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学園復帰編
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学園に戻る為、龍人の村を出発した私達は初めてネグルに出会った丘まで戻ってきた。ミューはネグルに凄く懐いていてネグルと別れる時に嫌がって泣き出した。
「ミュー、ごめんね。ネグルは体が大きいからこれ以上街には入れないのよ」
「そんなぁ」
更に泣き出したミューけどネグルの大きな舌で顔を舐められると涙が止まる。お互いに無言で見詰め合っていたかと思うと、ミューは嬉しそうに目を細めて頷いた。今ので会話してたの?ドラゴン同士の念話かしら?
「また、会えるのね。一緒に遊んでくれるのね」
「グルグル」
ミューの言葉にネグルが控えめな声の返事をして納得したのか最後は笑顔で手を振っていた。
「卵から出て初めて会った同族が嬉しかった様ですね」
「ネグルもデレデレだったな。末っ子だから自分より小さなミューが可愛いのかもな」
この時、私とリュカ様は割りと聞き分けの良いミューがこれ程、別れを嫌がった理由を勘違いしているなんて思いもしなかった。その勘違いが分かるのは、もっと後の話。
馬車が荷物を積んで走り出す。首都の大きな街並みが騒がしく感じるのは龍人の村ぐらい静かな方が私には合っていたからかもしれないなぁ。
新しい家へと向かう途中、街並みを眺めながら小さなため息を吐くとリュカ様が直ぐに気付いて私の顔を覗き込んでくる。顔が近いと思う前にソフィア様が彼の服の襟元を掴んで後ろに引いた。一瞬、首に服が食い込んで咳き込むリュカ様に呆れた視線を向けた後、ソフィア様が真剣な表情で私を見詰め返した。
「何か悩み事かい?」
「いえ、そういう訳ではないのですが……学園の事を考えるとつい」
学園での生活に不安を感じている事を素直に話していると、ソフィア様は真剣に聞いてくれる。
あぁ、私の両親はこんな風に向き合って私の気持ちや考えを聞いてくれた事……一度もなかったわ。話終わると少しだけ気持ちがスッキリした。リュカ様が言っていた通り誰かと話すって本当に大事だわ。
「アランが掃除したから安心しな。前より過ごしやすいはずさ」
「掃除って何の事ですか?」
学園の掃除と聞いて首を傾げる私に、ソフィア様は意地の悪い笑みを浮かべながら、この一年で王弟殿下主導の下、学園の改革があった事を教えてくれた。
「不正入学に学費滞納を理由に脅しての暴行って、犯罪じゃないですか」
私に対する虐めや嫌がらせの調査途中で他の問題や事件が発覚してアラン先生が王弟殿下に直訴したみたい。自分の管轄する学園内で起きた事件に、王弟殿下はまさに怒り心頭。学園に直接出向き生徒と職員全員へ事件の発覚が遅れた事への謝罪と厳正かつ公平な対応を約束したそうです。
不正に関与した講師は解雇になり罪に応じた対応がされたらしい。更に不正入学者には救済措置の再試験で振り分けをして、暴行の被害者には医療ケアや滞納学費の補助。授業体制の見直しに危険な授業を一人で受講する事が二度とない様に、入学時に事前説明する事まで決まったらしい。
「実力のないヤツ等は居やしないよ。今のルナなら大丈夫」
「ふふ、ありがとうございます。ソフィア様にそう言って貰えると、なんだか安心します」
三人で馬車に揺られて一時間。新しく住む家に着いた私達を暑苦しいくらいご機嫌な兄は、玄関先で両手を広げて出迎えてくれた。お兄様、出迎えは嬉しいですよ。でも、抱き締めようとするのは止めて下さい。恥ずかしいです!
「ルナ!会いたかったぞ!」
「……お兄様もお元気そうでなによりです」
抱きつこうとする兄を躱していると、ソフィア様が声をあげて笑った。そんな姿にリュカ様も目を丸くして驚いている。驚き過ぎて動きを止めた私達兄妹の肩を軽く叩いたソフィア様は兄に向かって苦笑いしていた。
「サイオス、ルナも年頃の女の子だ。淑女として扱わなきゃダメさ」
「年頃……私からみれば何時までも小さな可愛い妹なのですが……気をつけます」
「さぁ、中に入って荷物の片付けするよ」
ソフィア様に叱られて少し落ち込んだ兄だったけど、私の手から荷物を取り中に運んでくれた。
家に入ると元貴族の家だったらしいけど、美術品等は一切なくシンプルな作りをしている。一階は玄関ホールから続く廊下の左右に部屋がありいちばん奥がダイニングキッチン。二階には四部屋あって各々の部屋にお風呂までついていた。
「うわ~豪華な部屋ですね」
「貴族育ちのあんたが何言ってんだい」
「私は寮暮らしが長いので、部屋にお風呂があるだけでありがたいです」
お風呂に感激している私の横で三人が眉間にシワを寄せた。あれ?何でみんな同じ反応しているの?
「ルナ、部屋に風呂は一度もなかったのか?」
「えぇ、入学当初から無かったわ……お兄様もしかしてそれも嫌がらせ?」
「恐らくな。私は貴族用の寮だから風呂と簡易キッチンが各部屋にあると聞いていた。寮費もそれなりにしたはずだが……帰ったら確認しよう」
あらら、学園長の罪に横領もあったみたいね。
「ミュー、ごめんね。ネグルは体が大きいからこれ以上街には入れないのよ」
「そんなぁ」
更に泣き出したミューけどネグルの大きな舌で顔を舐められると涙が止まる。お互いに無言で見詰め合っていたかと思うと、ミューは嬉しそうに目を細めて頷いた。今ので会話してたの?ドラゴン同士の念話かしら?
「また、会えるのね。一緒に遊んでくれるのね」
「グルグル」
ミューの言葉にネグルが控えめな声の返事をして納得したのか最後は笑顔で手を振っていた。
「卵から出て初めて会った同族が嬉しかった様ですね」
「ネグルもデレデレだったな。末っ子だから自分より小さなミューが可愛いのかもな」
この時、私とリュカ様は割りと聞き分けの良いミューがこれ程、別れを嫌がった理由を勘違いしているなんて思いもしなかった。その勘違いが分かるのは、もっと後の話。
馬車が荷物を積んで走り出す。首都の大きな街並みが騒がしく感じるのは龍人の村ぐらい静かな方が私には合っていたからかもしれないなぁ。
新しい家へと向かう途中、街並みを眺めながら小さなため息を吐くとリュカ様が直ぐに気付いて私の顔を覗き込んでくる。顔が近いと思う前にソフィア様が彼の服の襟元を掴んで後ろに引いた。一瞬、首に服が食い込んで咳き込むリュカ様に呆れた視線を向けた後、ソフィア様が真剣な表情で私を見詰め返した。
「何か悩み事かい?」
「いえ、そういう訳ではないのですが……学園の事を考えるとつい」
学園での生活に不安を感じている事を素直に話していると、ソフィア様は真剣に聞いてくれる。
あぁ、私の両親はこんな風に向き合って私の気持ちや考えを聞いてくれた事……一度もなかったわ。話終わると少しだけ気持ちがスッキリした。リュカ様が言っていた通り誰かと話すって本当に大事だわ。
「アランが掃除したから安心しな。前より過ごしやすいはずさ」
「掃除って何の事ですか?」
学園の掃除と聞いて首を傾げる私に、ソフィア様は意地の悪い笑みを浮かべながら、この一年で王弟殿下主導の下、学園の改革があった事を教えてくれた。
「不正入学に学費滞納を理由に脅しての暴行って、犯罪じゃないですか」
私に対する虐めや嫌がらせの調査途中で他の問題や事件が発覚してアラン先生が王弟殿下に直訴したみたい。自分の管轄する学園内で起きた事件に、王弟殿下はまさに怒り心頭。学園に直接出向き生徒と職員全員へ事件の発覚が遅れた事への謝罪と厳正かつ公平な対応を約束したそうです。
不正に関与した講師は解雇になり罪に応じた対応がされたらしい。更に不正入学者には救済措置の再試験で振り分けをして、暴行の被害者には医療ケアや滞納学費の補助。授業体制の見直しに危険な授業を一人で受講する事が二度とない様に、入学時に事前説明する事まで決まったらしい。
「実力のないヤツ等は居やしないよ。今のルナなら大丈夫」
「ふふ、ありがとうございます。ソフィア様にそう言って貰えると、なんだか安心します」
三人で馬車に揺られて一時間。新しく住む家に着いた私達を暑苦しいくらいご機嫌な兄は、玄関先で両手を広げて出迎えてくれた。お兄様、出迎えは嬉しいですよ。でも、抱き締めようとするのは止めて下さい。恥ずかしいです!
「ルナ!会いたかったぞ!」
「……お兄様もお元気そうでなによりです」
抱きつこうとする兄を躱していると、ソフィア様が声をあげて笑った。そんな姿にリュカ様も目を丸くして驚いている。驚き過ぎて動きを止めた私達兄妹の肩を軽く叩いたソフィア様は兄に向かって苦笑いしていた。
「サイオス、ルナも年頃の女の子だ。淑女として扱わなきゃダメさ」
「年頃……私からみれば何時までも小さな可愛い妹なのですが……気をつけます」
「さぁ、中に入って荷物の片付けするよ」
ソフィア様に叱られて少し落ち込んだ兄だったけど、私の手から荷物を取り中に運んでくれた。
家に入ると元貴族の家だったらしいけど、美術品等は一切なくシンプルな作りをしている。一階は玄関ホールから続く廊下の左右に部屋がありいちばん奥がダイニングキッチン。二階には四部屋あって各々の部屋にお風呂までついていた。
「うわ~豪華な部屋ですね」
「貴族育ちのあんたが何言ってんだい」
「私は寮暮らしが長いので、部屋にお風呂があるだけでありがたいです」
お風呂に感激している私の横で三人が眉間にシワを寄せた。あれ?何でみんな同じ反応しているの?
「ルナ、部屋に風呂は一度もなかったのか?」
「えぇ、入学当初から無かったわ……お兄様もしかしてそれも嫌がらせ?」
「恐らくな。私は貴族用の寮だから風呂と簡易キッチンが各部屋にあると聞いていた。寮費もそれなりにしたはずだが……帰ったら確認しよう」
あらら、学園長の罪に横領もあったみたいね。
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