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31件目 午後四時のメンテナンス
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「蒼真、またネジ緩んでるって言われたんだけど、締めてくれる?」
そう言って、背中を向けたのは、俺の幼馴染にして――人工知能搭載のアンドロイド女子高生、霧島ルナ。
クラスで一際目立つ高身長。身長は俺より15センチも高いのに、いつもどこか頼りなさげな笑顔で、「助けて、蒼真」なんて言うもんだから、幼馴染の俺はつい世話を焼いてしまう。
「ったく、また体育で張り切りすぎたんだろ」
俺はルナの制服の後ろをそっとめくり、メンテナンスパネルのカバーを開けた。人工筋肉と補助ケーブルが整然と並び、その一部に緩んだナットがあった。
「……よし、これでOKだ」
俺が工具をしまおうとすると、ルナが突然、制服の裾を押さえながらこちらを向いた。
「ありがとう、蒼真。……ねえ、キスって、どんな感じ?」
「……は?」
急な質問に、手が止まった。ルナは真剣な顔で俺を見つめている。瞳の奥に浮かぶのは、人工的な光じゃなくて、確かな好奇心だった。
「この前、クラスの女子が言ってたの。好きな人とキスすると、胸がぎゅってなるって。……私にも、わかるのかな」
彼女の問いに、俺はしばらく言葉が出なかった。
子供の頃は、秘密基地を作って、木登りして、日が暮れるまで遊んでいた。そんなルナが、今は高校の制服を着て、恋を語ろうとしてる。
でも――AIだろうが、なんだろうが。
「……試してみるか?」
気づけば、そう言っていた。ルナの頬がうっすら赤くなる。
「いいの?」
俺は頷き、背伸びをして、彼女の唇にそっと触れた。
それは、思ったよりも柔らかくて、思ったよりも……あたたかかった。
「……胸、ぎゅってなった」
ルナが、小さく笑った。
「私、恋してるのかな」
「それ、診断ソフトに聞くのか?」
「ううん。……蒼真に、聞いてるの」
俺は黙って、彼女の手を握った。
冷たい金属じゃない、やわらかい手のひら。
たぶん、これは恋だ。AIだろうが、アンドロイドだろうが、そんなことは関係ない。
夕日が差し込む教室の隅で、俺たちはしばらく手をつないでいた。
それが、たった一つの、確かな答えだった。
そう言って、背中を向けたのは、俺の幼馴染にして――人工知能搭載のアンドロイド女子高生、霧島ルナ。
クラスで一際目立つ高身長。身長は俺より15センチも高いのに、いつもどこか頼りなさげな笑顔で、「助けて、蒼真」なんて言うもんだから、幼馴染の俺はつい世話を焼いてしまう。
「ったく、また体育で張り切りすぎたんだろ」
俺はルナの制服の後ろをそっとめくり、メンテナンスパネルのカバーを開けた。人工筋肉と補助ケーブルが整然と並び、その一部に緩んだナットがあった。
「……よし、これでOKだ」
俺が工具をしまおうとすると、ルナが突然、制服の裾を押さえながらこちらを向いた。
「ありがとう、蒼真。……ねえ、キスって、どんな感じ?」
「……は?」
急な質問に、手が止まった。ルナは真剣な顔で俺を見つめている。瞳の奥に浮かぶのは、人工的な光じゃなくて、確かな好奇心だった。
「この前、クラスの女子が言ってたの。好きな人とキスすると、胸がぎゅってなるって。……私にも、わかるのかな」
彼女の問いに、俺はしばらく言葉が出なかった。
子供の頃は、秘密基地を作って、木登りして、日が暮れるまで遊んでいた。そんなルナが、今は高校の制服を着て、恋を語ろうとしてる。
でも――AIだろうが、なんだろうが。
「……試してみるか?」
気づけば、そう言っていた。ルナの頬がうっすら赤くなる。
「いいの?」
俺は頷き、背伸びをして、彼女の唇にそっと触れた。
それは、思ったよりも柔らかくて、思ったよりも……あたたかかった。
「……胸、ぎゅってなった」
ルナが、小さく笑った。
「私、恋してるのかな」
「それ、診断ソフトに聞くのか?」
「ううん。……蒼真に、聞いてるの」
俺は黙って、彼女の手を握った。
冷たい金属じゃない、やわらかい手のひら。
たぶん、これは恋だ。AIだろうが、アンドロイドだろうが、そんなことは関係ない。
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それが、たった一つの、確かな答えだった。
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