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団長さんが帰った後、再び寝ていた私は次に目を覚ました時には翌日の朝になっていた。
「うーん、よく寝たわ」
ベッドから上半身を起こして自分の服を見ると、ダイと戦った時の服から入院患者用の寝間着に着替えていた。あら、いつの間に……着替えを取りに行かなくちゃ。そう思いながらベッドから降りた時、ドアがノックされた。こんな朝早くから誰かしら?
「はい、どうぞ」
「もう起きていたのか」
廊下から聞こえたのは団長さんの声。そっとドアが開くと大きな紙袋を手に持って入って来た。
「マーシャから君に着替えを渡すように頼まれた」
「まぁ、お仕事前にこんなこと頼んでごめんなさい」
「気にするな。仕事の話のついでだ」
「仕事の話?」
確認する様に聞き返すと、団長さんは眉間に皺を寄せてため息を吐いた。何かしら物凄く不機嫌ね。
「昨日行っていた魔法道具の事なんだが……」
「父の武器の事で良いのかしら?」
「あぁ、魔術師の知り合いに詳しい人物が居るんだが……」
何故か言い淀む団長さんに首を傾げていると、大きなため息を吐いた後続きの言葉を口にした。
「魔術師が君に会わせろと煩いんだ。一度、会って話を聞いてやってくれないか」
「私も魔法道具の事が知りたいから是非ともお願いするわ」
「ありがとう。煩いヤツだが悪いヤツではないから安心してくれ」
私が頷いた事を確認した団長さんはギルマスからの伝言も教えてくれた。
「日記らしい黒い手帳が見付かったそうだが鍵も無いのに開かないと言っていた」
少し汚れた黒い手帳は確かに父の日記に間違いなかった。鍵が無いと開かないって言っていたのに、それらしい鍵穴は見当たらないわね。
「もしかして……“開放”」
武器を出す時と同じ様に鍵になる言葉を言うと、一瞬だけ光った手帳はふわりと表紙が動いた。
「「開いた」」
団長さんと二人で身を乗り出す様に日記を覗き込むと、開いたページには父からのメッセージが書かれていた。
『これを子供達の誰かが開いたのなら、私はもうこの世には居ないのだろう。遺された子供達が幸せである事を願う』
何処か自分の死を覚悟していたと受け取れるその文字に涙が滲む。ページを捲ると最初のページには、祖父に会った時の事が書かれていた。
『母親から死んだと聞かされていた父親が生きていると知った時は驚いた。本人に会って確信したのは母親が自分を身籠った当時、父親はろくでなしだったと言う事だ』
冒頭から祖父が“ろくでなし”と書かれていて、団長さんと二人で思わず顔を見合わせた。……何これ……気不味いと言うか父の怒りを感じた。
「祖父と父親は仲が悪かったのか?」
「本人からハッキリとは聞いていないけど、祖父の話を嫌がっていたからそうなのかもしれないわ」
次に書かれていたのは、祖父がまた会いに来た日の事だった。私が産まれた後で来た様で前回から日が経っているようだった。
『全くしつこい。財産なんか要らないと言ったのに魔法道具を置いて行った。』
早速、魔法道具の事が出てきたけど、団長さんはそろそろ出勤の時間になった。一人で読むのは怖いけど仕方ないわね。
「中途半端で気になるが仕方ない。何か分かったら、何時でも良いから連絡して欲しい」
「分かったわ。これの使い方は魔力を流すだけで良いのかしら?」
「あぁ、触れて流すだけで大丈夫だ。音量も調整してあると言っていたから問題ないはずだ」
私が頷くと団長さんは日記が気になるのか、何度も振り返りながら治療院を出て城に向かった。
「さて、着替えてからにしましょう」
団長さんが届けてくれた服に着替え、ベッドに座ると再び日記を開く。そこには祖父から屋敷の権利書と魔法道具を渡された経緯が書かれていた。
『小さな頃、何も出来なかったからと言って今更、デカイ屋敷なんて渡されてどうしろと?要らないと言っているのに話を聞かない。前回、渡されたこの手帳といい今回持ってきた武器といい一般人が持つには危険だと分からないのか、この馬鹿は』
その後も父の祖父に対する愚痴が続きページの最後に魔法道具の事が書かれていた。
『実家を継いだ異母兄の子供が“ろくでなし”とは誰に似たんだろうな。まだ未成年のうちから魔法道具を悪用するって訳が分からん。先祖代々、受け継いだ物の一部を手放す程のクズなのか?子供からしたら従兄弟だか会わせたくないな』
……えっと、この頃からジェットは問題児で祖父は武器の悪用を避ける為に父に渡した?しかも一部という事は他にも祖父は持っていたという事よね……伯父も持っているかもしれないわね。あとで団長さんから確認してもらいましょう。……あら、どの武器がどれに収納されているか書いてあるわ。良かった、これで中身が分かるわ……残りの武器は細身の腕輪にレイピア、ペンダントにガターが入っているのね。……うん?ブローチが失くなっていた……どういう事?
『渡された時点でブローチが紛失していて父親も驚いていたが、ブローチは武器ではなく呪具の類いらしい。災いは呪いは術者に反るから、家族に被害は無いから別にいいだろう。
もし、これが甥の仕業なら彼は将来どうなる事やら。どうやら話を聞かない性格の様だし自分に“呪いが反る”その意味を理解していないかもしれない』
“ブローチ”って、もしかしてジェットが持っていた魔法道具の事かしら?団長さんにどんな形だったのか聞けば良かったわ。もうお城で仕事中よね……
そこまで考えて朝食の時間になり、部屋に届いた食事を摂る。部屋で一人で食べていると静か過ぎてなんだか落ちつかなかった。
今まで一人で食べた事なんて殆んどなかったわね……早く退院したいわ。
「うーん、よく寝たわ」
ベッドから上半身を起こして自分の服を見ると、ダイと戦った時の服から入院患者用の寝間着に着替えていた。あら、いつの間に……着替えを取りに行かなくちゃ。そう思いながらベッドから降りた時、ドアがノックされた。こんな朝早くから誰かしら?
「はい、どうぞ」
「もう起きていたのか」
廊下から聞こえたのは団長さんの声。そっとドアが開くと大きな紙袋を手に持って入って来た。
「マーシャから君に着替えを渡すように頼まれた」
「まぁ、お仕事前にこんなこと頼んでごめんなさい」
「気にするな。仕事の話のついでだ」
「仕事の話?」
確認する様に聞き返すと、団長さんは眉間に皺を寄せてため息を吐いた。何かしら物凄く不機嫌ね。
「昨日行っていた魔法道具の事なんだが……」
「父の武器の事で良いのかしら?」
「あぁ、魔術師の知り合いに詳しい人物が居るんだが……」
何故か言い淀む団長さんに首を傾げていると、大きなため息を吐いた後続きの言葉を口にした。
「魔術師が君に会わせろと煩いんだ。一度、会って話を聞いてやってくれないか」
「私も魔法道具の事が知りたいから是非ともお願いするわ」
「ありがとう。煩いヤツだが悪いヤツではないから安心してくれ」
私が頷いた事を確認した団長さんはギルマスからの伝言も教えてくれた。
「日記らしい黒い手帳が見付かったそうだが鍵も無いのに開かないと言っていた」
少し汚れた黒い手帳は確かに父の日記に間違いなかった。鍵が無いと開かないって言っていたのに、それらしい鍵穴は見当たらないわね。
「もしかして……“開放”」
武器を出す時と同じ様に鍵になる言葉を言うと、一瞬だけ光った手帳はふわりと表紙が動いた。
「「開いた」」
団長さんと二人で身を乗り出す様に日記を覗き込むと、開いたページには父からのメッセージが書かれていた。
『これを子供達の誰かが開いたのなら、私はもうこの世には居ないのだろう。遺された子供達が幸せである事を願う』
何処か自分の死を覚悟していたと受け取れるその文字に涙が滲む。ページを捲ると最初のページには、祖父に会った時の事が書かれていた。
『母親から死んだと聞かされていた父親が生きていると知った時は驚いた。本人に会って確信したのは母親が自分を身籠った当時、父親はろくでなしだったと言う事だ』
冒頭から祖父が“ろくでなし”と書かれていて、団長さんと二人で思わず顔を見合わせた。……何これ……気不味いと言うか父の怒りを感じた。
「祖父と父親は仲が悪かったのか?」
「本人からハッキリとは聞いていないけど、祖父の話を嫌がっていたからそうなのかもしれないわ」
次に書かれていたのは、祖父がまた会いに来た日の事だった。私が産まれた後で来た様で前回から日が経っているようだった。
『全くしつこい。財産なんか要らないと言ったのに魔法道具を置いて行った。』
早速、魔法道具の事が出てきたけど、団長さんはそろそろ出勤の時間になった。一人で読むのは怖いけど仕方ないわね。
「中途半端で気になるが仕方ない。何か分かったら、何時でも良いから連絡して欲しい」
「分かったわ。これの使い方は魔力を流すだけで良いのかしら?」
「あぁ、触れて流すだけで大丈夫だ。音量も調整してあると言っていたから問題ないはずだ」
私が頷くと団長さんは日記が気になるのか、何度も振り返りながら治療院を出て城に向かった。
「さて、着替えてからにしましょう」
団長さんが届けてくれた服に着替え、ベッドに座ると再び日記を開く。そこには祖父から屋敷の権利書と魔法道具を渡された経緯が書かれていた。
『小さな頃、何も出来なかったからと言って今更、デカイ屋敷なんて渡されてどうしろと?要らないと言っているのに話を聞かない。前回、渡されたこの手帳といい今回持ってきた武器といい一般人が持つには危険だと分からないのか、この馬鹿は』
その後も父の祖父に対する愚痴が続きページの最後に魔法道具の事が書かれていた。
『実家を継いだ異母兄の子供が“ろくでなし”とは誰に似たんだろうな。まだ未成年のうちから魔法道具を悪用するって訳が分からん。先祖代々、受け継いだ物の一部を手放す程のクズなのか?子供からしたら従兄弟だか会わせたくないな』
……えっと、この頃からジェットは問題児で祖父は武器の悪用を避ける為に父に渡した?しかも一部という事は他にも祖父は持っていたという事よね……伯父も持っているかもしれないわね。あとで団長さんから確認してもらいましょう。……あら、どの武器がどれに収納されているか書いてあるわ。良かった、これで中身が分かるわ……残りの武器は細身の腕輪にレイピア、ペンダントにガターが入っているのね。……うん?ブローチが失くなっていた……どういう事?
『渡された時点でブローチが紛失していて父親も驚いていたが、ブローチは武器ではなく呪具の類いらしい。災いは呪いは術者に反るから、家族に被害は無いから別にいいだろう。
もし、これが甥の仕業なら彼は将来どうなる事やら。どうやら話を聞かない性格の様だし自分に“呪いが反る”その意味を理解していないかもしれない』
“ブローチ”って、もしかしてジェットが持っていた魔法道具の事かしら?団長さんにどんな形だったのか聞けば良かったわ。もうお城で仕事中よね……
そこまで考えて朝食の時間になり、部屋に届いた食事を摂る。部屋で一人で食べていると静か過ぎてなんだか落ちつかなかった。
今まで一人で食べた事なんて殆んどなかったわね……早く退院したいわ。
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