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学園復帰編
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昨日の兄は怖かった……お風呂付きの部屋に感動して夢見心地でいた私を一気に現実引き戻す絶対零度の様な兄の笑顔。学園での生活を根掘り葉掘り聞いた後、確認しないといけない事が増えたと言いながら笑顔で帰って行きました。そして、今日は復学の手続きの為にソフィア様と一緒に学園に行くけど、リュカ様は今日から仕事復帰の為に先に家を出た。
ソフィア様と一緒に馬車に乗り学園に向かう中、ミューは初めて見る街並みに興奮してはしゃいでいる。学園とお城の近くに家を借りたと聞いてはいたけど、十五分程で学園の建物のが見えたのには驚いた。
「近いですね」
「毎日通うんだ。近くなきゃ疲れるだろう」
笑いながらそう言ったソフィア様は馬車が停車すると、直ぐに自分でドアを開けて降りて行く。私も続けて降りると懐かしい校舎が目の前にある。
「久しぶりですね。ニールセンさん」
「アラン先生!ご無沙汰してました」
「元気そうでなりよりです。さぁ、お二人共、こちらへ」
アラン先生の案内で校舎を進み学園長室に向かう中、廊下に飾ってあった高そうな美術品がなくなりスッキリしている事に気付いた。学園長が変わると校内の雰囲気も変わるのね。
「学園長、お二人をお連れしました」
「入れ」
低く威厳のある声が中から聞こえて、アラン先生がドアを開けると奥の机に座る男性が見えた。その男性をよく見ると見覚えがある。少し考えてその正体に気付いた私は冷や汗が出てきた。この方……ラウール王弟殿下じゃない?確か大舞踏会の時、陛下と同じ王族席に座っているのを見たわ。
「お久し振りですね大魔法使い様。そして、会いたかったよニールセン令嬢。私が新しく兼任で学園長に就任したラウールだ」
「おや、坊主も偉くなっねぇ」
「はは、貴女から見れば私等、まだまだヒヨッコでしょう。こちらへどうぞ」
ソフィア様と王弟殿下は面識があるみたいで気軽な感じで会話しているけど、私は緊張しすぎて手足が一緒に出そう。なんとかソファーに座ると、王弟殿下は私の肩に乗るミューに視線を止めた。
「この子が噂の?」
「っ!はい、擬態しているので小さくなっております」
「そう畏まらなくて良いよ。君には前々から直接謝罪したかったんだ。長い間、学園の問題に気付かずすまなかった」
緊張でガチガチになっている私に笑い掛けた殿下が、急に深々と頭を下げたから驚いて余計に固まってしまった。
「学園長、ニールセンさんが困惑していますからさっさと頭を上げて説明をお願いします」
「酷い言い草だねぇー。困らせてすまないが、此は私達学園を統括していた全ての者からの謝罪だ。こちらの都合で早くから入学して貰ったのに酷い待遇だった」
そう言った殿下は私が学園に早期入学する事になった経緯を教えてくれた。私や家族は魔力が強いから暴走を防ぐ為だと思っていたけど、本当は違う理由からだった。
「魔力の強い魔法使いが少ない?」
「そうだ。近年、我が国の魔法使いが弱体化してきている。そこで貴族の令嬢だったが幼い頃から力が強く優秀な君へ期待していたんだ」
「え?優秀なって私がですか?」
優秀なんて言葉は私から一番遠い言葉だと思っていたけど、父に勉強浸けにされた入学前の座学や魔法の練習で既に卒業レベルまで達していたらしい。学園の書類上では生徒とは別の特別授業を実施する為に、特別枠で入学した事になっていた。ところが特別授業予算を前学園長が全額横領して私は生徒と一緒の授業をしたいた。
「特別授業って何を学ぶ予定だったのでしょうか?」
「補助魔法で魔法師団の中でも数人しか使えない魔法だ」
殿下の説明では光や闇の特殊属性に対する防御や属性の相性関係無しに使える攻撃力強化や増幅といった戦闘補助から回復魔法全般を専門的に学ぶ予定だったらしい。魔法師団の底上げに協力して欲しかったけど、学園内部の汚職も弱体化の原因だったから少しだけ強化の目処が立ったそう。それなら良かった。あれ?補助魔法ってソフィア様と一緒に勉強した内容だよね?
「坊主、ルナはその魔法は覚えちまったよ。他にやることは無いのかい?」
「は?えっと大魔法使い様の元でコントロールを学んだのではなかったのですか?」
目が点になった殿下に向かって、ソフィア様はニヤリと悪どい笑みを浮かべて楽しそう。ミューと契約したおかげでコントロールも楽になり、色々な魔法を覚えたのよね。
「コントロールだけじゃ勿体無いからね。色々やったのさ。ここで学ぶ事がないなら、さっさと卒業させてやっておくれ」
「卒業って言われましても……確か実技のテストが出来なかっただけだったね」
「はい、魔法が発動しなかったので実技の評価がついていません」
「成る程、今は問題ないなら明日から実技のテストを受けて単位が揃い次第、卒業試験でどうだろう?」
殿下の言葉を聞いてソフィア様が大きく頷くと、殿下とアラン先生がその場でテストの計画を立てていく。話し合う二人の横からソフィア様が一週間で終わらせたいとか言い出して呆れられていた。
「大魔法使い様、落ち着いて下さい。一時間に一つの試験を受けても三週間で全ての試験が終わりますから」
「しかし、魔力切れが心配です」
「アランそれは問題ないさ。ルナの魔力は私と同じくらいあるからね」
ソフィア様のその一言で部屋はシーンと静かになりました。
え?えぇ!!その……魔力量の話し、初めて聞きましたよ!
ソフィア様と一緒に馬車に乗り学園に向かう中、ミューは初めて見る街並みに興奮してはしゃいでいる。学園とお城の近くに家を借りたと聞いてはいたけど、十五分程で学園の建物のが見えたのには驚いた。
「近いですね」
「毎日通うんだ。近くなきゃ疲れるだろう」
笑いながらそう言ったソフィア様は馬車が停車すると、直ぐに自分でドアを開けて降りて行く。私も続けて降りると懐かしい校舎が目の前にある。
「久しぶりですね。ニールセンさん」
「アラン先生!ご無沙汰してました」
「元気そうでなりよりです。さぁ、お二人共、こちらへ」
アラン先生の案内で校舎を進み学園長室に向かう中、廊下に飾ってあった高そうな美術品がなくなりスッキリしている事に気付いた。学園長が変わると校内の雰囲気も変わるのね。
「学園長、お二人をお連れしました」
「入れ」
低く威厳のある声が中から聞こえて、アラン先生がドアを開けると奥の机に座る男性が見えた。その男性をよく見ると見覚えがある。少し考えてその正体に気付いた私は冷や汗が出てきた。この方……ラウール王弟殿下じゃない?確か大舞踏会の時、陛下と同じ王族席に座っているのを見たわ。
「お久し振りですね大魔法使い様。そして、会いたかったよニールセン令嬢。私が新しく兼任で学園長に就任したラウールだ」
「おや、坊主も偉くなっねぇ」
「はは、貴女から見れば私等、まだまだヒヨッコでしょう。こちらへどうぞ」
ソフィア様と王弟殿下は面識があるみたいで気軽な感じで会話しているけど、私は緊張しすぎて手足が一緒に出そう。なんとかソファーに座ると、王弟殿下は私の肩に乗るミューに視線を止めた。
「この子が噂の?」
「っ!はい、擬態しているので小さくなっております」
「そう畏まらなくて良いよ。君には前々から直接謝罪したかったんだ。長い間、学園の問題に気付かずすまなかった」
緊張でガチガチになっている私に笑い掛けた殿下が、急に深々と頭を下げたから驚いて余計に固まってしまった。
「学園長、ニールセンさんが困惑していますからさっさと頭を上げて説明をお願いします」
「酷い言い草だねぇー。困らせてすまないが、此は私達学園を統括していた全ての者からの謝罪だ。こちらの都合で早くから入学して貰ったのに酷い待遇だった」
そう言った殿下は私が学園に早期入学する事になった経緯を教えてくれた。私や家族は魔力が強いから暴走を防ぐ為だと思っていたけど、本当は違う理由からだった。
「魔力の強い魔法使いが少ない?」
「そうだ。近年、我が国の魔法使いが弱体化してきている。そこで貴族の令嬢だったが幼い頃から力が強く優秀な君へ期待していたんだ」
「え?優秀なって私がですか?」
優秀なんて言葉は私から一番遠い言葉だと思っていたけど、父に勉強浸けにされた入学前の座学や魔法の練習で既に卒業レベルまで達していたらしい。学園の書類上では生徒とは別の特別授業を実施する為に、特別枠で入学した事になっていた。ところが特別授業予算を前学園長が全額横領して私は生徒と一緒の授業をしたいた。
「特別授業って何を学ぶ予定だったのでしょうか?」
「補助魔法で魔法師団の中でも数人しか使えない魔法だ」
殿下の説明では光や闇の特殊属性に対する防御や属性の相性関係無しに使える攻撃力強化や増幅といった戦闘補助から回復魔法全般を専門的に学ぶ予定だったらしい。魔法師団の底上げに協力して欲しかったけど、学園内部の汚職も弱体化の原因だったから少しだけ強化の目処が立ったそう。それなら良かった。あれ?補助魔法ってソフィア様と一緒に勉強した内容だよね?
「坊主、ルナはその魔法は覚えちまったよ。他にやることは無いのかい?」
「は?えっと大魔法使い様の元でコントロールを学んだのではなかったのですか?」
目が点になった殿下に向かって、ソフィア様はニヤリと悪どい笑みを浮かべて楽しそう。ミューと契約したおかげでコントロールも楽になり、色々な魔法を覚えたのよね。
「コントロールだけじゃ勿体無いからね。色々やったのさ。ここで学ぶ事がないなら、さっさと卒業させてやっておくれ」
「卒業って言われましても……確か実技のテストが出来なかっただけだったね」
「はい、魔法が発動しなかったので実技の評価がついていません」
「成る程、今は問題ないなら明日から実技のテストを受けて単位が揃い次第、卒業試験でどうだろう?」
殿下の言葉を聞いてソフィア様が大きく頷くと、殿下とアラン先生がその場でテストの計画を立てていく。話し合う二人の横からソフィア様が一週間で終わらせたいとか言い出して呆れられていた。
「大魔法使い様、落ち着いて下さい。一時間に一つの試験を受けても三週間で全ての試験が終わりますから」
「しかし、魔力切れが心配です」
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