最弱にして最強となる冒険者〜龍神の恩恵を授かりし最弱ランクの闘い〜

uyosiの脳内は茜色

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二章 授かりし恩恵

討伐隊編成

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 ギルドマスター・アーメスト・ジュピタの指示の元、ある一室の部屋に通される事になる。
 
 流れはこうだった。

 目元を赤く染めていた少女レイネ。
 ジュピタの登場により兵士から無事解放され、冒険者協会の中に入ったのだが……周囲はと言うと「おい、何があった?」と、騒ぎを聞きつけた冒険者達が、情報を得ようと入り口付近に群がっていた。

 捕まってしまえば、少々めんどくさいだろ。

 そこで……ジュピタの起点が輝く。
 レイネと近くにいたコメット、それと関係がないビルグは冒険者達を避けるように、ジュピタの指示の元ある部屋に案内される事になった。

 一端の冒険者等が、立ち入る事がまずない面談室。

 視界に入る迫力のある大きさのソフィー、材質は革で滑らかにツヤっとした光を輝かせる。
 座る事に抵抗を感じているのか、二人は棒立ちのまま固まっていた。
 すると──スタスタとソファーに座るレイネ。

「何してんの……レイネ……ギルドマスターの前で…………」
 と、言葉を挟まずにいられなかったのだろう。
 レイネにしてみれば、気にもしていない。
「そんな事より、二人も座ったら早く、座らないの?」
 二人を呼ぶように、高級品質であるソフィーを手の平でばしばしと叩き上げ、鈍い音が響く。
「レイネやめろ、落ち着け……」レイネを宥めようと必死に食らいつくビルグ。
 それでもソフォーを叩く動きはやまない。
「座らないの?」
 
 一瞬、向かいに座るジュピタにビルグの視線が向いた。
 恐らく、レイネの行動に対しギルドマスターであるアーメスト・ジュピタの表情を伺ったのだろ。

 特に変わったご様子はなく? ……と思いたいところだったのか、ジュピタの表情はまるで孫でも見ているかのように暖かな眼差しをレイネに送っていた。それを見たビルグ……は、と言うと(あの、ギルドマスターが、何故あのような表情を……)と疑問を抱いていた。
 途端ジュピタの視線が、ビルグ、コメットに向く。

「君達も座るが良い」──全身に滾るほどの神経を集中させ意識を維持していた青年……。
 馬鹿らしくなったのか……? 

 強面である素顔は皮膚が垂れ下がり、目元も優しく、口はにやけさせ……それを見てしまった青年もといエレス・ビルグは身体の力を解放させと音を立てソファーに腰を下ろした。

 勢いの反動に、革の軋む心地良い音、それに伴い自然と発する革の香。
 革である良さが室内を染めるが、一瞬でビルグは痛感した……。

 先ほどの態度が不敬だった事にアーネスト・ジュピタ。
《レイネ愛でるモード》を一瞬解除。
 いつもの覇気を瞬時纏、ビルグを睨見上げる。
 当てられたビルグはこの世の終わりでも感じたのか、表情は青ざめ、額に汗を垂れ流し、姿勢正しき座り直す。

 まるで先程の無礼を反省しているかのように、そして研ぎ澄ませる程敏感に気を張り直すビルグ。

 その場にはもう一人、インドゥ村、村人一号コメットも一緒にいた。
 つい先ほど顔を合わせた程度の存在ビルグ
 気が回るわけもなくジュピタの指示に従い、ビルグのすぐ側に腰を下ろす。
 さぞ質感が良かったのか、軽く掌で撫で、隣のビルグについ言葉を走らせる。
 
 ビルグはそんなコメットの話を軽く無視し、視点をテーブルの何もない中央に向け、黙ってやり過ごした。
 その数秒後に、時を見てかジュピタが口を開く。

「ところでレイネ、先程は少々感情を錯乱させておったが、さっき渡した安定剤、効いたか? どうじゃ?」
 観察するように表情を覗き込み、正常か確認する。
 それに受け答えするレイネ。
 少し安定剤が効き過ぎているせいもあり、テンションがやや高めになっているが、しっかりと言う。
「おちついたかな? 頭ポワッとしてるけど……大丈夫!」

 言葉に対しジュピタは頷く。
 そして懐から葉っぱを詰め込んだ筒を取出し、口に加えた。

 指を弾いた途端、火が姿を見せ、筒の先を火に当て吸引。
 吸った空気を吐き出し白い煙に声を乗せ言う。

「ならよかった。でだ、あそこまでの騒ぎ、何があったか話せるか?」

 ジュピタの言葉通りに、レイネはゆっくりと説明し始める。
 インドゥ村であった事、そこで戦うフライヤ、ネイトの事、そして特殊変異体ヴァイスカンドが姿を見せた事に、依頼の不正について。

 一通りの話を終えた事にレイネは要請する。それも強く。

「すぐ行かないと行けない──《Sランク》以上じゃないと駄目、マスター、直ぐに《Sランク》以上の冒険者集めれる?! じゃないとネイトにフライヤちゃん、村の人達危険──早く!」

 話を聞いたジュピタは直ぐに行動に移す。

 通話コネクトを使用し伝令を知らせる。
『たった今から緊急依頼を申請する。《Sランク》冒険者はただちに協会前に集合するよう呼びかけてくれ』
 通話コネクトを返して通話する相手からの返事が返る。
『かしこまりました、瞬時、緊急依頼を発注致します』

 このやりとりに《Sランク》冒険者が集まり、インドゥ村に急ぎ向かう未来をレイネは思い浮かべた。

「ありがと、マスターおじいちゃん!」

 
 数分が経過してから、ギルドマスターの元に通話コネクトが伝わる。
『ギルドマスター《Sランク》冒険者がビルディスタに一人もいません。全てクエストに出ております。不思議と《Aランク》の方が集まっておりますが……』
『《Aランク》だと焼け石に水にしかならん。無駄に命を浪費する、それは嫌いじゃ。とは言っても《Sランク》がおらんか……』

 と、会話を目の前で聞くレイネの表情に曇りが見え始める。
 
 先行きが見えない展開…………不安を表にしたレイネの一撃はある人物を突き動かせる。

「マスター。マスターが行くのは駄目?」

 一声だった。その顔に当てられたギルドマスター・アーメスト・ジュピタは二つ返事でレイネの頼みを承諾する。

(最初からそうしていれば、無駄な時間と労力を割かなくてよかったのでは……と思う所はあるが、それなりの事情でもあるのだろう。上に立つ者の責務事情って事に)

 ジュピタが承諾した事に、レイネの表情は満点な笑顔に早変わりし、ジュピタもその表情を見るや、笑顔を浮かべる。

 ──そして、ここからは早かった。 
 二つ程命令を伝え、部屋を出れば、協会入口にギルドマスター・アーメスト・ジュピタ率いる総勢が姿を見せていた。
 
 そして、ジュピタは宣言する。特殊変異体ヴァイスカンド討伐隊が【ギルドマスター】主体で成された事を。

 何故かその編成の中にはエレス・ビルグ(フライヤ、レイネの幼馴染も混ぜ込まれていた)不服でしかないのだろか、表情に満足感が見て取れない。

 ──ビルグの不満気な表情は他所に、レイネは何かを感じとったのか焦りを見せる。
「マスター急ごう! 今、嫌な感じがした……」

 ──虫の知らせ……。

 レイネは第六感を用いて不吉な前兆を感じ取ったのだろう。
 それが何かとはわからないが。


 * * * * *


 レイネは自身の責務を果たし、ギルドマスター・アーメスト・ジュピタをインドゥ村に引き連れる事に成功した矢先。
 
 インドゥ村奥地では、今なお荒れ狂う戦闘が始まっていた、それは一方的に蹂躙される絵面でしかなかった。
 
 勢い付いた翼から放たれる突風。
 人の体は、その風に耐えれることなく、後方へと弾かれる。
 勢いのまま飛翔する事、一本の木に背中を強打し口から赤く染まった液体を巻き散らかす。
 
 鋭い眼光は途切れておらず、敵意ヘイトは継続中。
 対して、背中にかなりの深手を負ったのか動く素振りを見せず、前方に姿を見せる特殊変異体ヴァイスカンドクリフィポックを睨む《ネイト》

「やべ……手足力入らね。……死んだはこれ……」

 地面を蹴る一歩、それだけで、飛翔した距離を詰めネイトの目前に立つ。
 上から見下ろす特殊変異体の姿……恐ろしい恐怖をネイトに植え付ける。

 三本の指から伸びる鋭い爪を起用に使い、意識を失ったネイトの肩付近を掴み上げ翼を羽ばたかせ浮上する。
 風の動きで砂煙が周囲に舞いあがり木々は揺れ、葉は落ちる。

 意識を失っていたネイトだが、特殊変異体の足爪がネイトの肩に食込む事で、意識が覚醒してしまい青ざめる。
 上空から見る景色を一瞬瞼に移した瞬間──停滞から降下へと早変わり……。

 秒数で地面に落下し鈍い音を響かせる。
 その状況を確認したフライヤに村人は、固唾をのみ、恐怖に身体を震わせる。
 先ほどまでの村人の威勢は皆無。
 フライヤは放心状態に焦りを淫らに横たわるネイトを見つめる。

 赤い血は地面に容赦なく流れ出る。
 
 上空では咆哮を上げ翼をはためかせる特殊変異体ヴァイスカンド

 
 * * * * *
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