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13件目 放課後、キスのリレー
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「蒼(あおい)! 今日こそ決めてもらうからね!」
教室の扉を開けるなり、金髪の陽奈(ひな)がズカズカと俺の机まで歩いてきた。
「決めるって、またその話かよ……」
俺の名前は黒川蒼。普通の高校二年生。──のはずなのに、なぜか俺の幼馴染は、全員ギャルで、しかも全員が美少女だ。
髪の色も性格もバラバラ。でも共通しているのは、全員が俺を好きだと言ってくれていること。
そして、今日もまた彼女たちは、俺に「誰を選ぶのか」を決めろと迫ってきた。
「はいはい、文句言わない! 今日はゲームで決めよ。題して──」
「“キスのリレー”大会!」
満面の笑顔で言い出したのは、ピンク髪の元気っ子ギャル・紗愛(さあや)。ノリが良すぎるのが玉にキズだが、こういうときの行動力はすごい。
「ちょっと待て、キスってお前……」
「だってさ~、キスって気持ちが一番伝わるじゃん? どのキスが一番“きた”かで、蒼の気持ちもわかるし」
インナーカラーが鮮やかな莉子(りこ)がウィンクしながら俺の肩に寄りかかる。クール系に見えて、こういうときだけは積極的になる。
「蒼……迷ってるの、知ってる。でも、ずっとそのままじゃ……」
小さな声で言ったのは、静香(しずか)。銀髪ボブで、無口だけど優しい子。目は真剣で、俺の心をじわりと揺らす。
「私たち、全員幼馴染で、全員ギャルで、全員……蒼が好き。それだけは同じなの」
落ち着いたトーンで話すのは、紫インナーの聖(ひじり)。読書好きな大人っぽい子。普段は一歩引いてるけど、今日は違った。
「……だから、順番にキスして、決めて。ね?」
最後に言ったのは、ロングの美姫(みき)。いつもは一番ふざけてるのに、今日は一番まっすぐだった。
「ええと……本気で、やるの?」
「うん、本気。じゃ、じゃんけんで順番決めるよ!」
そして、始まった“キスのリレー”。
---
最初に俺の前に立ったのは、紗愛。ニコニコ笑っていたはずなのに、急に真面目な顔になって――
「いくよ、蒼。覚悟して」
ふわりと香るシャンプーの匂い。唇が触れた瞬間、胸の奥がチクリと痛んだ。これは、遊びじゃない。みんな、本気だ。
「次、私」
聖のキスは、静かで、優しくて……まるで本をめくるみたいに、そっと想いが伝わってきた。
「……はい、次いくね」
しずかのキスは一番短かった。でも、その分だけ真剣だった。唇が離れたあと、彼女は照れ隠しのように目をそらしていた。
「ふふん、じゃ、今度は私!」
莉子は大胆に俺の襟元を引き寄せると、すっと唇を重ねた。強引だけど、それが彼女らしい。心臓がバクバクしているのを自分でも感じる。
「五番手、陽奈、いきます!」
陽奈は子どもの頃から一緒にいた、一番の幼馴染。いたずらっぽく笑ってキスをしてくれたけど、その瞳はすごく真面目だった。
「最後は……わたし、ね」
美姫は静かに目を閉じて、キスをした。時間が止まったようだった。優しくて、あったかくて、何より“想い”が深かった。
---
「……どうだった?」
「どのキスが、一番“きた”?」
六人の瞳が俺を見つめる。そのどれもが、本気のまなざし。
俺は立ち上がって、しばらく無言のまま教室の窓を見た。外はオレンジ色の夕焼けに包まれている。
「……選べない、なんて言ったら、怒るよな」
「うん。超怒る」
「大丈夫。選べるまで、何回でもキスしてもらうから」
俺の一言に、みんながくすくすと笑った。だけどその中に、少しの緊張と、たしかな期待が混じっていた。
「じゃあ……俺、ちゃんと考える。誰か一人を選ぶために」
「うん、それでいい。待ってるよ」
「でも、今日の勝者は一応決めといてね?」
「え、えっ……!?」
「みんなでキス」のリレーは終わったけれど、俺の“恋”は、まだ始まったばかりだった。
教室の扉を開けるなり、金髪の陽奈(ひな)がズカズカと俺の机まで歩いてきた。
「決めるって、またその話かよ……」
俺の名前は黒川蒼。普通の高校二年生。──のはずなのに、なぜか俺の幼馴染は、全員ギャルで、しかも全員が美少女だ。
髪の色も性格もバラバラ。でも共通しているのは、全員が俺を好きだと言ってくれていること。
そして、今日もまた彼女たちは、俺に「誰を選ぶのか」を決めろと迫ってきた。
「はいはい、文句言わない! 今日はゲームで決めよ。題して──」
「“キスのリレー”大会!」
満面の笑顔で言い出したのは、ピンク髪の元気っ子ギャル・紗愛(さあや)。ノリが良すぎるのが玉にキズだが、こういうときの行動力はすごい。
「ちょっと待て、キスってお前……」
「だってさ~、キスって気持ちが一番伝わるじゃん? どのキスが一番“きた”かで、蒼の気持ちもわかるし」
インナーカラーが鮮やかな莉子(りこ)がウィンクしながら俺の肩に寄りかかる。クール系に見えて、こういうときだけは積極的になる。
「蒼……迷ってるの、知ってる。でも、ずっとそのままじゃ……」
小さな声で言ったのは、静香(しずか)。銀髪ボブで、無口だけど優しい子。目は真剣で、俺の心をじわりと揺らす。
「私たち、全員幼馴染で、全員ギャルで、全員……蒼が好き。それだけは同じなの」
落ち着いたトーンで話すのは、紫インナーの聖(ひじり)。読書好きな大人っぽい子。普段は一歩引いてるけど、今日は違った。
「……だから、順番にキスして、決めて。ね?」
最後に言ったのは、ロングの美姫(みき)。いつもは一番ふざけてるのに、今日は一番まっすぐだった。
「ええと……本気で、やるの?」
「うん、本気。じゃ、じゃんけんで順番決めるよ!」
そして、始まった“キスのリレー”。
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最初に俺の前に立ったのは、紗愛。ニコニコ笑っていたはずなのに、急に真面目な顔になって――
「いくよ、蒼。覚悟して」
ふわりと香るシャンプーの匂い。唇が触れた瞬間、胸の奥がチクリと痛んだ。これは、遊びじゃない。みんな、本気だ。
「次、私」
聖のキスは、静かで、優しくて……まるで本をめくるみたいに、そっと想いが伝わってきた。
「……はい、次いくね」
しずかのキスは一番短かった。でも、その分だけ真剣だった。唇が離れたあと、彼女は照れ隠しのように目をそらしていた。
「ふふん、じゃ、今度は私!」
莉子は大胆に俺の襟元を引き寄せると、すっと唇を重ねた。強引だけど、それが彼女らしい。心臓がバクバクしているのを自分でも感じる。
「五番手、陽奈、いきます!」
陽奈は子どもの頃から一緒にいた、一番の幼馴染。いたずらっぽく笑ってキスをしてくれたけど、その瞳はすごく真面目だった。
「最後は……わたし、ね」
美姫は静かに目を閉じて、キスをした。時間が止まったようだった。優しくて、あったかくて、何より“想い”が深かった。
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「……どうだった?」
「どのキスが、一番“きた”?」
六人の瞳が俺を見つめる。そのどれもが、本気のまなざし。
俺は立ち上がって、しばらく無言のまま教室の窓を見た。外はオレンジ色の夕焼けに包まれている。
「……選べない、なんて言ったら、怒るよな」
「うん。超怒る」
「大丈夫。選べるまで、何回でもキスしてもらうから」
俺の一言に、みんながくすくすと笑った。だけどその中に、少しの緊張と、たしかな期待が混じっていた。
「じゃあ……俺、ちゃんと考える。誰か一人を選ぶために」
「うん、それでいい。待ってるよ」
「でも、今日の勝者は一応決めといてね?」
「え、えっ……!?」
「みんなでキス」のリレーは終わったけれど、俺の“恋”は、まだ始まったばかりだった。
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