいつも、あいつも、あいつも…………その中にはウルリカ・レイネも存在するが、冒険者になる理由は別にある。……理由は知っているが俺の口から述べるのは些か自意識過剰に感じてしまう為、俺の口からは公言したくない。
よって、別の機会に本人から話をさせよう。
視線でも感じたのか、レイネは振り向き俺に向かってウインクを披露する。俺はそのウインクに対し軽く笑顔を返してやった!
レイネは微笑み大層満悦な表情を浮かべ、ぎこちないウインクを再度発動してきたが、流石に今は相手してやれない…………。
だからこそ「前向け」と俺は顔で合図を送ったが、理解していないのか、合図に対し謎の顔芸で返してきやがった。
……ったく、前向けよ! 相手してやれねんだよ。
──拍手……合図によって校長による挨拶の終わりを告げる。
『続いて卒業証書授与式をとりおこないます。名前を呼ばれた方は前へ』
──これをもらう事に自分の進路を決定付ける。
……結果がどうあれ、俺の道は決まっているがな!
『エレス・ビルグ前へ』
ビルグ、ビルディスタ冒険者育成学校に入学する前は、よく一緒に連み遊んでいたが、入学と同時に距離は広がり会話すらしなくなった。
……いつも向けられる視線はどことなく鋭かった。
そんな奴が「はい」と腹から声を出し校長の前へと足を運ぶ。
一礼し目線を合わせた。
少しの沈黙──校長はビルグに告げる。
「エレス・ビルグ。ビルディスタ冒険者育成学校の全課程を終了した事をここに証明します。本校で学んだ精神を忘れず、自身が選択する道に進んで下さい──魔力を与えし神の導きがあらん事を。卒業おめでとう」
左手、右手と前に出し、一礼。
容貌に優れた振る舞いで、卒業証書を手に握り自身が並ぶ列へと静かに足を向ける。
列に戻った事を確認した司会は次に並ぶ名前を呼ぶ。
『ウルリカ・レイネ前へ』
ビルグの時同様に「はい」と恥らう声を響かせ、校長が立つ見台の前へ足を運ぶ。
「ウルリカ・レイネ。ビルディスタ冒険者育成学校の全課程を終了した事をここに証明します。本校で学んだ精神を忘れず、自身が選択する道に進んで下さい──魔力を与えし神の導きがあらん事を。卒業おめでとう」
時同じくして卒業する生徒達が順番に呼ばれていき、いよいよ俺の番。待ち構える事に心がワクワクしていた。
『デュリエル・ネイト前へ』
わかっていたのだが──胸に何かが刺さるような(ドキ)っとする感覚は押さえ切れない。
名前を呼ばれた事に大声で返事をする「はいっ!」
校長の立つ見台へと足を運ばせる為一歩、一歩と足を前に出すが、皆からの視線が何処か緊張してしまう。
周囲から見れば、さぞ俺の動きはぎこちないだろ……だが良いのだ! 俺は目標地点となる見台の前に立つ。
向き合う──より鮮明に見えてしまう校長のしわ……俺を見るや、口角をやや吊り上げ、優しい笑顔か見てとる。
思ってしまった……。強面な校長が……こんなにも優しい顔をするんだなと。
何故だろ。意識もしてないはずなのに涙が零れ落ちた。
一つ落ちれば二つ落ち、自然と涙は溢れ出る。
ふと、周囲に耳を向ければ。
フロアーに幾人者の鳴き声が囁く。
一人泣けば隣に一人泣けば周囲に……涙は拡散し5年間を振り返る。楽しかった事、苦しかった事、全ての思い出を読み返し涙は止まらない。
──俺もその一人。
校長は卒業証書を前に口を開き俺を見つめる。
「デュリエル・ネイト。ビルディスタ冒険者育成学校の全課程を終了した事をここに証明します。本校で学んだ精神を忘れず、自身が選択する道に進んで下さい──魔力を与えし神の導きがあらん事を。卒業おめでとう」
校長の言葉は深く俺の胸に突き刺さる。
──校長先生……ありがとうございました。
お辞儀する際に心で感謝の気持ちを告げた。
満面な笑顔を浮かべた校長。
俺の思いが届いたのだろーか?
* * * * * *
俺は真面目にも校長の挨拶をしっかりと耳に入れていた。
何故かって? 校長の話は俺の心を熱く握っているからだ!
冒険者としての威厳を強く語り、間違っている事を言わないからだ。
時にはいき過ぎる熱血振りを披露するが俺にとっては造作もない事。
だからこそ──勉強になり気合が入る。
俺と同じくして冒険者を目指す者達は校長を嫌う者など一人もいない。
何故なら校長直々が冒険者になる者の指導者だからだ。
目指す目標──校長を超える事。
……卒業までに校長から一本取りたかった…………それは叶わなかった。
老いぼれのくせして、腕力、動体視力・俊敏さは俺たち生徒を遥に凌駕する強者。
だからこそ、校長の話に瞳をギラギラさせ見つめる者達は冒険者志願者って事がわかってしまう。
あいつも、あいつも、あいつも…………その中にはウルリカ・レイネも存在するが、冒険者になる理由は別にある。……理由は知っているが俺の口から述べるのは些か自意識過剰に感じてしまう為、俺の口からは公言したくない。
よって、別の機会に本人から話をさせよう。
視線でも感じたのか、レイネは振り向き俺に向かってウインクを披露する。俺はそのウインクに対し軽く笑顔を返してやった!
レイネは微笑み大層満悦な表情を浮かべ、ぎこちないウインクを再度発動してきたが、流石に今は相手してやれない…………。
だからこそ「前向け」と俺は顔で合図を送ったが、理解していないのか、合図に対し謎の顔芸で返してきやがった。
……ったく、前向けよ! 相手してやれねんだよ。
──拍手……合図によって校長による挨拶の終わりを告げる。
『続いて卒業証書授与式をとりおこないます。名前を呼ばれた方は前へ』
──これをもらう事に自分の進路を決定付ける。
……結果がどうあれ、俺の道は決まっているがな!
『エレス・ビルグ前へ』
ビルグ、ビルディスタ冒険者育成学校に入学する前は、よく一緒に連み遊んでいたが、入学と同時に距離は広がり会話すらしなくなった。
……いつも向けられる視線はどことなく鋭かった。
そんな奴が「はい」と腹から声を出し校長の前へと足を運ぶ。
一礼し目線を合わせた。
少しの沈黙──校長はビルグに告げる。
「エレス・ビルグ。ビルディスタ冒険者育成学校の全課程を終了した事をここに証明します。本校で学んだ精神を忘れず、自身が選択する道に進んで下さい──魔力を与えし神の導きがあらん事を。卒業おめでとう」
左手、右手と前に出し、一礼。
容貌に優れた振る舞いで、卒業証書を手に握り自身が並ぶ列へと静かに足を向ける。
列に戻った事を確認した司会は次に並ぶ名前を呼ぶ。
『ウルリカ・レイネ前へ』
ビルグの時同様に「はい」と恥らう声を響かせ、校長が立つ見台の前へ足を運ぶ。
「ウルリカ・レイネ。ビルディスタ冒険者育成学校の全課程を終了した事をここに証明します。本校で学んだ精神を忘れず、自身が選択する道に進んで下さい──魔力を与えし神の導きがあらん事を。卒業おめでとう」
時同じくして卒業する生徒達が順番に呼ばれていき、いよいよ俺の番。待ち構える事に心がワクワクしていた。
『デュリエル・ネイト前へ』
わかっていたのだが──胸に何かが刺さるような(ドキ)っとする感覚は押さえ切れない。
名前を呼ばれた事に大声で返事をする「はいっ!」
校長の立つ見台へと足を運ばせる為一歩、一歩と足を前に出すが、皆からの視線が何処か緊張してしまう。
周囲から見れば、さぞ俺の動きはぎこちないだろ……だが良いのだ! 俺は目標地点となる見台の前に立つ。
向き合う──より鮮明に見えてしまう校長のしわ……俺を見るや、口角をやや吊り上げ、優しい笑顔か見てとる。
思ってしまった……。強面な校長が……こんなにも優しい顔をするんだなと。
何故だろ。意識もしてないはずなのに涙が零れ落ちた。
一つ落ちれば二つ落ち、自然と涙は溢れ出る。
ふと、周囲に耳を向ければ。
フロアーに幾人者の鳴き声が囁く。
一人泣けば隣に一人泣けば周囲に……涙は拡散し5年間を振り返る。楽しかった事、苦しかった事、全ての思い出を読み返し涙は止まらない。
──俺もその一人。
校長は卒業証書を前に口を開き俺を見つめる。
「デュリエル・ネイト。ビルディスタ冒険者育成学校の全課程を終了した事をここに証明します。本校で学んだ精神を忘れず、自身が選択する道に進んで下さい──魔力を与えし神の導きがあらん事を。卒業おめでとう」
校長の言葉は深く俺の胸に突き刺さる。
──校長先生……ありがとうございました。
お辞儀する際に心で感謝の気持ちを告げた。
満面な笑顔を浮かべた校長。
俺の思いが届いたのだろーか?
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