婚約破棄されたポンコツ魔法使い令嬢は今日も元気です!

シマ

文字の大きさ
55 / 92
学園復帰編

6

しおりを挟む
 翌朝、昨日の夜に仕込んだ大量のスープはまた、全てリュカ様のお腹に消えてしまった。流石に二日続けての暴挙にソフィア様から拳骨を貰ったリュカ様が頭を押さえながら踞っていた。

「この脳筋は学習しないねぇ」

「申し訳ありません」

 大きなため息を吐いたケビン団長に襟元を捕まれて、リュカ様は引きずられる様に出勤して行った。

「……ソフィア様、アレは大丈夫なのですか?」

「何時もの事さ。悪いね、今日は私が夕食を作るよ」

「それは気にしないで下さい。お料理は楽しいので。それにお弁当も渡しましたし今晩は大丈夫じゃないですか?」

「……どうかねぇ」

 ソフィア様が呆れた顔でそんな事を言うから心配になってきたけど、私達も家を出る時間になって馬車に乗って学校へ向かった。私は実技試験の為だけに登校するので一般生徒より少し遅れての登校になっている。学校に到着して生徒のいない静かな校内を歩き試験の部屋に向かうと、既に三人の講師が待ち構えていて驚いた。え?講師が先に着てる。何で?今までは時間になっても来ないなんてよくあったのに、もしかしてこれが普通なのかしら?

「師匠、ニールセンさん、おはようございます」

「アラン、二週間後に訓練やるからルナと一緒に城に行くよ」

「「え?」」

 ちょっと待って下さい。ソフィア様、お城に行くって何?しかも訓練って……昨日のリュカ様が言ってた許可ってコレ!?

「何ですか師匠。いきなり過ぎて話が分かりませんよ」

 アラン先生がこめかみを押さえながらため息を吐くと、ソフィア様はフンと鼻をならして腕を組んで先生を睨みつけた。

「ミューの護衛希望者が殺到しいる。実力をみたいからお前も一緒に来るんだよ」

「そういう事ならお供します。でも、今は試験の説明をさせて頂きますよ」

 ソフィア様が頷いた事を確認するとアラン先生が試験の説明を始めた。説明と言っても出される課題ーー魔法ーーの魔法陣を正確に作り発動出来るのか確認するだけ。今までは魔法陣までは出来ていたので、発動して効果が出せれば合格になるらしい。

「今の説明で質問はありますか?」

「いえ、大丈夫です。試験を宜しくお願いします」

 私が講師の方々に頭を下げると、ソフィア様は黙って会場の角に置かれた椅子に座った。ソフィア様は大魔法使いだけど、学園の講師ではないから見学に徹する事になっている。早速、出された課題は"明かり"。これはソフィア様の所で最初に練習した魔法だし難なく出来た。

「合格です。体調や魔力に問題はなさそうですね」

「はい、まだ余裕があります」

「では続けて試験を行います」

 下位魔法の試験を続けてクリアしていると、一時間目の終わりを告げるチャイムが鳴った。講師の出す課題が止まり三人が書類を見ながら話し合いをしているので、教室から出ずに話が纏まるまで待っていた。

「ルナ~ひま~」

「うーん、先生達の話が済んだらソフィア様と一緒に外に出て良いか聞いてみるね」

「わかった。まってる」

 少し元気のないミューはソフィア様の膝の上に飛び乗ると、猫の様に丸くなって寝てしまった。うーん、明日からソフィア様と家で留守番した方が良いかしら?そんな事を考えていると講師の話が終わり、代表でアラン先生が私に説明をしてくれた。

「実は今の一時間で今日、準備していた初級の試験が終わってしまって、続きの試験をする事が出来ないのです」

「え!?そうなんですか?」

「えぇ、こちらの準備不足で申し訳ないですが、今日の試験は終了させて下さい。明日からはもっとスムーズに出来る様に準備しますね」

 アラン先生が苦笑いしながらそう言うと、後ろにいた講師も申し訳なさそうに頭を下げていた。まぁ、ミューも暇をもて余していたし丁度良いかも。

「分かりました。今日はありがとうございました」

「はい、お疲れ様でした」

 講師の方々にも挨拶をしてからソフィア様の元に行くと、ミューが起き上がり背伸びをした。

「おそとに行ってもへいき?」

「今日の試験は終わったから帰って良いって」

「どういう事だい?まだ、初級しかしていないじゃないか」

「試験の準備が出来ていないそうです。続きは明日になりました」

 ソフィア様がため息を吐きながら席を立つと、講師の方々が慌ててやって来て謝罪していた。明日からは残りの初級と中級全ての試験を準備すると聞いて、納得したみたいで頷いていた。ミューを肩に乗せて馬車乗り場に向かう途中、すれ違う生徒達の中にエリザベスの姿があったけど、彼女の回りだけ黒く不気味な靄がかかって見えた。私が驚いているうちにエリザベスは他の生徒達と一緒に教室に入って行く。二時間目のチャイムが鳴ると教室内ドアが閉まり中の様子は分からなくなった。

「今の靄は何?」

 ソフィア様もアラン先生も二週間後のお城で行う訓練の話をしながら先に進んでいて気づいた様子はない。私の見間違いかしら?

「ルナ、どうしたんだい?」

「あ!今、行きます」

 一人立ち止まって考えていた私は慌ててソフィア様達を追い掛けたけど、さっき見えた靄が気になって仕方なかった。


嫌な感じがしたけど……気のせいかな?

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

妹が真の聖女だったので、偽りの聖女である私は追放されました。でも、聖女の役目はものすごく退屈だったので、最高に嬉しいです【完結】

小平ニコ
ファンタジー
「お姉様、よくも私から夢を奪ってくれたわね。絶対に許さない」  私の妹――シャノーラはそう言うと、計略を巡らし、私から聖女の座を奪った。……でも、私は最高に良い気分だった。だって私、もともと聖女なんかになりたくなかったから。  退職金を貰い、大喜びで国を出た私は、『真の聖女』として国を守る立場になったシャノーラのことを思った。……あの子、聖女になって、一日の休みもなく国を守るのがどれだけ大変なことか、ちゃんと分かってるのかしら?  案の定、シャノーラはよく理解していなかった。  聖女として役目を果たしていくのが、とてつもなく困難な道であることを……

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

地味で結婚できないと言われた私が、婚約破棄の席で全員に勝った話

といとい
ファンタジー
「地味で結婚できない」と蔑まれてきた伯爵令嬢クラリス・アーデン。公の場で婚約者から一方的に婚約破棄を言い渡され、妹との比較で笑い者にされるが、クラリスは静かに反撃を始める――。周到に集めた証拠と知略を武器に、貴族社会の表と裏を暴き、見下してきた者たちを鮮やかに逆転。冷静さと気品で場を支配する姿に、やがて誰もが喝采を送る。痛快“ざまぁ”逆転劇!

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

【完結】白い結婚で生まれた私は王族にはなりません〜光の精霊王と予言の王女〜

白崎りか
ファンタジー
「悪女オリヴィア! 白い結婚を神官が証明した。婚姻は無効だ! 私は愛するフローラを王妃にする!」  即位したばかりの国王が、宣言した。  真実の愛で結ばれた王とその恋人は、永遠の愛を誓いあう。  だが、そこには大きな秘密があった。  王に命じられた神官は、白い結婚を偽証していた。  この時、悪女オリヴィアは娘を身ごもっていたのだ。  そして、光の精霊王の契約者となる予言の王女を産むことになる。 第一部 貴族学園編  私の名前はレティシア。 政略結婚した王と元王妃の間にできた娘なのだけど、私の存在は、生まれる前に消された。  だから、いとこの双子の姉ってことになってる。  この世界の貴族は、5歳になったら貴族学園に通わないといけない。私と弟は、そこで、契約獣を得るためのハードな訓練をしている。  私の異母弟にも会った。彼は私に、「目玉をよこせ」なんて言う、わがままな王子だった。 第二部 魔法学校編  失ってしまったかけがえのない人。  復讐のために精霊王と契約する。  魔法学校で再会した貴族学園時代の同級生。  毒薬を送った犯人を捜すために、パーティに出席する。  修行を続け、勇者の遺産を手にいれる。 前半は、ほのぼのゆっくり進みます。 後半は、どろどろさくさくです。 小説家になろう様にも投稿してます。

処理中です...