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一章 ステータスプレート
両親の思い
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【ビルディスタ冒険者育成学校】を後に、レイネのランクを思い浮かべながらも家へと体を向かわせる。
《Aランク》での卒業。
確かに羨む所はあるが──《戦歌鎮魂歌》の解放がそこまでのランクを引き上げる事になったとはな。
わからない物だな……それに引き替え《千差万別》とは乏しないな。
だが、ないよりはマシだろ! 使い方によっては優れていると俺は思う。
よしっ! 両親説得するか…………。
はぁ……考えると親の顔が浮かんでしまう。
反対はしていなかったけど、少し否定出来だったもんな!
特に母さんは『《Dランク》のまま卒業するような事があれば冒険者は諦めなさいよ…………』耳に痛い言葉だったな。
父さんの援護で母さんは頷いてくれたけど、いざ、どうなる事やら。
俺は母さんを説得させる材料を、家に向かう通路でひたすら考えた、結局思い付く事はなく。
──押し通す。
これに尽きると思った。
意思を通せば母さんはわかってくれる。
さて見えてきた我が家。
夕飯の準備をしているのか、外にはお腹をそそる香ばしい香が俺の嗅覚を刺激し、お腹のうめきが伝わる。
お腹減ったな……。
平常通り扉を開けた。
俺が帰ってきた事を察したのか、奥から元気の良い母さんの声が俺を呼ぶ。
「お帰りなさい! ネイト卒業おめでとう」
「ただいま」
「さて、ご飯の準備は出来ているから、手を洗っていらっしゃい」
返事を返し洗面台へと……鏡に反射する俺の顔は何処か不安そうだった。
──母さんを説得させる不安が俺を悩ませていた。
…………何とかなる。
そう心に抱き頬を叩き気合いを込める。
「母さんっ! 俺……冒険者になるから」
「何この子? 知ってるわよそんな事」
へっ? 思いもよらない返事に俺は拍子抜けしてしまった?
何故なら卒業証書も見せてもいない、それに《Dランク》って事も伝えていないのに、既に認めてくれていた。
「いいの?」だからこそ俺は答えを再度求めた。
「自分で決めた事でしょ? それなら母さんが何を言ってもネイトは聞かないでしょ」
「うん。自分で決めた!」
「5年間良く頑張ったわね! さぁ食事にしましょ、お腹減ったでしょネイト?」
「あっ、うん! …………父さんは?」
「少し遅くなるって言ってたわ」
珍しい……父さんの帰りが遅いのはここ数年なかった事。
急な仕事でもあったのか?
それよりも父さんは仕事なんてしていない……はず?
──冒険稼業を辞めて以来、のんびり良生を楽しんでいたからな。
時々【冒険者協会】に招集されていたみたいだけど、老人の集まりとか何とかって言って向う姿は何度か見かけた……ぐらい。
だからこそ俺は気になった。
「父さん何処行ったの母さん?」
「そうね……集まりがどうのって言ってたわね? 母さんも知らないのよ」
「協会?」
「じゃないかしら? お父さんの行く所って言ったらそのぐらいしかお母さん思い付かないわね!」
どんだけ行く場所限定されてんだよ、我が父よ!
所が食事の準備を一旦辞めた母さんは、どうしてか俺に向き直り真剣な眼差しを俺に向け始めた。
自然と座る姿勢を直してしまう。
「ネイト! ネイトが冒険者になる事、母さんは心配よ。でもネイトが決めた事、だから母さんは反対しない」
……どうしてそんな悲しい顔するの? 母さん?
「まだ若いネイト……絶対お家に帰って来なさい! 美味しいご飯毎日作ってあげるから」
どのように返事をしたらいんだ?
俺は母さんに何と答えたら良いのだろうーか。
「私の可愛いネイト《死》ぬ事はお別れになるわ。だからそんな思いお母さんにさせないで。……少し傲慢だねお母さんは」
と、普段見せない母さんの雫がテーブルの上に落ち弾けた。
胸が締め付けられる苦しみが俺を襲う。
ギュッと居た堪れない。
それでも母さんの視線から目を離す事が出来ない。
苦渋の選択を母さんは……思い悩み、俺の気持ちを汲んでくれた、本心は嫌なはずなのに。
……そんな母さんに俺は何と返事をすればいいのだろーか。
「母さん……美味しい料理楽しみにしてるから」
「もぉー誰の子かしらね」
濡らす瞳に笑顔が浮かび母さんの美しさが俺の目に映る。
「…………母さん。ありがと」考える事なく、でた言葉は母さんの涙腺を緩める羽目になってしまい、まるで蛇口を捻ったかのように涙が溢れ出ていた。
両手で表情を隠す母の姿は俺の心に刻まれ、母さんの愛がひしひし伝わる。
親の意向を押しのけてなろうとした冒険者。
両親から見れば子供な俺だけど、立派な息子として、もう母さんを泣かせない、それが俺が息子でありデュリエル家に生まれた子供。
笑顔を見せる母の姿。
俺が言うのもおかしな事だが、立派だよ母さん。
デュリエル家に生まれて本当に良かった──俺はこの日を忘れる事はない。
母さんを泣かせた記念日。父さんに見られたら少しばかり恐怖を感じてしまうけど。
すると父さんの声が室内に響き渡る。
「ただいまー。ネイトはもう帰っているのか?」
父さんの帰宅を知った母さんは慌て濡れる瞳を手で拭い、普段を装い父さんの言葉に回答する。
少々鼻声である所に違和感が伺えるが父さんは気付かなかった。
…………もしかすると気付いているのかもしれない。
わざとこの時間を作ってくれたのでは無いかとまで俺は思いかけようとしたが、父さんに限ってそれは考え過ぎだろとバッサリ切り捨て、俺は父さんに返事を返した。
「お帰りなさい」
「ネイト! 卒業おめでとう、5年間良く頑張ったな…………ほれプレゼントだ」
「なにこれ?」
「冒険者なるんだろ! なら一つぐらい、いい物身に付けておけ!」
そう言って父さんから渡されたプレゼント。
──デュリエル・ネイトって記された漆黒の短剣。
とても軽く切れ味が鋭そうだった。
父は満足した表情で俺に告げる。
「死ぬなよ! ネイト」
その一言は俺の胸に強く刻まれた。
「母さん父さん残して死ぬかよ! 立派に冒険者やってやんよ!」
「調子に乗らないのネイト! 足元救われるわよ」
「そうだぞ、母さんが言うように調子に乗るなよ!」
「わかってるって!」
そして家族3人でテーブルを囲い、母さんが作る出来立てのご飯を胃袋に入れた。
──やはり母さんの料理は絶品だ。
* * * * * *
《Aランク》での卒業。
確かに羨む所はあるが──《戦歌鎮魂歌》の解放がそこまでのランクを引き上げる事になったとはな。
わからない物だな……それに引き替え《千差万別》とは乏しないな。
だが、ないよりはマシだろ! 使い方によっては優れていると俺は思う。
よしっ! 両親説得するか…………。
はぁ……考えると親の顔が浮かんでしまう。
反対はしていなかったけど、少し否定出来だったもんな!
特に母さんは『《Dランク》のまま卒業するような事があれば冒険者は諦めなさいよ…………』耳に痛い言葉だったな。
父さんの援護で母さんは頷いてくれたけど、いざ、どうなる事やら。
俺は母さんを説得させる材料を、家に向かう通路でひたすら考えた、結局思い付く事はなく。
──押し通す。
これに尽きると思った。
意思を通せば母さんはわかってくれる。
さて見えてきた我が家。
夕飯の準備をしているのか、外にはお腹をそそる香ばしい香が俺の嗅覚を刺激し、お腹のうめきが伝わる。
お腹減ったな……。
平常通り扉を開けた。
俺が帰ってきた事を察したのか、奥から元気の良い母さんの声が俺を呼ぶ。
「お帰りなさい! ネイト卒業おめでとう」
「ただいま」
「さて、ご飯の準備は出来ているから、手を洗っていらっしゃい」
返事を返し洗面台へと……鏡に反射する俺の顔は何処か不安そうだった。
──母さんを説得させる不安が俺を悩ませていた。
…………何とかなる。
そう心に抱き頬を叩き気合いを込める。
「母さんっ! 俺……冒険者になるから」
「何この子? 知ってるわよそんな事」
へっ? 思いもよらない返事に俺は拍子抜けしてしまった?
何故なら卒業証書も見せてもいない、それに《Dランク》って事も伝えていないのに、既に認めてくれていた。
「いいの?」だからこそ俺は答えを再度求めた。
「自分で決めた事でしょ? それなら母さんが何を言ってもネイトは聞かないでしょ」
「うん。自分で決めた!」
「5年間良く頑張ったわね! さぁ食事にしましょ、お腹減ったでしょネイト?」
「あっ、うん! …………父さんは?」
「少し遅くなるって言ってたわ」
珍しい……父さんの帰りが遅いのはここ数年なかった事。
急な仕事でもあったのか?
それよりも父さんは仕事なんてしていない……はず?
──冒険稼業を辞めて以来、のんびり良生を楽しんでいたからな。
時々【冒険者協会】に招集されていたみたいだけど、老人の集まりとか何とかって言って向う姿は何度か見かけた……ぐらい。
だからこそ俺は気になった。
「父さん何処行ったの母さん?」
「そうね……集まりがどうのって言ってたわね? 母さんも知らないのよ」
「協会?」
「じゃないかしら? お父さんの行く所って言ったらそのぐらいしかお母さん思い付かないわね!」
どんだけ行く場所限定されてんだよ、我が父よ!
所が食事の準備を一旦辞めた母さんは、どうしてか俺に向き直り真剣な眼差しを俺に向け始めた。
自然と座る姿勢を直してしまう。
「ネイト! ネイトが冒険者になる事、母さんは心配よ。でもネイトが決めた事、だから母さんは反対しない」
……どうしてそんな悲しい顔するの? 母さん?
「まだ若いネイト……絶対お家に帰って来なさい! 美味しいご飯毎日作ってあげるから」
どのように返事をしたらいんだ?
俺は母さんに何と答えたら良いのだろうーか。
「私の可愛いネイト《死》ぬ事はお別れになるわ。だからそんな思いお母さんにさせないで。……少し傲慢だねお母さんは」
と、普段見せない母さんの雫がテーブルの上に落ち弾けた。
胸が締め付けられる苦しみが俺を襲う。
ギュッと居た堪れない。
それでも母さんの視線から目を離す事が出来ない。
苦渋の選択を母さんは……思い悩み、俺の気持ちを汲んでくれた、本心は嫌なはずなのに。
……そんな母さんに俺は何と返事をすればいいのだろーか。
「母さん……美味しい料理楽しみにしてるから」
「もぉー誰の子かしらね」
濡らす瞳に笑顔が浮かび母さんの美しさが俺の目に映る。
「…………母さん。ありがと」考える事なく、でた言葉は母さんの涙腺を緩める羽目になってしまい、まるで蛇口を捻ったかのように涙が溢れ出ていた。
両手で表情を隠す母の姿は俺の心に刻まれ、母さんの愛がひしひし伝わる。
親の意向を押しのけてなろうとした冒険者。
両親から見れば子供な俺だけど、立派な息子として、もう母さんを泣かせない、それが俺が息子でありデュリエル家に生まれた子供。
笑顔を見せる母の姿。
俺が言うのもおかしな事だが、立派だよ母さん。
デュリエル家に生まれて本当に良かった──俺はこの日を忘れる事はない。
母さんを泣かせた記念日。父さんに見られたら少しばかり恐怖を感じてしまうけど。
すると父さんの声が室内に響き渡る。
「ただいまー。ネイトはもう帰っているのか?」
父さんの帰宅を知った母さんは慌て濡れる瞳を手で拭い、普段を装い父さんの言葉に回答する。
少々鼻声である所に違和感が伺えるが父さんは気付かなかった。
…………もしかすると気付いているのかもしれない。
わざとこの時間を作ってくれたのでは無いかとまで俺は思いかけようとしたが、父さんに限ってそれは考え過ぎだろとバッサリ切り捨て、俺は父さんに返事を返した。
「お帰りなさい」
「ネイト! 卒業おめでとう、5年間良く頑張ったな…………ほれプレゼントだ」
「なにこれ?」
「冒険者なるんだろ! なら一つぐらい、いい物身に付けておけ!」
そう言って父さんから渡されたプレゼント。
──デュリエル・ネイトって記された漆黒の短剣。
とても軽く切れ味が鋭そうだった。
父は満足した表情で俺に告げる。
「死ぬなよ! ネイト」
その一言は俺の胸に強く刻まれた。
「母さん父さん残して死ぬかよ! 立派に冒険者やってやんよ!」
「調子に乗らないのネイト! 足元救われるわよ」
「そうだぞ、母さんが言うように調子に乗るなよ!」
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